「原発維持」の新首相の誕生を財界は大歓迎/「発送電」の分離(電力の自由化)=経産省に任せるなら望み薄

2011-09-01 | 政治

経団連会長、政府との仲修復か 野田新首相に「元通りの関係」
日本経済新聞2011/9/1 12:22
 野田佳彦新首相(民主党代表)は1日午前、経済3団体と連合に就任のあいさつ回りをした。新首相は経団連の米倉弘昌会長に「経済政策を間断なくやりたい」と表明。菅政権に批判的な米倉会長が政府の新成長戦略実現会議を連続して欠席していることを念頭に「政府の会議をつくり直す。出席してもらえますか」と要請した。米倉会長は「震災前は出席していた。元通りの関係だ」と記者団に語った。
 米倉会長は民主党の新執行部人事についても「(党内融和を)有言実行した。大変素晴らしい」と絶賛した。この後、新首相は経済同友会、日本商工会議所を訪れた。
 これに先立つ民主党の有力支持団体である連合へのあいさつ回りで、新首相は「重責を担うことになった。全力でやっていくのでこれまで同様応援してほしい」と協力を求めた。古賀伸明会長が「輿石東幹事長は的を射た人事だ。一致結束した政権運営をお願いしたい」と党内融和を促すと、新首相は「党内一致の態勢を築いて難局を乗り越えたい」と応じた。
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野田新首相「間断なく経済対策」 経団連会長と会談
日本経済新聞2011/9/1 11:40
 野田佳彦新首相(民主党代表)は1日午前、経団連の米倉弘昌会長と会談した。冒頭で米倉会長は「党の人事は大変、有言実行だった」と評価、野田新首相は「何とか早くいい(内閣の)体制を作って、すぐにでも始動できるようにする。これから間断なくしっかり経済対策を実行していきたいので、お知恵を拝借したい」と応じた。
 米倉氏は会談後、記者団に対して、野田新首相から「今までの菅直人政権が設けた会議を作り直すので、参加してほしい」と要請があったことを明らかにした。そのうえで米倉氏は「東日本大震災の発生まではちゃんとサポートしていたので、(政府とは)元通りの関係ということになる」との認識を示した。野田新首相には「全面的に協力する」と伝えたという。
 米倉氏は「震災復興が遅々として進まないので、ぜひとも早くしてほしい」とも要望。新首相との関係については「これまでよく話をしていたので、ちゃんと人となりをお互いにわかっており、理解し合えると思う」と語った。〔日経QUICKニュース〕
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脱原発も「ノーサイド」? 野田新首相 広がる警戒感
中日新聞 〈特報〉 -篠ケ瀬祐司、中山洋子-2011/08/31Wed.
■新設否定も再稼働は前向き
 新首相に選ばれた野田氏は30日午後、恒例のあいさつに国会内の各党控室を回った。
 野田氏は「新たな原子力発電所は造れない」としながらも、再稼働には前向きだ。これに対し、早速、与野党内から厳しい声が広がっている。
 民主党の川内博史衆院議員は「高速増殖炉や核燃料サイクルは稼働見通しが立っていない。しかも日本は地震国。原発の増設ができないのは当たり前だ」と指摘する。
 再稼働についても、現時点で検討を始めるのは早すぎるとみる。「福島第1原発は津波ではなく、地震で原子炉が壊れた可能性がある。まだ隠されているデータやマニュアルを公開させる必要もある。再稼働の検討の前に、事故原因の徹底究明に基づく安全審査指針の見直しが不可欠だ」
 その際、必要なのは政府が従来、無視してきた原子力行政に批判的な専門家の参画と訴える。
■「原子力ムラ」が巻き返しの動き
 かねて原子力行政を批判してきた自民党の河野太郎衆院議員は「野田氏の周辺には、電力業界に近い議員が多いように見える」と警戒する。
 河野氏は「既に電力各社の職員が、国会議員の事務所が集まる議員会館を回り、原発の必要性を説いて回っている」と「原子力ムラ」の巻き返しを暴露。「原子力委員会事務局にいる電力会社からの出向者の一掃も必要だ」と付け加えた。
 河野氏自身は「自民党は与党時代に原子力を推進した。これを総括した上で、自民党としての新たなエネルギー政策を打ち出したい」と話す。
 みんなの党の浅尾慶一郎政調会長は「野田氏は再稼働の際に安全性を点検するというが、地元住民だけではなく、国民的な合意がなければ再開は難しい」と、原発再稼働のハードルを上げる。
 その上で、最終処分場の確保まで含めた「原発の本当のコスト」を示すことが不可欠だと提起する。「電力会社の地域独占をやめて送配電部門を分離し、市場メカニズムを導入すればコストの高い原発は淘汰される。人工光合成など技術革新を進めることで10年以内の脱原発は可能だ」
 社民党の福島瑞穂党首は「野田氏は民主党代表選では世論を意識し、新設しないとトーンを変えた。しかし、中部電力浜岡原発を止めた菅氏ほど脱原発の方向性は出していない。官僚側は野田氏をくみしやすしと考えているのでは」と、新内閣の行方を案ずる。
 実際、30日には原子力委員会が原子力政策の基本方針となる「原子力政策大綱」の見直し作業再開を決めるなど、菅氏退場を待っていたかのような動きが見られる。
 福島氏はもんじゅ廃止や原子力安全・保安院の改編時の規制機能強化を訴えると意気込んだ。
■財界 早くも高評価
 原発をめぐっても、野田氏は月刊「文芸春秋」9月号の「わが政権構想」で「脱原発対推進の対立ではなく」と、得意の「ノーサイド」を主張している。
 しかし、菅首相が後に「私的な思い」と後ずさった7月の「脱原発」宣言の際は「短兵急に進める話ではない」と牽制。同誌の手記では「2030年までは原子力技術を蓄積することが現実的」とし、新興国への原発輸出も「国際貢献」と位置付けている。
 こうした「原発維持」の新首相の誕生を財界は大歓迎している。
 経団連の米倉弘昌会長(住友化学会長)は野田氏について早々に「安定感と行動力を持った政治リーダー」と絶賛。「(政治家の資質が)すべて物足りない」とこき下ろした前任者と打って変わり、高い評価を与えた。
 こうした野田氏に「脱原発」を期待するのは無意味なことなのか。
 経済評論家の佐高信氏は「無理でしょう」と切り捨てる。野田氏は増税論者だが、その前提は無駄遣いの一掃。しかし、原子力ムラにある多くの公益法人の改廃については絶望的だとみる。
 「しゃべる訓練はできているが、耳がふさがっているのが松下政経塾出身者の特徴。彼もその1人。脱原発の国民の声が聞こえていない」
 ちなみに佐高氏は菅首相の中途半端な「脱原発」も罪深いと断じる。「脱原発を言うのなら、党の利害を超えて解散しなければダメだった」
 政治評論家の森田実氏も「脱原発には、よほどの指導力が必要。野田政権では困難だ」とみる。
 「野田氏は松下政経塾出身で、財界に近いことは確かだ。ただ、『減原発』では国民的な合意がほぼ、できている。世論に逆らって“原発推進”とまでは言えないのだろう」
■地域独占崩れず 自由化望み薄?
 電力業界を含む財界が最も懸念するのが発送電の分離だ。巨費を投じる原発建設を可能にしてきたのは、電力会社による地域独占だった。その構造は変えられないのか。
 富士通総研の高橋洋主任研究員は「発送電分離は世界的な流れ。大半の国は日本より進んでいる。電力会社が反対するのは当然だが、電力の自由化によって再生可能エネルギーの普及も進む」と説明する。ちなみに脱原発を選んだドイツでは再生可能エネルギーは発電量全体の13・5%にも及んでいるという。
 「電力大手の地域独占を撤廃し、自由化を進めるには政治リーダーが強い意思を持つことが重要だ」と高橋氏は説くが、野田氏がそれに適任か否かについては「まだ出発点なので期待したいが、経産省に任せるなら思い切った変化は望み薄だ」と渋い見立てだ。
■被災者の健康維持こそ急務
 こうした脱原発へのかじきりと同時に、待ったなしなのは福島原発事故の被災者たちの健康維持だ。前政権は被ばくを広げる愚を犯している。
 「子どもたちを放射能から守る全国小児科医ネットワーク」の山田真代表は「原発の安全神話が崩れたら、今度は『放射能は安全』という妙な風潮が広がっている。低線量被ばくを軽視する人もいるが、影響が出てからでは遅い。最悪の事態を想定しなくては子どもたちを守れない」と話す。
 この間、開いてきた福島の子どもらの健康相談会では「風評をあおる」と言われることを恐れ、不安を口にできない親の姿を数多く見てきた。
 「被ばく検査もいつになるか分からない。国はこれまで何もせず、それが新政権で急に変わるとは思えない。しかし、新たな『安全神話』のために福島の子どもたちはいまだ放置されている」
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「脱原発」を堅持しよう 電力自由化=発送電分離は不可避/脱原発からは最も遠い野田佳彦新首相2011-09-02 | 地震/原発


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