
コロナ乗じ「宗教も中国化」 カトリック教徒の村、今年は巡礼受け入れ禁止に
東京新聞 2020年9月21日
冒頭画像;河北省東閭村にある東閭中華聖母堂教会
キリスト教カトリックの総本山ローマ教皇庁(バチカン)と中国政府の歴史的和解から22日で2年となる。しかし、この2年間で中国政府は「宗教の中国化」を掲げてあらゆる宗教への統制を強めている。住民の8割がカトリック教徒という河北省の村を訪れると、コロナ禍に乗じて信仰への抑圧がさらに広がっていた。(河北省東閭村で、中沢穣、写真も)
トウモロコシ畑に交じってれんが工場などが点在する典型的な農村風景を抜けると、土ぼこりの先に壮大な教会が突然現れた。バチカンが巡礼地として認定する東閭中華聖母堂教会だ。
清朝末期の1900年に起きた外国人排斥運動「義和団事件」の際、村の上空に聖母マリアが現れ、村を包囲した義和団から教徒を守ったと伝えられる。これを機に建てられた教会は41年に日本軍によって焼き払われたが、90年前後に再建された。
■「あそこはキリスト教でなく、共産党を信じている」
しかし、少し離れた路上で高齢の男性に同教会について尋ねると「あそこは、(キリスト教の)教えではなく共産党を信じているから、好きじゃない」と声をひそめた。同教会は、共産党指導下の政府系組織「中国天主教愛国会」の傘下にある。向かいの工場の壁には「党の宗教工作の基本方針を全面貫徹せよ」とのスローガンが書かれている。
男性によると、住民約1万人のうち8割がカトリック教徒とされる村では、愛国会傘下にある政府系教会の教徒と教皇への忠誠を優先する地下教会の信徒が「半々ぐらい」だが、村内に複数あった地下教会は10年ほど前に当局に「非合法」とされ、すべて閉鎖された。現在は個人宅などで行う小規模なミサは黙認されているが、多人数が集まる活動はできないという。
■日曜ミサ以外は教会に入れず
「扶助者聖母マリアの記念日」の毎年5月24日には中国各地の教徒が村に巡礼に訪れるが、当局は今年、新型コロナウイルス対策を名目に村を閉鎖し巡礼を許さなかった。教会近くに住む別の男性によると、愛国会傘下の同教会すらも約1カ月前まで閉ざされていた。今も人数を制限して行われる日曜夕方のミサ以外は教会内に入れない。
この男性は「上(党)はコロナを奇貨に管理をすごく厳格にした。そもそも上はこんなもの(宗教)を好まない」と話し、「ここは(党が危険視する)政治村だ」と付け加えた。
【関連記事】中国とバチカン、暫定協定は延長見通し 司教候補、中国側が選定
◎上記事は[東京新聞]からの転載・引用です
――――――
中国とバチカン、暫定協定は延長の見通し 司教候補、中国側が選定 「対話続けながら弾圧抑制か」
2020年9月21日
バチカンと中国政府は2年前の歴史的和解に伴い、中国国内の司教の任命権を巡って暫定合意した。バチカンの首相に相当するパロリン国務長官は14日、10月に期限を迎える暫定合意について「合意の方向性は続ける価値がある」と延長させたい考えを表明した。中国外務省も延長に前向きな姿勢を示しており、合意は延長される見通しだ。
1951年にバチカンと国交断絶した中国では、政府公認の中国天主教愛国会が独自に司教を任命してきた一方、バチカンは司教の任命権はローマ教皇のみにあるとして対立してきた。バチカンと中国の合意内容は非公表だが、中国側が選んだ司教候補から教皇が承認する仕組みとされる。
しかし、カトリック系メディアは、この2年で地下教会の聖職者が愛国会に入るよう迫られたり、拘束されたりする例が相次ぐと伝える。パロリン氏も「合意の成果は芳しくない」と認める。中国のキリスト教事情に詳しい北海商科大の佐藤千歳准教授は「バチカン内部には対中政策をめぐる路線対立もあるが、中国の宗教弾圧を認識した上で、対話を続けることによって弾圧を抑制するという方針なのだろう」と指摘する。
【関連記事】コロナ乗じ「宗教も中国化」 カトリック教徒の村、今年は巡礼受け入れ禁止に
◎上記事は[東京新聞]からの転載・引用です