『裁判員制度のウソ、ムリ、拙速』http://www.k4.dion.ne.jp/~yuko-k/adagio/saiban-in1.htm
自由権、財産権の侵害
憲法13条は「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」と定め、同18条後段は「犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない」と定め、同19条は「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない」と定め、さらに同29条1項は「財産権は、これを侵してはならない」と定めている(このうち「良心の自由」については、政府は立案段階で指摘を受け、これに違反しないよう政令で辞退事由を設けることを約束している)。(中略)
憲法に根拠もないのに突如裁判への参加は公共の福祉だとして、国民にその意思に反して以上のような被害(雇用主の財産的被害を含む)を及ぼす法律を作ることは、国民の自由権、幸福追求権は立法その他の国政の上で最大の尊重が必要だとする前記憲法13条に違反し、また前記憲法18条の苦役強制の禁止、同29条の財産権の不可侵に違反することが明らかである。
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市民12人は民主主義の要 ロスで陪審員経験、岡崎出身・渡辺さん
2009年2月7日 中日新聞夕刊
米国の裁判で「市民の義務」として定着している陪審員制度。5月に始まる日本の裁判員制度と、仕組みは違うが市民が参加する点は共通している。一歩先をゆく米国の現状を、愛知県岡崎市出身の日本人陪審員の経験から見た。(社会部・長田弘己)
控室に400人の陪審員候補者が集まっていた。2007年1月2日、午前7時45分のロサンゼルス連邦地方裁判所。作家渡辺正清さん(71)も呼び出された。米国に46年間住み、永住権を取得している。これまで何度も呼び出し状を受け取り、陪審員に選ばれた殺人事件で別の陪審員同士が裁判所内のエレベーターで事件の話をしたため審理が中断したこともあった。最後まで担当したのは今回が初めてだった。
この日は、すぐに選任手続き会場となる法廷に連れて行かれた。裁判官は中央の高い席に、その脇に検察官3人、被告と弁護士が立っていた。裁判官が事件の概要を説明し、陪審員候補の12人が自己紹介した。被告は、麻薬売買で得た資金に絡むマネーロンダリング(資金洗浄)をしたとして罪に問われた元銀行員の男性だった。
裁判官が「同居している人に弁護士や裁判官はいるか」「事件の報道は見たか」などと尋ね、候補者が順番に答えた。検察官と弁護士がじっと見つめている。質問が終わると、法廷の隅で裁判官、検察官、弁護士の3者が小声で話し合った後、麻薬で逮捕歴があると質問で話した3人の候補者に裁判官が「帰って結構です」と告げた。代わって新たな候補者3人が着席した。渡辺さんら「問題なし」と判断された候補者が12人に達すると陪審員に決まった。
殺人など重大事件では、陪審員の選任手続きだけで数週間かかることもある。全員一致でしか有罪とできないため、弁護士は無罪を主張してくれそうな人を探し、検察官は排除しようとするからだ。 公判は3日間で終わり評議に入った。トイレ付きの部屋に缶詰め、昼食は裁判所の食堂。所内では12人の集団行動。監視の職員も付き添った。裁判官は評議に参加せず、陪審員のみだ。法律を知らない市民が頼りにするのは、裁判官から渡された「評決の手引き」。事件の争点などが記された書面に従って議論はスムーズに進み、評議4日目で有罪と判断した。
後日、裁判官から感謝の手紙が届いた。「法廷で働く誰もが、陪審員の洞察力や良識、公正さが裁判に役立っていると考えています」とつづられていた。
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渡辺さんは「市民の日常が法によって守られていることを実感できた。民意が反映できたと思うし、民主主義を強める制度だという意識が深まった」と振り返る。
日本の裁判員制度はどう映っているのか。「裁判官が加わる評議では民意が反映できないのではないか。守秘義務が一生だと、経験を分かち合うことが難しく、制度が社会に広がりにくいし、市民から表現の自由を奪うことになる」などと指摘し、仕組みに疑問を投げかける。
【米国の陪審員制度と日本の裁判員制度】 陪審員は12人で、裁判官、検察官、弁護士の3者で選任する。有罪か無罪かを原則全員一致で評決し、裁判官が量刑を決める。裁判員制度では、裁判員6人と裁判官3人が評議で有罪か無罪かに加え、量刑まで決める。多数決となるが多数派に裁判官が1人でも入っていないと成立しない。守秘義務は裁判員は一生課せられ、陪審員は審理中のみ。裁判員は任務中、昼食は自由で監視の職員はつかない。
■わたなべ・まさきよ…1938年石川県で出生後、愛知県岡崎市で育つ。東北大卒業後、62年米カリフォルニア大に留学。99年までロサンゼルス郡公共事業局に勤務した。著書に『ヤマト魂』『ゴー・フォー・ブローク!-日系二世兵士たちの戦場』など。ロサンゼルス在住。(文字の背景色は来栖)