「死刑囚の告白」殺人 大組織・警視庁の捜査放棄は批判しなかった大新聞のジャーナリズム 2016/5/13

2016-05-13 | メディア/ジャーナリズム/インターネット

「死刑囚の告白」殺人 大組織・警視庁の捜査放棄は批判しなかった大新聞のジャーナリズム
 2016年05月13日 04時10分 提供:デイリー新潮
 前橋スナック銃乱射事件(2003年発生)の首謀者・矢野治死刑囚(67)による、闇から闇に葬られていた2件の殺人の告白。矢野からの手紙を受け取った「週刊新潮」編集部は今年2月から取材を行い、書中で死体遺棄役とされていた結城実氏(仮名)に接触、遺棄の際の様子を明かす証言を引き出した。そして4月19日、警視庁と神奈川県警の捜索によって、被害者の一人である不動産業者の津川静夫さん(失踪時60歳)の遺体が伊勢原市の山中から発見され、矢野の告白が真実であることが証明されるに至ったのだ。

    矢野治死刑囚 

  矢野からの告白の手紙は、編集部と同時に警視庁目白警察署・渋谷警察署にも送付されていたが、いずれも結城氏にコンタクトを取ることはなく、1年以上にわたって事案は放置されていた。捜査機関としての責務を放棄していたことについて目白署長は「当初、結城に連絡がとれなかった」「新潮さんの記事で存在が分かったので連絡を取ったら今度はつながった」旨を語り、また記事でこの件を知った警視庁のトップ、高橋清孝・警視総監は「“市民から、捜査を放棄していたと思われるのが一番まずい。本腰を入れて迅速に捜査を進めてほしい”と檄を飛ばしたそうです」(警視庁幹部)
  こうした舞台裏を全く知らぬわけでもあるまいに、メディアは警察発表をそのまま流し、奮闘ぶりを宣伝している。

 〈矢野治死刑囚(67)が20年前に別の殺人事件に関与したと警視庁に告白したことを受け、警視庁と神奈川県警は19日、神奈川県伊勢原市の山中を捜索し、遺体を発見した〉(4月20日付朝日新聞朝刊)
 〈19日、供述に基づき、同県伊勢原市の山中を捜索し、遺体を発見〉(同読売新聞朝刊)
 〈捜索のきっかけは、(中略)矢野治死刑囚(67)が「不動産業の男性を20年前に殺害した」と告白する文書を警視庁に送ったこと〉(4月19日のテレ朝news)

  いずれの報道を見ても、矢野の告白を受けた警視庁が水面下で執念の捜査を続け、今般の遺体発掘にこぎ着けたと受けとめられる内容である。
■言及すらない
「権力の監視、チェックこそがジャーナリズムの本来の使命であるということを改めて心に刻んでいます」
  これは、2010年、朝日新聞が「大阪地検特捜部の主任検事による押収資料改ざん事件」の記事で新聞協会賞を受賞した際、取材班の代表が授賞式で述べた言葉だ。大新聞はこの「権力の監視役」という言葉がお好きなようで、日頃から声高に吹聴している。例えば毎日新聞の伊藤芳明主筆も負けじと、同社の「開かれた新聞委員会」の座談会の内容を伝える記事(2015年10月15日付朝刊)の中で、こう総括している。
 「新聞の重要な役割の一つは『権力の監視』であるとよく考えます。(中略)安保関連法は成立しましたが、これからも、政府の運用のチェックを続けなければなりません」
  翻って、今回の事件では、彼らはいかように警察権力を監視したのだろう。捜査放棄をどう捉え、批判したのか。その答えは「ゼロ」である。下手をすれば、権力に握り潰される可能性もあった捜査の問題点については追及どころか、何ら言及すらないのである。
■権力の宣伝役
  ちなみに本件に似たケースが2005年にもあった。死刑判決を受け、最高裁に上告中の元暴力団組長が、警察も知らなかった殺人を告白する上申書を茨城県警に送った事件である。この時、県警は愚直に捜査を積み重ね、上申書受理から1年3カ月後、ようやく殺人容疑での立件にこぎ着けた。関係者を逮捕し、刑事部長が会見に臨んだ。しかし、その日、彼らを待ち受けていた報道は、予想に反し、厳しい指弾の集中砲火だった。
 「なぜ当時、事件と見抜けず、司法解剖すら行わなかったのか」「捜査に問題はなかったのか」
  彼らには気の毒ではあったが、しかしこの追及こそがジャーナリズムの本分であり、大新聞が喧伝するところの公権力の監視ではあるまいか。捜査当局にとって、失敗を教訓とし、今後の発展に活かすためには必要な試練と言えよう。
  今回の新聞、テレビ報道にはこの視点や意識が決定的に欠如している。よもや、茨城県警には厳格な態度で臨めても、全国一の大警察組織、警視庁を向こうに回すのは憚られたとは思いたくないが……。権力の監視役どころか、宣伝役、引き立て役に成り下がっていると言うほかあるまい。
 ともあれ、地中に埋められた遺体はもう一体、残されている。結城氏の証言が正確だったことは伊勢原の捜索で証明済みだ。しかもその供述には、“秘密の暴露”も含まれていた。
 「遺体を運ぶ最中、別の場所で慌てて、被害者が履いていた片方の履き物を落としてしまった」
 「遺体は、穴の中に膝を立てて座らせるような形で入れ、埋めた」
  という遺体の状況とぴたり合致したのである。彼の協力のもと、次に捜索が控えるもう一件の事件では、できうるかぎり速やかに被害者の遺体が探し出されることを期待したい。さもなくば、今宵も死刑囚の夢枕には亡き男の怨霊が立つことになるだろう。

 「特集 これで捜査機関? これで権力の監視役?『死刑囚の告白』を放置して自己批判しない『警視庁』と批判しない『大新聞』」より
「週刊新潮」2016年5月5・12日ゴールデンウイーク特大号 掲載

 ◎上記事は[アメーバニュース]からの転載・引用です
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伊勢原で遺体発見「死刑囚の告白」を隠蔽しようとしていた警視庁 「週刊新潮」2016/5/5・12号
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映画『凶悪』―誰も知らない「3つの殺人」首謀者は塀の外にいる~「凶悪殺人犯」後藤良次死刑囚の驚愕告発 
 
  凶悪―ある死刑囚の告発 (新潮文庫) 「新潮45」編集部 

      

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