タトゥーは犯罪なのか? 若き彫り師が法廷で挑んだ戦い
山本兵衛 | フィルムメーカー
2017/9/22(金) 7:00
画像;大阪地方裁判所で取材に応える増田さん
■「タトゥーは医業である」とする大阪府警が突然の摘発
彫り師として5年間、自宅兼スタジオで働き生計を立てていた増田太輝さんを、大阪府警が突然訪れたのは2015年の4月。タトゥーを彫ることは医業であり、医師免許なく営業するのは違法行為だとして、数ヶ月に渡り取り調べを受け、在宅起訴という形で罰金30万円を科せられた。当時、大阪や名古屋の人気スタジオが次々に摘発され、多くの彫り師が逮捕されていた。摘発されたアーティストの中には、逮捕されてから留置所に収容され、罰金30万を支払う選択肢を与えられて、仕方なく応じて釈放された人もいた。「勾留された他の彫師の方と比べればラッキーだったのかもしれません」と語る増田さんは、罰金を払わずに無罪を訴え、裁判の申し立てをする選択肢を選んだ。
■第一審の結果は如何に? 2017年9月27日に判決が下る
増田さんが家宅捜索を受けてから2年後、2017年4月26日に初公判が大阪地方裁判所で開かれた。たくさんのメディアが駆けつけ報道されたが、海外メディアも多いに注目した。アメリカ大手のワシントンポストは『日本のアーティストがタトゥーを見下す国に挑んでいる』という見出しで報道し、2020年のオリンピック開催に向けての問題として大きく取り上げた。他にもフィナンシャル・タイムズ(イギリス)、ABC(オーストラリア)、スター(マレーシア)、フランス24(フランス)、DW(ドイツ)、BBC(イギリス)などで取り上げられた。日本の伝統文化として培われてきたタトゥーが、根強い偏見の下で存続危機に面しているという角度からの報道だった。日本におけるタトゥーの歴史も踏まえた上で、古い権力体制と若い価値観の衝突という捉え方で、<タトゥー=タブー>が常識である国内メディアの報道姿勢とは一線を画している。
審議を重ねた結果、手応えを感じているという亀石弁護士だが、一方で控訴審、最高裁まで争うことになるとも予想している。大阪市が2012年に橋下徹市長(当時)の主導で実施した職員に対する入れ墨調査をめぐる訴訟では、調査と回答を拒んだ職員2人の懲戒処分は違法とした第一審の判決が、最高裁において覆った経緯もあり、今回の第一審で無罪を勝ち取ったとしても安心はできない。
今回の裁判結果は、彫師やタトゥー業界の存続だけでなく、日本の社会、経済、政治的側面においても何らかの形で影響してくることは間違いない。刑法学者の高山教授は、ダンスが規制されたり、タトゥーが規制されたり、今後は様々な文化に飛び火する可能性もあると主張している。オリンピック開催にあたり、訪日外国人観光客数の増加を促す政府や企業の方針が明確に打ち出される昨今、海外ではファッションとして定着しつつあるタトゥーを施した外国人にどう接するのかという問題が見え隠れする。また判決によっては、衛生面や安全性の管理においてタトゥーに特化した法整備も必要になってくるであろう。そんな中、日本におけるタトゥーに対する考え方は変わっていくのか? まだまだタトゥーに対する偏見が根強い日本では、今後も大いに議論される課題になるであろう。
摘発を受けて以来、増田さんはデザイン関連の仕事で生計を立てながら、再び彫り師として活動できる日が来ることを待ち望んでいる。「経験が浅いとはいえ、一生これで生計を立てていくんだと思って、(タトゥーを)入れていました」と語る増田さん。摘発を受けた当時は状況が掴めず、限りなく暗い気持ちで取り調べに通っていたという増田さんだが、2年間に及ぶSAVE TATTOOINGの活動を経て、いまでは希望の光を感じていると同時に、好きなことを仕事にできる幸せをひしひしと感じていると語る。自分が選んだ職業を職業として認めて欲しいと語る増田さんの想いに対して、日本の司法はどのような判断を下すのか。9月27日の判決に注目が集まっている。
【この記事は、Yahoo!ニュース個人の企画支援記事です。オーサーが発案した企画について、編集部が一定の基準に基づく審査の上、取材費などを負担しているものです。この活動は個人の発信者をサポート・応援する目的で行っています。】
<筆者プロフィール>
山本兵衛
フィルムメーカー
ニューヨーク大学にて映画制作を学ぶ。短編作品の数々がロッテルダム映画祭やトライベッカ映画祭などの国際映画祭で上映されている。英BBCや仏ARTEなどのヨーロッパ五カ国の放送局との国際共同制作で長編ドキュメンタリー『サムライと愚か者〜オリンパス事件の全貌』(2015)を監督。以後、フィクションとドキュメンタリーの両ジャンルで活躍を続けている。
◎上記事は[Yahoo!JAPAN ニュース]からの転載・引用です
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⇒ タトゥー彫師 増田太輝被告、無罪確定へ 最高裁 2020.9.17
* タトゥー施術に医師免許「必要」 彫り師増田太輝被告に有罪判決 大阪地裁 2017/9/27
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◇ 女子高生に入れ墨容疑で逮捕 暴力団組員と彫師 埼玉県青少年健全育成条例違反容疑 2017/10/10
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戦争中の軍国主義の時代でも、入れ墨師が逮捕された例は、たぶん無いとおもいます。何で、いまさら、と思います。!
入れ墨にたいする個人的な好き嫌いを言いだしたらきりがありません。
免許制度を作って、承認すればいいんじゃないですか。
まあ、タトゥーの擁護者だとは、思われたくないですけど。。。。ごく素朴に考えて、そう思います。
でも、最近の若者でタトゥーに偏見を持つ人は、いないです。
入れ墨問題には、裁判所の判断もふくめて、いろいろ紆余曲折はあると思いますが、将来的には公認されるのは時間の問題だと思います。
☆宥子さまの、お考えとは、ちがうかもしれませんが、あえて私の感想を述べさせていただきました。
もちろん、ごく普通の女の子です。
ただし、ちいさな蝶のデザインです。
タトゥーが、良いか悪いかは、わかりません。
しかし、日本でも、諸外国でも、長い歴史と習俗として行われて来ました。
これを、完全に禁止することはできないし、禁止するだけの大義はないでしょう。
ただ、ひとつ問題点は、今、日本ではタトゥーの彫り師にたいする免許制度がないことでしょう。
免許制度は、やはり必要だと思います。タトゥーの芸術家が、訴えておられるのも、そういうことじゃないんですか?