底力を発揮する企業=花王・資生堂「価値」しっかり、売上高堅調

2009-01-30 | 社会
倹約に勝つ 花王・資生堂 「価値」しっかり、売上高堅調
business-i 2009/1/30
 赤字転落、大幅減産、要員削減…企業業績の急落を伝えるニュースが連日流れる中で、底力を発揮する企業がある。花王と資生堂という日用品と化粧品の国内最大手2社が29日、2008年4~12月期決算を発表。両社とも09年3月期は減収減益見通しだが、需要は底堅く推移しており、他業種に比べると落ち込み幅は軽微といえる。節約志向が高まる個人消費だが、ニーズをとらえた商品は売れるという内需の底堅さを示したともいえそうだ。
 ≪値上げ乗り切る≫
 花王の3四半期累計(4~12月)の国内売上高は、前年同期比0.6%増の7475億円と微増となった。通期の売上高は8期ぶりの減収、営業利益は2期連続のマイナス見通しだが、内需の健闘ぶりが目立つ。
 この要因について、大手スーパー関係者は、「選択の目が厳しくなり、指名買いに走り始めた消費者が花王を支持している証拠」と分析する。消費者は機能や使い勝手などに価値を見いだす動きを強めており、花王はうまくニーズをとらえた。
 同社は今月28日、都内のホテルで取引先の有力販売店向けに新製品を紹介する懇談会を開催した。昨年6月に衣料用粉末洗剤「アタック」の容量を減らし、値段を据え置くという実質値上げに踏み切ったため、尾崎元規社長は批判も覚悟していた。しかし、店主らからは「数年前の値下げ合戦による泥沼は起こさせません」と、尾崎社長を逆に勇気づける一幕もあったという。
 消臭力を高めるなど機能性を高めたことで、危惧(きぐ)していた消費者の反発が起きずに値上げが浸透。販売店の売り上げが堅調だったのが要因だ。花王は洗剤以外にも、液状から泡状にするなど使い勝手を向上したヘアカラー用品、通気性を上げた子供用おむつの4~12月までの売上高は「いずれも2けた増で推移した」(広報部)としている。
 一方の化粧品も堅調だ。百貨店関係者は「衣料品は節約志向の高まりで低迷しているが、化粧品は景気低迷でも売り上げは横ばい」と安堵(あんど)の表情を浮かべる。 百貨店の顔ともいえる1階を占める化粧品売り場の堅調ぶりは、地下の食品売り場とともに、ほかのフロアへ客を導く“シャワー効果”にもつながる。「化粧品売り場がなければ、売り上げはもっと落ち込んでいたかも…」と話す。
 ≪化粧品 ゆるむ財布≫
 資生堂の09年3月期は、7期ぶりの減収減益となる見通し。ただ、減少幅は「自動車、電機などに比べると少ない方」(原田康彦取締役)と話す。実際、未曾有の消費不振の中でも、08年4~12月期までで同社の百貨店向け高級化粧品の売り上げは2~3%減にとどまっている。ドラッグストア向けも0~1%のマイナスにとどまった。
 花王傘下のカネボウ化粧品も「5000円以上の価格帯の商品は前年比プラスを維持している」という。ある中堅化粧品幹部は「働く女性を中心に、ほかのものをケチっても化粧品だけはお金を惜しまない消費動向が顕著」と分析する。
 資生堂、花王とも現状を楽観視しているわけではない。少子化の影響を受け、国内売上高はよくて微増、何も手を打たなければ微減といった傾向が続く状況に変わりなく、「景気が上向いてもこの傾向は変わらないだろう」(証券アナリスト)との見方が大勢を占める。ただ、ニーズをつかんだ企業は、今後も健闘が続きそうだ。(飯田耕司)

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