2009/3/23 Business-i
コスモ石油は22日、2012年度をめどに太陽光発電事業に参入する方針を固めた。太陽電池メーカー向けに素材となるポリシリコン(高純度多結晶シリコン)を供給、将来的には素材提供にとどまらず、太陽電池製造事業への参画も検討する。少子化や若者の車離れでガソリンなど石油製品の需要が縮小する中、石油元売り各社の新エネルギー分野進出が加速している。脱石油の急先鋒(せんぽう)ともいえる新エネに勝ち残りの命運を託す。
≪風力発電は新施設≫
コスモは現在、ポリシリコンの生産技術の研究を進めている。シャープや三洋電機など国内の太陽電池メーカーは相次いで生産能力を引き上げており、需要の高まりが見込まれるポリシリコンの供給を足がかりに太陽光発電事業への参入を果たす。市場の動向次第では、太陽電池メーカーなどと提携し電池の製造事業に参画、事業領域の拡大を目指す考えだ。
同時に風力発電事業の強化にも乗り出す。04年12月から「酒田風力発電所」(山形県酒田市、出力1500キロワット)の営業運転を開始しているが、そのノウハウを生かして10年代前半をめどに千葉県市原市の千葉製油所内に出力6000キロワット級の風力発電施設を建設する。発電した電気は当面、製油所向けに使うが、「風力発電のベンチャー企業を買収するなどして、本格的に参入することも検討する」(同社幹部)という。
国内の石油需要は1999年をピークに減少の一途をたどる中、コスモに限らず、石油元売り各社は先を競って新エネ分野に参入している。新日本石油は今年1月、三洋電機と太陽電池事業の合弁会社を設立し、薄膜型と呼ばれる大規模太陽光発電所向け太陽電池の製造・販売に乗り出した。
昭和シェル石油はシリコンの代わりに銅などを使用する次世代型薄膜系(CIS)太陽電池事業を展開している。11年の稼働を目指し、年間100万キロワット規模の生産能力を持つ世界最大級の太陽光発電パネル工場を建設する計画だ。出光興産も07年11月に風力発電の専門会社「日本風力開発」に出資し、風力発電事業に進出を果たした。
≪成長のエンジンに≫
「エネルギー事業者として生き残るには、太陽光、風力発電は避けて通れない」。石油元売り幹部は新エネ分野進出の理由をそう説明する。地球温暖化防止や原油価格の高騰を受け、“脱石油”の動きはますます活発化している。新エネ分野を成長のエンジンに位置付け、「早めに手を打たなければ、取り返しがつかなくなる」(同)との危機感が各社を追い立てている。
政府は10年度までに家庭などで太陽光で発電した余剰電力について、現在の約2倍の価格で買い取ることを電力会社に義務付ける。太陽電池市場拡大への追い風になる措置だが、新エネは各国のメーカーがしのぎを削る分野。国内市場でも大手から中小、ベンチャー企業が入り乱れ、競争激化が見込まれる。雇用創出や経済活性化への期待も大きい一方、製造、発電コストの低減など競争力確保に向けた課題も多い。石油元売り各社には将来を委ねた新エネ分野でも、厳しい現実が待ち構えている。(橋本亮)
コスモ石油は22日、2012年度をめどに太陽光発電事業に参入する方針を固めた。太陽電池メーカー向けに素材となるポリシリコン(高純度多結晶シリコン)を供給、将来的には素材提供にとどまらず、太陽電池製造事業への参画も検討する。少子化や若者の車離れでガソリンなど石油製品の需要が縮小する中、石油元売り各社の新エネルギー分野進出が加速している。脱石油の急先鋒(せんぽう)ともいえる新エネに勝ち残りの命運を託す。
≪風力発電は新施設≫
コスモは現在、ポリシリコンの生産技術の研究を進めている。シャープや三洋電機など国内の太陽電池メーカーは相次いで生産能力を引き上げており、需要の高まりが見込まれるポリシリコンの供給を足がかりに太陽光発電事業への参入を果たす。市場の動向次第では、太陽電池メーカーなどと提携し電池の製造事業に参画、事業領域の拡大を目指す考えだ。
同時に風力発電事業の強化にも乗り出す。04年12月から「酒田風力発電所」(山形県酒田市、出力1500キロワット)の営業運転を開始しているが、そのノウハウを生かして10年代前半をめどに千葉県市原市の千葉製油所内に出力6000キロワット級の風力発電施設を建設する。発電した電気は当面、製油所向けに使うが、「風力発電のベンチャー企業を買収するなどして、本格的に参入することも検討する」(同社幹部)という。
国内の石油需要は1999年をピークに減少の一途をたどる中、コスモに限らず、石油元売り各社は先を競って新エネ分野に参入している。新日本石油は今年1月、三洋電機と太陽電池事業の合弁会社を設立し、薄膜型と呼ばれる大規模太陽光発電所向け太陽電池の製造・販売に乗り出した。
昭和シェル石油はシリコンの代わりに銅などを使用する次世代型薄膜系(CIS)太陽電池事業を展開している。11年の稼働を目指し、年間100万キロワット規模の生産能力を持つ世界最大級の太陽光発電パネル工場を建設する計画だ。出光興産も07年11月に風力発電の専門会社「日本風力開発」に出資し、風力発電事業に進出を果たした。
≪成長のエンジンに≫
「エネルギー事業者として生き残るには、太陽光、風力発電は避けて通れない」。石油元売り幹部は新エネ分野進出の理由をそう説明する。地球温暖化防止や原油価格の高騰を受け、“脱石油”の動きはますます活発化している。新エネ分野を成長のエンジンに位置付け、「早めに手を打たなければ、取り返しがつかなくなる」(同)との危機感が各社を追い立てている。
政府は10年度までに家庭などで太陽光で発電した余剰電力について、現在の約2倍の価格で買い取ることを電力会社に義務付ける。太陽電池市場拡大への追い風になる措置だが、新エネは各国のメーカーがしのぎを削る分野。国内市場でも大手から中小、ベンチャー企業が入り乱れ、競争激化が見込まれる。雇用創出や経済活性化への期待も大きい一方、製造、発電コストの低減など競争力確保に向けた課題も多い。石油元売り各社には将来を委ねた新エネ分野でも、厳しい現実が待ち構えている。(橋本亮)