現憲法の空想的な平和主義は限界にきている 憲法を改めるとは、戦後日本の歪みを改めること 2016.11.6

2016-11-06 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉

 産経ニュース 2016.11.6 12:07更新
【日曜に書く】永井荷風も笑っていた日本国憲法 改憲で国家主権回復を 論説委員・河村直哉
 2つの文章を頭の中で並べてみて、十年一日のさまに暗い気持ちになる。
 「日本国憲法を私たちが書いたことを彼は知らないのか」
 「米人の作りし日本新憲法今日より実施の由。笑うべし」
*国会の怠慢
 前者は米大統領選で、トランプ氏を批判する文脈で出たバイデン副大統領の今夏の発言。
 後者はわりと知られていよう。作家、永井荷風の日記『断腸亭日乗(だんちょうていにちじょう)』の、憲法が施行された昭和22年5月3日の記述。21年11月3日に公布された憲法はさきほど70歳、古希となった。十年一日どころではない。
 日本を見る海外の目も意識したいが、日本人が自らの最高法規の出自をどう考えるかということがより重要だろう。臨時国会などで、バイデン発言に憤る声が議員諸氏から広範に起こるかと思っていた。ところがこの国の立法府の選良は、奥ゆかしいというのかなんというのか。
 衆院憲法審査会の開催も今月10日まで遅れた。「立憲主義」を主題とすることに、与党と民進党で思惑の違いがあったからという。
 しかし議論すらなくて何が始まるのか。野党は審査会で与党追及のみを優先すべきではない。また自民党は平成24年の改憲草案を封印して、野党に歩み寄る姿勢も見せている。中長期的に野党とも合意したい意向は分かるが、憲法改正を党是とする以上、具体的なビジョンを堂々と語るべきである。
 かくの如(ごと)く議論も低調なまま、米人の作りし憲法は、一字一句変わらず古希を迎えるに至ったのだった。
*戦後日本のゆがみ
 日本を取り巻く安全保障上の脅威は切迫している。現憲法の空想的な平和主義は限界にきている。しかしそれだけではない。憲法を改めるとは、戦後日本のゆがみを改めることにほかならない。法の次元に留まらず日本人の精神にかかわる問題であるといってよい。
 現行憲法のもとになった連合国軍総司令部(GHQ)草案では、国家の主権としての戦争と、交戦権が否定されている。現行憲法は、国家主権の制限を始まりに含んでいるのである。
 不愉快な問いだろうが、主権を制限された国家が独立国といえるのだろうか。日本は米国に従属しているなどとする従属国家論が、日本の独立以来現在までさまざまに論じられているが、ゆえなしとはできまい。
 好戦的たれなどといっているのではない。9条2項を主権制限条項とみなした評論家の江藤淳は、交戦権の回復は戦争への道を歩むことではなく、日本が「自己の運命の主人公になる」ことだといった(『一九四六年憲法-その拘束』)。独立自存の精神こそ肝心なのだ。
*右傾化でなく正常化
 ちなみに言論界全体を見ても、憲法改正をはじめ日本がふつうの国家に戻ろうとする動きに対する牽制(けんせい)は、なお根強くある。昨年の安保法制反対の合唱もしかり。今年目立った保守組織、日本会議に関する批判本の出版も、その変奏といえる。
 「右傾化」「戦前回帰」などの文言が本には躍る。日本会議と政治家や宗教団体とのかかわりを挙げ、同会議も掲げる憲法改正の動きを牽制する。
 特定の団体の側に立って論を進めるつもりはない。しかし美しい日本の再建、誇りある国づくりを掲げるこの組織が、批判本がいうほど特異であるとは筆者には思えない。
 むしろうんざりするのはレッテル貼りの方。これも十年一日なのだ。戦後の思潮を振り返れば、たとえば改憲議論が高まっていた昭和31年、朝日新聞は年頭の社説で「“古き良き時代”への回顧」「復古論者」を警戒する(1月3日)。昭和43年に閣僚の憲法批判が問題視された際の社説では、「急速に右傾化を強めてきた佐藤(栄作)内閣」(2月9日)という。
 「回顧(回帰)」や「右傾化」といった批判は、昔からある常套(じょうとう)句なのである。最近では平成24年暮れに第2次安倍晋三内閣ができたころから、左派メディアにまた「右傾化」が目立つようになった。
 しかし実際は、国家主権を自ら制限するほどに左傾していた戦後日本が、正常な国に戻ろうとしているということにすぎない。真ん中に戻ろうとする動きも左から見れば右向きに見える、というだけのことである。
 十年一日の左派的護憲論も、改憲を党是とするはずの自民党の口ごもりも、建設的ではない。議論の高まりを期待する。(論説委員・河村直哉 かわむら なおや)

 ◎上記事は[産経新聞]からの転載・引用です *強調(太字)は来栖
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憲法公布70年 日本のかたち示す改正を 「9条」先送りの暇などない 現憲法は「占領基本法」 2016.11.3 
「私たちが日本国憲法を書いた。日本は核保有国になり得ない」バイデン副大統領、トランプ氏の核武装論批判2016/8/16 
「日本は一夜で核製造可能」=対北朝鮮・中国の協力促す-米副大統領 2016/06/24 
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【右傾化でなく「普通の国」化だ】田久保忠衛 / 「戦前化/軍国主義化/右傾化」~うんざりする用語 
◇ 憲法改正で「日本」を取り戻せ 誤った歴史観を広めるメディア・教育界に風穴を 『Voice』4月号 2013-03-24 
「右傾化」批判の誤り/安全保障への無関心や不関与という極左から、真ん中へ向かおうとしているだけです 古森義久


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