花も散りかすみの消えし きのふけふ 青葉の山の峰ぞまじかき 「今週のことば」 2020.5.5

2020-05-05 | 文化 思索
今週のことば
 松本 章男
 中日新聞 2020.5.5 火曜日 朝刊

花も散りかすみの消えし きのふけふ 青葉の山の峰ぞまじかき  西園寺実兼

 節気にいう「立夏」となった。「更衣・首夏(しゅか)・新樹」の題で、英明な先人たちが日々の感懐を和歌としたのが、この時季である。更衣はすなわち衣がえ。衣服を薄ものに改め、軽やかで爽やかなその着心地を「蝉の羽ごろも」とよぶなど、悦に入っている。
 首夏は夏の初めをさし、新樹は山野の新緑を概念とするので、これまた同工異曲の歌題。提示歌は文保2(1318)年の百首歌。夏歌の冒頭に、首夏の位置で新樹を詠んでいる。
 桜の花も疾うに散り去り春霞も消えて、新樹の季節が到来した。山そのものが生命力の塊のように思える。青葉の茂山の峰が生き生きと迫(せ)り出してくるかと見えるではないか。歌意はいう。
 コロナ禍で自粛の日々。山々の新樹に接することは不可能でも、わたしたちの周囲には、大自然がもたらしてくれる季節の贈物の何かが必ずある。今こそその何かに憩いを見出そう。 (随筆家)

 ◎上記事は[中日新聞]からの書き写し(=来栖)
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