鳩山氏の「方便」「抑止力」発言/憲法の前文、9条によって、尖閣は守れるか

2011-02-16 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉

「方便」発言:「米軍抑止力大きい」 防衛相、外相共に強調
 【東京】北沢俊美防衛相は15日の記者会見で、鳩山由紀夫氏が普天間の県内移設に「抑止力」としたのは「方便」だと述べたことについて「沖縄や米国に誤ったメッセージにならないように、政府としてしっかりした対応はしていかなければならない」と話した。
 海兵隊の抑止力については「海兵隊のプレゼンス(存在)は沖縄の地政学上からいっても、アジア太平洋地域の不安定化に対する抑止力は極めて大きいと認識している」と述べ、普天間の県内移設をあらためて確認した昨年5月の日米合意を順守する考えを重ねて強調した。
 前原誠司外相は同日の会見で「米軍のプレゼンス、提供施設・区域の存在がこの地域の安定、日本の安全保障に大きな役割を果たしていることは紛れもない事実。鳩山政権の時も現在も普遍的に米軍の抑止力は変わらない」と述べた。
 鳩山氏の側近として知られる大畠章宏国土交通相も「ご発言しない方がいいのではないか」と苦言を呈し「近々(鳩山氏に)お会いして真意を聞きたい」と述べた。
 公明党の山口那津男代表も記者会見で「言語道断だ。日米関係に大きな影響を与え、沖縄県民の不信感を強める。菅直人首相の認識も強く問いただす必要がある」と批判した。
 社民党の重野安正幹事長は民主党の岡田克也幹事長と会談した際、「沖縄県民の感情を逆なでする発言だ」と批判。同席した民主党の安住淳国対委員長も「われわれも怒っている。迷惑している」と同調した。(琉球新報)2011年2月16日
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〈来栖の独白〉
 沖縄米海兵隊の存在について「抑止力」は「方便」とした鳩山元首相の発言が、メディアの音頭とりで物議を醸している。
 普天間の問題は鳩山元首相が県外、海外を模索し、悩み尽くした末に出さざるを得なかった結論だった。鳩山氏が悩みに悩んでいた時期、国民は何をしていたか。自民党政権時代からこんにちまで、果たして日本国民は、沖縄県民の抱える痛苦に幾ばくかでも心を痛めただろうか。「沖縄」と言えば、リゾート地でしかなかったのではないか。仲井眞弘多知事でさえ、当初は県内移設を諒解していた。それなのに、民主党が公約で「海外・県外」を言った途端、国民も知事も、まるでそれまで沖縄のために祈ってきたかのように「海外・県外」と合唱し、鳩山氏を責めたてた。結果として辺野古移転を認めざるを得ない事になったが、鳩山氏一人を責めたてる問題ではないのではないか。
 沖縄や防衛の問題を、果たしてどれほどの国民が大人の、成熟した視点で考えてきたといえるだろうか。私には疑わしい。防衛に関して自民党政治が対米隷属なら、それを嘲笑する社民党の沖縄基地政策は空理空論である。
 「抑止」という言葉が行き交っている。
 「抑止」は何を持って可能か、真剣に考えてみなければならない。「戦争放棄という、世にも類い稀な美しい理想、それを謳う日本国憲法が最大の抑止である」などと、抜け目ない国際社会を誤認し、とんでもないことを言う人たちもいる。そういう人たちに尋ねたい。「尖閣や北方領土は、どうやって守りますか」と。世界第2位の経済大国となり、核武装し、6兆円に余る軍事予算を計上する中国が尖閣の周辺を絶えず窺っている。メドベージェフは、昨年北方領土を視察した。これら、いずこも国益優先の国際社会の中で、どうやって我が国の領土と主権、独立を守るのだろう(アメリカからも、日本は独立しなければならない)。
 鳩山さんが首相であった時期、我々が見せられたのは、この国が自民党政権時代から営々としてアメリカと一部の外務官僚に牛耳られてきた、という現実だった。アメリカと官僚に隷属、依存してきた、という現実であった。
 「事なかれ」が真髄の官僚は、当然のことながらアメリカ追従の体制を壊すことによって惹起される「厄介」を背負いたくなかった。そのため、「海外・県外」を何とか実現したいと心砕く鳩山政権を冷徹に突き放したのである。小沢さんは言う。「事なかれ」が官僚の本領です、と。アメリカに逆らって苦労を背負い込み、自分に瑕疵を招くようなことだけはしたくない。それが、官僚の本意である。それゆえ官僚は、一切の協力を鳩山政権にしなかった。国の主権、領土、沖縄県民よりも、自分たち一部官僚の保身、安泰を優先したのである。
 メディアは、鳩山氏の片言隻句を揶揄する資格はない。考えねばならない。
 いま一度、問いたい。「抑止(力)」とは、何か。我が国の領土は、如何にして守るのか。憲法の前文、9条によって、尖閣は守れるだろうか。
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田母神俊雄著『田母神国軍 たったこれだけで日本は普通の国になる』(産経新聞出版)
 p169~
 我が国が核武装を目指す場合、国内的な合意を取ることが相当に難しいし、また核武装国はこれを邪魔しようとするでしょう。(略)
 日本の核アレルギーは相当なもので、核をアメリカに落とされたことも忘れてしまっているほどですが、1番の問題は、国民も政治家も核兵器がどういう兵器なのか、わかっていないということです。核兵器は先制攻撃に利用するものだと思われていますが、国際社会では「核兵器は防御の兵器」というのが常識です。
 核兵器はその破壊力があまりにも強大であるために、核戦争に勝者はいません。核で先制攻撃したところで必ず報復されますから、これもまた負けに等しい。
 ですから核は、「やれるならやってみろ、だけどやったら報復するぞ」と思わせておいて、実際は誰も使いはしないし、使わせもしないという“防御的”な兵器なのです。
 また、核兵器は、これまでの通常兵器のように戦力の均衡というものを必要としません。通常兵器の場合は、相手国が100で自国が1というほどの戦力差をつけられていれば、たとえ1を持っていようとも何の抑止にもなりません。しかし、核の場合は、アメリカやロシアがそれを何千発保有していようが、インドや北朝鮮が数発持つだけで十分に抑止力になります。
 日本の場合は、核武装について議論をするだけでも、核抑止力は向上します。外交交渉力も向上するのです。それだけでも、国際社会の中で日本の発言力は高まります。しかし、「核武装はしません」と公言した途端に、世界中から相手にされなくなるのです。(略)
 アメリカもロシアも、自分たち以外の国に核武装をさせたくないのが本音です。NPTという枠組みで世界的に核軍縮を呼びかけていますが、あれはタテマエでしかありません。アメリカもロシアも「核を廃絶する方向に行くよ」と単なるジェスチャーをしているの過ぎないのです。
 「私たちも核廃絶に向けて努力するのだから、いまから核武装しようとは考えないでください」ということで、本音は、「皆さんが核武装を考えなければ、私たち核保有国の優位は永遠に続きます」と言っているわけです。
 そんな核保有国の意図もわからずに、日本の首相はそれにまともに乗っかってしまう。2009年9月、ニューヨークの国連本部で開かれた核軍縮・核不拡散に関する安全保障理事会の会合で、鳩山由紀夫首相(当時)は非核三原則を堅持すると改めて宣言しました。
 鳩山さん本人は心の底から、そうすれば世界から尊敬されると思っているのだから重症です。当然ながら、世界中の国が、「馬鹿な首相もいるな」と思ったはずです。誰も言わないけれど、世界中の失笑を買ったのは明らかです。
 あの場では、「日本は唯一の被爆国だからこそ、二度と核攻撃されないためにも核武装する権利がある」と言うべきでした。鳩山氏、ひいては日本の政治家は、「国際政治を動かしているのが核兵器だ」ということを全く理解していないのだから、呆れるばかりです。
北方領土 解決の道はあるのか NHKスペシャル
2011年2月13日(日) 午後9時00分~9時49分 総合テレビ
 
北方領土返還交渉…かつてない厳しい状況下で動き始めた外交交渉の行方を描く。
NHKはこの1年、北方領土にカメラを入れ島の姿を記録してきた。ロシア政府の投資で島は潤い、かつて日本の援助に頼った貧しい姿はすでにそこにはなかった。そして去年11月。メドベ-ジェフ大統領が国後島を訪問、実効支配への強い国家意思を見せつけた。
占領から66年、返還実現の最大のチャンスはソビエト崩壊で島の疲弊が進んだ時代だった。しかし、歴史の正義を求める思いと、ロシアを動かす現実的な外交戦略との間で日本は揺れ動き、交渉は毎回暗礁に乗り上げた。そして現在。ロシアは自国経済の躍進とともに日本への関心を低下させ、北方領土問題解決の意欲も遠のきつつあると言われる。日本に、まだチャンスはあるのか?
前原外相がロシア訪問を計画するなど、政府は“メドべ-ジェフ・ショック”を機に再び動き始めた。島を追われた元島民はすでに平均年齢77歳。残された時間が少なくなる中で“固有の領土”返還を求める日本にどんな戦略が必要なのか?これまでの交渉をスクープ証言・資料とともにたどりながら、ロシアの思惑を探り、追い詰められた領土交渉の進むべき道を探る。


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