日本でしか通用しない異形なもの 日本のリベラル派は「特異リベラル派」に過ぎぬ 櫻田淳 2016.2.1

2016-02-01 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉

2016.2.1 08:40更新
【正論】民主党保守派は自民党と連立せよ 日本のリベラル派は「特異リベラル派」に過ぎぬ 東洋学園大教授・櫻田淳
 今夏の参議院議員選挙は、その結果次第では、日本の戦後という時代の「終わりの始まり」を明確に画するかもしれない。その関連で注目すべきは、民主党内の動向である。
《特異な戦後リベラル派の実態》
 そもそも、現代の日本では、特に安全保障政策上、相応の軍事手段を含み置く「普通の国」を志向するのが「保守」であり、それに抗(あらが)うのが「リベラル」であるという理解が定着している。しかし、イラク戦争に際して対米共同歩調をとったトニー・ブレア麾下(きか)の英国労働党内閣、さらには「テロとの戦争状態」を宣言した現下のフランソワ・オランド麾下のフランス社会党政権の事例は、そうした理解が日本でしか通用しない異形なものである事情を示している。
 戦後日本の「リベラル派」の実態は「特異リベラル派」と呼ぶのが正確であろう。片や、「自由」や「社会活力」、さらには「国民統合」の護持が保守政治の基本信条である以上、「普通の国」志向を含めて、それを担保する政策志向に保守政治勢力が熱意を示すのは、むしろ当然のことである。
 現下の安倍晋三総裁麾下の自民党は、それを半ば劇的に打ち出しているにすぎない。その時々の「時代の要請」に適切に応じる「平衡感覚」が、保守政治の肝である。「どのような政策か」は本来、保守政治の条件ではない。
 ところで、巷間、流布する一つの誤解は、「民主党内閣3代は政策上の実績を何ら残さなかった」というものである。しかし、鳩山由紀夫内閣は、在沖縄米軍普天間基地移設案件で「最低でも県外」を掲げて右往左往した揚げ句、日米関係を損壊したけれども、それを何とか応急手当てをした上で安倍自民党内閣に受け渡したのは、野田佳彦内閣の実績である。
 武器輸出三原則の見直しにせよ環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉への参加決定にせよ、野田内閣の対応は、「利益を図る方向性」を米国に対して一致させる意義を持つものであった。それ故にこそ、野田内閣退陣に際して、米国政府は大統領報道官の発言として「大統領は地球的、地域的、2国間問題の幅で米日関係に対する野田首相の貢献に感謝している」と表明したのである。
《「自民・公明+α」の枠組み》
 民主党の現状における最大の不可思議は、そうした野田内閣下の明白な実績を強調せずに、それを実質上、無視した対応に走っていることである。特に昨年の安保法制審議の最中に民主党がとった対応は、前述の「特異リベラル派」の権化とも呼ぶべき退行を示した。政権担当に際しての僅かな「実績」ですら誇示しない民主党の閉塞(へいそく)は、むしろ当然であろう。
 武器輸出三原則の見直しにせよ環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉への参加決定にせよ、野田内閣の対応は、「利益を図る方向性」を米国に対して一致させる意義を持つものであった。それ故にこそ、野田内閣退陣に際して、米国政府は大統領報道官の発言として「大統領は地球的、地域的、2国間問題の幅で米日関係に対する野田首相の貢献に感謝している」と表明したのである。
《「自民・公明+α」の枠組み》
 民主党の現状における最大の不可思議は、そうした野田内閣下の明白な実績を強調せずに、それを実質上、無視した対応に走っていることである。特に昨年の安保法制審議の最中に民主党がとった対応は、前述の「特異リベラル派」の権化とも呼ぶべき退行を示した。政権担当に際しての僅かな「実績」ですら誇示しない民主党の閉塞(へいそく)は、むしろ当然であろう。
 その意味で興味深いのは、先頃、『日本経済新聞』(1月24日付)に掲載された前原誠司、長島昭久、細野豪志の民主党保守系3議員の鼎談である。この鼎談からは、前原氏ら3議員三様の「現状打開」への思いが伝わってくる。
 筆者が彼らを含む民主党保守系に何かを伝えるとすれば、それは、先々、「自民・公明+α」という政権の枠組みの樹立を見越して、その「α」の位置を占めるべく、具体的な動きを始めるべきだということである。それは、要するに、憲法であれ安全保障であれ、保守系政治勢力として政策志向を同じくする案件には、自民・民主の既成党派の垣根を越えて協調すべきだということを意味する。そして、「自民・公明+α」連立の第一の大義としては、憲法改正を据えるのが相応(ふさわ)しかろう。
《時代の歯車動かす「可能性」》
 逆にいえば、安倍自民党との対決という野党の建前に縛られ、自らの政策上の「実績」を世に示す機会を逸している限り、民主党保守系の前途は、先細りを免れまい。前述3議員を含む民主党保守系には、「ルビコン」を渡るか渡らざるかを決める瞬間が迫っている。それは、「野党」という立場に固着するか、その殻を破るかという決断である。
 そして、憲法改正が実現し、戦後「特異リベラル派」が退場してしまえば、その後は「普通の国」での「保守・リベラル」政策論争が展開される風景が出現するはずである。当代の日本に本来、要請されるのは、実は安全保障政策を長年、彩ったような「神学論争」ではなく、少子高齢化の進展を見据えた内治に絡む実践的な「保守・リベラル論争」である。
 故に、憲法改正は、戦後「保守派」が考えているような「大願成就」としての結果なのではなく、21世紀の日本において世界に通用する「保守・リベラル」政策論争が展開される基盤を構築するための過程でしかない。そして、その基盤が構築された暁には、筆者は、「ハト派」や「リベラル派」と目される立場に転向しようとも考えている。
 安倍自民党の「一強」と評される政治環境においてでさえ、民主党保守系の決断には、時代の歯車を大きく動かし得る「可能性」がある。要は、民主党保守系議員が、その「可能性」を信じ切れるかである。
(櫻田淳 さくらだ・じゅん)

 ◎上記事は[産経新聞]からの転載・引用です
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