「朝日」は民主主義を破壊したいのか 2023/5/14

2023-05-14 | 文化 思索

 新聞に喝! 
「朝日」は民主主義を破壊したいのか
 日本学術機構代表理事・政治学者・岩田温
 産経新聞 2023/5/14 10:00
 衆参両院の補欠選挙の遊説中、岸田文雄首相がテロリストによって暗殺されかけた。わが国の民主主義の危機である。選挙の際、政治家は国民に直接訴え自らの思想信条を語る。有権者は政治家を直(じか)に見て判断する。これが日本の民主主義の原点だ。
 朝日新聞は「岸田首相襲撃 民主主義揺るがす暴挙」(4月16日付)と題した社説で次のように論じた。「民主主義の最も重要な基盤である選挙が、再び暴力にさらされた事態は極めて深刻である」
 全くの正論だ。だが、読者を愚弄すべきでない。朝日新聞の関係者諸兄は思い返してみるべきだ。安倍晋三元首相が選挙の最中暗殺された。テロリストによる暴挙だった。驚くべきことだが、このときテロリズムを否定せずテロリストをたたえた人々が存在した。「REVOLUTION+1」なる映画が上映されたのである。主人公は安倍氏を銃撃した山上徹也被告を意識しているのが明白な映画だ。しかも監督は元日本赤軍メンバー。上映会では、漫画家がテロ事件に関して「でかした!」と叫んだという。この上映会の雰囲気を端的に表している。
 朝日新聞は昨年9月、「日本映画に活!」との記事でこの映画を取り上げた。中身は論評に値しない。さらにこの映画の上映場所や期間を記載した。客観的に分析すれば、事実上の広報活動だろう。民主主義を冒瀆(ぼうとく)するテロリストを宣伝した映画を、なぜ記事にする必要があったのか。
 ドストエフスキーが長編小説『悪霊』を書く際に、モデルにしたのがネチャーエフだった。彼が『革命家の教理問答(カテキズム)』で革命家の特徴を表現した。この世界は容赦なき敵であり、革命家はこの世界を破壊すべく運命づけられていると言う。暴力的な革命家とテロリストはほとんど同義であろう。自由と民主主義を守ろうとするならば、破壊を目的としたテロリズムとは断固闘い抜かなければならない。民主主義は優れた政治体制だが極めて脆(もろ)い。暴力によって瞬時に瓦解(がかい)しかねない。だからこそ、この体制を守るために死力を尽くすべきなのだ。
 安倍氏批判。それは自由だ。しかし、常識に立ち戻るべきだ。社説で民主主義を擁護すると大々的に喧伝(けんでん)しながら、テロリストを賛美するかのごとき映画を告知するのは一貫性に欠ける。安倍氏批判さえできれば暴力も擁護するのか。そうした考えが民主主義を破壊する。朝日新聞に問いたい。日本の自由民主主義体制を破壊したいのか。
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【プロフィル】岩田温 いわた・あつし
 昭和58年、静岡県生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科修了。専攻は政治哲学。著書に『政治学者、ユーチューバーになる』など多数。

 ◎上記事は[産経新聞]からの転載・引用です


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