リンゼイ・アン・ホーカーさん殺害事件 市橋達也被告 初公判 殺意否認し「裁判で話すことが義務」2011/7/4

2016-05-15 | 死刑/重刑/生命犯

 産経ニュース 2011.7.4 14:39

【英国女性殺害 市橋被告初公判(1)】入廷いきなり土下座 殺意否認し「裁判で話すことが義務」
 (13:15~13:35)
 《若い外国人女性の殺害、逃亡、整形、逮捕後の断食、逃亡手記...。国内メディアだけでなく海外でも大々的に報じられてきた男がついに裁かれる》
  《千葉県市川市のマンションで平成19年、英国人英会話講師のリンゼイ・アン・ホーカーさん=当時(22)=が殺害された事件で殺人と強姦(ごうかん)致 死、死体遺棄の罪に問われた無職、市橋達也被告(32)の裁判員裁判の初公判が4日、千葉地裁(堀田真哉裁判長)で始まった》
 《市橋被告は19年3月、自宅マンションを訪れた捜査員を振り切って逃走。その後、建設会社の住み込みなどで働き、稼いだ金で顔に整形手術を施すなどして逃亡生活を続けていたが、21年11月に大阪のフェリー乗り場で逮捕された》
  《逮捕後はしばらく、お茶以外に手をつけず、断食を敢行。医師から栄養剤の投与を受けたこともあった。事件についても語らなかったが、殺人と強姦致死罪で の起訴直前、「リンゼイさんが『帰りたい』と言って大声を出したので首を絞めた。殺すつもりはなかった」と口を開いた》
 《今年1月には、約2年7カ月に及んだ逃亡生活についてつづった手記を出版。沖縄県久米島近くの離島で野宿生活を送っていたことなどを明かしたが、殺害の経緯や動機などについては触れられておらず、市橋被告が公判で何を語るかが注目される》
 《千葉地裁にはこの日、57席の傍聴券を求めて975人が列を作った。事件発生から4年以上が経過しているが、依然、注目度の高さをうかがわせる》
 《午後1時12分、千葉地裁最大の201号法廷に、堀田裁判長と2人の裁判官が入廷してきた。裁判員はまだ入廷していない》
 《午後1時17分、向かって右側の扉から、「(市橋被告の)悪魔の目を日本に行って確かめたい」と話していたリンゼイさんの父、ウィリアムさんと 母、ジュリアさんが入廷。右側の検察官席の後ろにゆっくりと腰掛けた。2人とも険しい表情だ。2人は証人として出廷するほか、被害者参加人としても公判に 参加する》
 《公判はすべて通訳を交えて行われるため、ウィリアムさんらは耳にイヤホンを装着した》
 《続いて法廷の後方からリンゼイさんの姉妹ら3人が入ってきて最前列の傍聴席に着席した》
  《午後1時19分、向かって左側の扉から、市橋被告が入ってきた。うつむき加減で傍聴席には視線を向けず、中央の証言台の前に来ると同時に、リンゼイさん の両親に向かっていきなり土下座した。ウィリアムさんは、顔を紅潮させて、指を突き立てるしぐさを見せ、市橋被告への怒りをあらわにした》
 《市橋被告は警備の係員に抱きかかえられるようにして立ち上がり、証言台の前の長いすに座った。黒い長袖シャツに、黒っぽいジーンズのようなズボン姿だ》
 《市橋被告が公衆の前に姿を見せるのは、逮捕2日後に送検されたとき以来、約1年8カ月ぶりだ。このときは、ほおがこけ、長い髪が整形で高くした鼻のあたりにまで垂れ下がっていた。目の前の市橋被告は、髪は長めでぼさぼさだが、ややふっくらとした印象だ》
 《裁判所職員が「起立願います」と大きな声を上げると、正面の扉から6人の裁判員が入廷してきた。全員男性で一様に緊張した様子だ。堀田裁判長を含め、3人の裁判官の両サイドに3人ずつ並んで座った》
 《堀田裁判長が通訳の女性に対し、法廷に出廷する証人に求めるものと同様の宣誓を求め、通訳は日本語で宣誓した後、リンゼイさんの両親らに向け、英語でも宣誓した》
 裁判長「それでは開廷します。被告人は証言台の前に来てください」
 被告「はい」
 《市橋被告が小さな声を上げ、中央の証言台の前に立つ。人定質問が始まる》
 被告「市橋達也です」
 《市橋被告はか細い声で答える》
 裁判長「生年月日は?」
 被告「昭和54年1月5日です」
 《堀田裁判長は本籍地や住所を確認した上で続ける》
 裁判長「職業は?」
 被告「ありません」
 《続いて堀田裁判長に促され、男性検察官が立ち上がり、起訴状の読み上げを始めた。市橋被告は手を前にぶらっとさせ、立ったまま聞き入っている》
 《起訴状によると、市橋被告は19年3月25日ごろ、自宅マンションでリンゼイさんの顔を何度も殴り、両手などをテープで縛って乱暴した上、首を絞めて殺害。同26日ごろ、リンゼイさんの遺体をベランダの浴槽に入れて土で埋めるなどして遺棄したとされる》
 《起訴状の読み上げが終わり、堀田裁判長は市橋被告に黙秘権などについて説明した。そして注目の罪状認否に移る》
 裁判長「2通の起訴状のうち、まず1通目の強姦致死と殺人についての公訴事実について、違っているところはありますか」
 《市橋被告は、しばらく沈黙した後、消え入るような声で語り始めた》
 被告「私はリンゼイさんに対して殺意はありませんでした。しかしリンゼイさんの死に対し、私にはその責任があります。私はその責任は取るつもりです」
 「リンゼイさんを姦淫したのは私です。リンゼイさんに怖い思いをさせて死なせてしまったのは私です。本当に申し訳ありませんでした」
 《最後に軽く頭を下げた》
 《通訳の説明に耳を傾けていた父のウィリアムさんは、市橋被告をにらみ続けている》
 《通訳が終わると、堀田裁判長が市橋被告に尋ねる》
 裁判長「少し確認しますが殺意はなかったということですね」
  被告「はい」
  裁判長「あなたの行為によって死亡したことは認めますか」
  被告「はい」
  裁判長「それから姦淫したことは認めますね」
  被告「はい」
  裁判長「起訴状には、リンゼイさんの顔面をげんこつで多数回殴ったり、緊縛したり、頚部(けいぶ)を圧迫したりとありますが、これらについては違っているところはありますか」
 《市橋被告は10秒ほど沈黙した後に語り始めた》
 被告「事件の日に何があったか知っているのはリンゼイさんと私しかいません。でもリンゼイさんは私のせいで何も話せません。事件の日に何があったかは、これからの裁判で話していくことが私の義務だと思います。今の質問には、これからの裁判で詳しくお話ししていきます」
 《堀田裁判長は、続いて2通目の死体遺棄に関する起訴状についても尋ねる》
  堀田裁判長「違っているところはありますか」
  《市橋被告はまたしばらく沈黙した後に話し始める》
  被告「リンゼイさんの遺体を遺棄したのは私です」
  《弱々しい声ながら、自らの主張を話した市橋被告。リンゼイさんの両親は引き続き、市橋被告に厳しい視線を向けていた》

【英国女性殺害 市橋被告初公判(2)】リンゼイさんが被告宅に行ったのは...「レッスン料忘れた」口実に連れ込み
 (13:35~14:05)
 《英国人英会話講師のリンゼイ・アン・ホーカーさん=当時(22)=に対する殺人と強姦(ごうかん)致死、死体遺棄の罪に問われた無職、市橋達也被告(32)の裁判員裁判の初公判は市橋被告の罪状認否が終わった》
 《殺意を否認する市橋被告の主張に、検察官の後ろに座る父親のウィリアムさんは険しい表情のまま首を振っていた。堀田真哉裁判長に促されて男性検察官の冒頭陳述が始まった。裁判員や遺族らには概要が書かれた紙が配られている》
 検察官「被告は26歳で大学を卒業して、事件当時は28歳で無職でした」
 《検察官はまず市橋被告とリンゼイさんの略歴について簡単に説明する。リンゼイさんは1984(昭和59)年12月にイギリスで次女として生まれ、大学では生物学を学んだ。日本で英会話教師になるために平成18年10月に来日した》
  検察官「続いて犯行のいきさつについてです。19年3日20日から21日に日付が変わったころの夜、東京メトロ東西線の行徳駅から西船橋駅に向かう電車の 中で、市橋被告はリンゼイさんのことをじっと見つめていました。リンゼイさんが自宅最寄りの西船橋駅で降りたら市橋被告も降り、自転車で帰宅するリンゼイ さんを走って追いかけました」
 「市橋被告は『水を飲ませてほしい』という口実で家に上がり込みました。家には同居人の ○○さん(法廷では実名)がいました。リンゼイさんと○○さんは市橋被告に早く帰ってほしいと思っていましたが、市橋被告は居座りました。市橋被告は『英語を教えてほしい』といい、リンゼイさんの連絡先を聞き、21日午前1時ごろにリンゼイさんの家を出ました」
 《裁判員たちは検察側から配られた手元の用紙を見つめながら検察官の言葉に耳を傾ける》
 《市橋被告は22日にメールで『英語を教えてほしい』と伝え、2人は24日までのメールのやりとりで1時間3500円の授業料を条件に、25日午前9時から行徳駅付近で英会話レッスンを行うことを約束した》
 検察官「市橋被告は3月25日午前9時前に駅前でリンゼイさんと会い、駅前の喫茶店でレッスンを受けました。市橋被告は自宅に連れ込んで強姦するために『レッスン料を家に忘れた』と言ってリンゼイさんを自宅に誘い出しました」
 《リンゼイさんが市橋被告の家に行った理由が初めて明らかになった。リンゼイさんは同日午前10時50分から英会話学校でレッスンの予定があったため、市橋被告のマンション内のエレベーターではしきりに腕時計を見るなど時間を気にしていたという》
  検察官「市橋被告は部屋に入り、リンゼイさんの顔を殴りつけ、結束バンドと粘着テープで手首を縛り、強姦しました。その後、首を圧迫して窒息死させました。26日夕方に外出して園芸用の砂を購入。(取り外しが可能な)浴槽にリンゼイさんを入れてベランダに運び、土を入れて遺棄しました」
 《リンゼイさんの母親、ジュリアさんは鋭い目線で市橋被告の横顔をにらむ。市橋被告は微動だにしない》
 検察官「26日午後9時半ごろ、警察官が市橋被告の家を訪ねてきました。市橋被告はすきを見て逃走しました。そして市橋被告は2年半にわたり逃走していました」
 《市橋被告は21年11月10日、大阪のフェリー乗り場で身柄を確保されるまで顔を整形したり、土木現場で働いたりするなどして、逃亡生活を送っていた》
  検察官「最大の争点は殺意の有無です。弁護側はリンゼイさんが声を出すのを止めるために市橋被告が首に手を回して死亡させたとしていますが、検察官は次の 点から殺意があったと主張します。1、市橋被告が3分程度、リンゼイさんの首を相当程度の力で圧迫していました。2、リンゼイさんを強姦した後、犯行発覚 を防ぐという殺害の動機がありました。相当程度の力で3分間、首を圧迫したことは遺体の解剖を行った医師の証言で立証します。医師は明日、証言します。重要なので良く聴いていてください」
 《検察官は裁判員裁判を意識して、裁判員たちに訴えかける。裁判員たちは顔を上げて応じた》
 検察官「強姦致死が成立するかも争点になっています。弁護側は強姦から死亡するまで時間が経過しているため、強姦致死は成立しないとしています。しかし市橋被告がいつでもリンゼイさんを強姦できるように縛り続けていたことなどから、強姦致死が成立すると考えています」
 《検察官は情状面として、結果の重大性、犯行の粗暴・残酷さ、身勝手で自己中心的な動機、遺族の処罰感情が峻烈なことを述べて冒頭陳述を終えた。続いて男性弁護人が冒頭陳述のために立ち上がり、証言台まで移動した》
 弁護人「市橋被告は強姦、傷害致死、死体遺棄の事実を認め、罪をつぐなう気持ちです」
 《弁護人は検察側と同様に市橋被告とリンゼイさんがレッスンを行うまでの経緯を簡単に説明した》
  弁護人「市橋被告は(レッスンに間に合わせるため)朝早く自宅を出ましたが、慌てていて家にレッスン料を忘れました。レッスンを終えて財布にレッスン料が 入っていないことに気づき、リンゼイさんに『お金を取りに戻りたい』と頼み、タクシーに乗って家に向かいました。最初は自宅近くにタクシーを止めて、運転 手に『5、6分待ってください』と頼みましたが、断られました。そして2人で家に向かいました」
 《強姦目的で家に連れ込むため、『レッスン料を忘れた』と言ったとする検察側の冒頭陳述と真っ向から対立した主張となっている》
 弁護人「部屋に入り、玄関のところでリンゼイさんに抱きつきましたが拒絶され、もみ合いになって押し倒し、強姦しました。このとき顔は殴っていません。抵抗できないようにするため両手首を縛りました」
 弁護人「その後、リンゼイさんを4畳半に連れて行き、取り外した浴槽を持っていって、その中に入れました。リンゼイさんは裸だったので、灰色のパーカーを着せて、さらに上着をかけました」
 《弁護側が強姦の状況、その後の2人のやりとりについて詳細に述べていく。母親のジュリアさんは両目を手で覆った》

【英国女性殺害 市橋被告初公判(3)】殴られ、たじろぐ被告 覆い被さると...弁護側が死亡の経緯詳述
 (14:05~14:15)
 《千葉県市川市のマンションで平成19年、英国人英会話講師のリンゼイ・アン・ホーカーさん=当時(22)=が殺害された事件で、殺人と強姦(ごうかん)致死、死体遺棄の罪に問われた無職、市橋達也被告(32)の裁判員裁判は弁護側の冒頭陳述が続く》
 《市橋被告は自宅マンションでリンゼイさんを強姦後、4畳半の室内に連れて行った。男性弁護士が死亡した経緯について読み上げていく。市橋被告は殺人罪に問われているが、あくまでも「死なせてしまった」とする主張だ》
 弁護人「リンゼイさんは(19年3月)25日深夜近くになって『持病がある。薬を飲まないと』と訴えました。被告はパソコンで病気と薬の名前を検索しました」
  《さらに弁護人は、市橋被告に当時、交際していた女性がいたことを明らかにした。市橋被告は交際女性が自宅に訪れることを恐れていたという》
 「被告は女性に『1週間会えない』とメールしました」
 《その後、弁護人はリンゼイさんが死亡した経緯について、市橋被告の室内での行動を生々しく再現する》
 弁護人「(交際女性に)メールを送ったのが(3月26日)午後0時半ごろ。その後、被告は眠ってしまいました。26日午前2時から3時ごろに目を覚まし、(リンゼイさんを拘束した)バンドが締まっているか、確認しようと近付きました」
 《市橋被告が眠っている間、リンゼイさんは手足を結束バンドで縛られ、4畳半の室内に置いた浴槽の中に放置されていた》
 「バンドが足に着いているのを確認しましたが、浴槽をみると、手が外れていました。その時、突然、リンゼイさんが被告の顔面を殴りました」
 《市橋被告はうつむいたまま、冒頭陳述に聞き入っている。感情の変化はうかがえない》
  「被告はたじろぎました。リンゼイさんは浴槽を倒し、逃げだそうとしたのです」
 《はうようにして進んだリンゼイさん。「リンゼイさんの大声が、隣人に聞こえるかもしれない」。これ以上の声を出されることを恐れた市橋被告はリンゼイさんに近付いていった》
 弁護人「被告は後ろから近付き、左手で口をふさぎました」
 《リンゼイさんはそれでも大声を出し、前に進もうとしたという。男性弁護人は身ぶりを交えながら説明する。裁判員らは真剣な表情で聞き入っている》
 「今度は左腕を顔に巻くようにしました。それでもリンゼイさんが声を出し続けたため、上半身に覆いかぶさりました」
 《体重をかけていた市橋被告だが、異変に気付く》
 「リンゼイさんの目の焦点が合っていませんでした」
 《市橋被告は心臓マッサージと人工呼吸をしたというがリンゼイさんの意識が戻ることはなかった》
 弁護人「それが、26日午前2時から3時ごろの間です。被告はショックを受けました」
 「何がなんだか分からなくなった被告は、疲れて寝てしまいました」
 《男性弁護人は市橋被告がベランダにリンゼイさんの遺体を遺棄したことは認め、裁判員に向け「審理に当たっての注意点」を呼びかけた》
 弁護人「被告が逃げたことから供述が得られない状態で捜査が進んだわけです。(事件の構図は)捜査員が見立てでまとめたと考えます」
 《男性弁護人は捜査がこのように進んだ経緯について「やむを得ない」とした上で、客観的証拠が無視されていると主張。捜査の問題点を指摘する》
 《5日に証人として出廷する司法解剖医の主張にも「鑑定で分かった点、分からなかった点」に注意してほしいと呼びかけた》
 弁護人「被告は2年7カ月間逃亡しました。(裁判員らも)ニュースを見て、頭に入っていると思います。ただ、事実と証拠に基づいて審理してほしい。公判では殺人と強姦致死に反する証拠が出てくる。良く考えてほしい」
 《弁護側の冒頭陳述が終了した。その後、堀田真哉裁判長が公判前整理手続きの結果について説明。強姦致死と殺人について争いがあることや、今後の日程について確認した》
  《午後2時15分に休廷。市橋被告はうつむきがちで、表情は読み取れない》

【英国女性殺害 市橋被告初公判(4)】「美しくても鼻にかけることなく、優しい子」 親友の証言に両親が涙
 (14:43~15:10)
 《英国人英会話講師のリンゼイ・アン・ホー カーさん=当時(22)=に対する殺人と強姦(ごうかん)致死、死体遺棄の罪に問われた無職、市橋達也被告(32)の裁判員裁判の初公判は約30分間の休 廷の後、予定の時刻より3分ほど遅れて審理が再開した。市橋被告は入廷すると、向かって右側の検察側の席の後ろに座るリンゼイさんの両親に深々と頭を下げ た。しかし、父親のウィリアムさんは一瞬のけぞるようなしぐさをみせたが、厳しい視線を投げかけた。母親のジュリアさんは市橋被告の方を一切見ようとしな かった》
 《検察側の証拠調べが始まる。女性検察官がリンゼイさんと一緒に来日した英国籍の親友の△△さん(法廷では実名)の調書を読み上げていく。内容は来日の経緯とリンゼイさんの人柄などだ》
 検察官「来日した経緯についてお話しします。私(△△さん)はリンゼイさんのことをリンズーと呼ぶほど親しかった。リンズーは日本の英会話学校で英会話の教師になるために来日しました」
 「日本の英会話学校を選んだ理由は、その学校の待遇がよかったことと、東京の景色がエキサイティングだったこと、日本は治安がよく、安全だと聞いていたからです」
 《英国の大学で知り合ったという2人。日本で英会話教師になることを決めた2人は平成18 年10月に一緒に来日する。△△さんによると、リンゼイさんは知的好奇心が強く、日本でも多くの人と知り合いたい、いろんな知識を吸収したいと考えてい た。日本のことが気に入り、1年間の予定だった滞在の延長も希望していたという》
 検察官「リンズーは英国に戻ったら、小学校の教師になるのが夢だった。日本での経験を生かしたいと話していました」
 《日本での勤務地は英会話学校が決めるため、2人の勤務地は別々だったという。しかし、メールや電話では頻繁にやりとりを繰り返していた。そのやりとりの中で、リンゼイさんは△△さんに知らない男に追いかけられたと告白していた》
 《19年3月20日夜、2人は千葉県市川市の行徳駅前のバーで一緒に飲食した後、リンゼイさんが『終電がなくなるから帰る』と言って先に帰宅。その後、数時間後の21日深夜に△△さんに電話をかけ、異変を伝えてきたという》
  検察官「21日午前1時12分に7分17秒の通話記録があります。そのとき、リンズーは、ねぇ、聞いて。すごく変なことがあったの。知らない男が私のこと をずっと見つめてきて、話しかけてきたの。男は『洗濯機を直したのは僕です。僕のことを覚えていませんか』って言っていたわ、と話していました」
 《この会話の男は市橋被告とみられる。男はリンゼイさんに英会話の講師になってほしいと話し、(東京メトロ)東西線西船橋駅からリンゼイさんの家までついてきたという》
   検察官「リンズーは男を家に上げたと話していました。私(△△さん)が『なんでそんなことをするの』と話したら、リンズーは『息を切らして、英語の講師に なってと言っていて、かわいそうだったの』って話していました。優しい子だからかわいそうだったのでしょう。日本が安全な場所と信じ切り、英国にいたとき ほどの警戒心がなくなっていたというのも事実です」
 《リンゼイさんと市橋被告の最初の接点だと思われる状況が、親友の調書を通じて明らかになってくると、裁判員らの表情は次第に険しさを増した。市橋被告は微動だにしないまま、前を向いてうつむき、検察官が読み上げる調書に耳をかたむけている》
 《2人は頻繁にメールや電話のやりとりを続けていたが、3月24日の夜を境に一切連絡が取れなくなったという。△△さんは警察に相談したが、そこでリンゼイさんが殺害されたことを聞かされたという》
 《続いて、リンゼイさんの人柄に話が移る》
 検察官「リンズーはとても美しかったが、それを鼻にかけることはせず、自分に誇りをもっていた。とても優しい子で、自分(△△さん)が入院したときはクリスマスでも駆けつけてくれた。とても優しい子だった」
 《人柄についての話が続くと、検察側の後ろに座っている両親は、大粒の涙を流し、懸命に目頭をハンカチでぬぐっていた》
 《その後、市橋被告とリンゼイさんのメールのやりとりが報告された。市橋被告が声をかけた翌日の(3月)22日から、犯行前日の24日夜まで、計7回のやりとりがあったという。メールはいずれも英文で送られていたが、法廷では日本語に訳されて読み上げられた》
 検察官「3月22日午後5時ごろ、市橋被告からリンゼイさんに『英語を教えてください』という件名で送られていました。内容は『こんにちは。火曜日にあなたと話した者です。家に招き入れてくれてありがとう。今週末、話す時間はありますか』などというものでした」
 《このメールに、リンゼイさんは週末の土曜か日曜に応じると答えた。また、1回のレッスン料は3500円と伝えたという。リンゼイさんは市橋被告と25日午前9時に行徳駅の喫茶店で会う約束をした》
 《その後、約束の喫茶店の防犯カメラの様子が明らかにされた。2人が喫茶店で英語のレッスンのようなことをしているのを、店員が目撃していたという》
  検察官「その後、2人は行徳駅からタクシーに乗り、市橋被告の自宅マンションに向かいました。タクシー運転手の供述によると、2人は人1人分あけ、会話がなかったそうです」
 《その直後の25日午前9時54分ごろ、自宅マンションの防犯カメラには、2人が市橋被告の部屋のある4階で一緒にエレベーターから降りる様子が、映し出されていた》

【英国女性殺害 市橋被告初公判(5)】「浴槽の土の中に白い肌色の皮膚...」 遺体発見状況に体震わせる遺族
 (15:10~15:35)
 《英国人英会話講師のリンゼイ・アン・ホー カーさん=当時(22)=に対する殺人などの罪に問われた市橋達也被告(32)の裁判員裁判は検察側の証拠調べが続く。法廷の大型モニターには、殺害現場 である市橋被告のマンションの防犯カメラの映像などが映し出され、女性検察官から殺害当日の状況が説明される》
 《モニターには、リンゼイさんが殺害された平成19年3月26日午後6時ごろ、マンションの駐車場で、市橋被告がショッピングカートから何かを運ぶ様子が映し出されている》
 検察官「市橋被告は5回ほど部屋と駐車場を往復した後、駐車場にカートを残して部屋から出てきませんでした」
 《大型モニターの映像が消える》
 検察官「これから、被告とリンゼイさんが2人で写っている姿を見ていただきます」
  《大型モニターに、雨の中、マンションの近くを市橋被告とリンゼイさんが歩いている様子が映し出される。ニット帽を被り、傘を差さずに歩いている市橋被告の後ろに、白い傘を差したリンゼイさんがついていく。2人の身長を比べると、リンゼイさんがやや大きく見える》
 検察官「エントランスの様子です」
 《画面が切り替わり、マンションの玄関の映像になる。後ろを振り向くことなく、市橋被告は足早に玄関を通過する。リンゼイさんは傘をたたむために、やや遅れて市橋被告とエレベーターに乗り込んだ》
 検察官「エレベーターの中の様子です」
 《エレベーターの内部の様子が映し出される。先に乗り込んだ市橋被告が、リンゼイさんを待って、4階のボタンを押す》
 検察官「リンゼイさんの様子にご注目ください」
 《リンゼイさんは、そわそわした様子で、しきりに左手首に目をやっている。時間を気にしているようだ。リンゼイさんの母、ジュリアさんは殺害される直前の娘の姿に、目頭を覆っている》
 《男性検察官に交代し、画面が切り替わる》
 検察官「リンゼイさんの勤務状況について説明します」
 《検察官が、リンゼイさんの同僚男性の供述調書を読み上げる》
 検察官「事件当日、英会話学校を無断欠勤したのを聞いて何度も電話を掛けたが、留守番電話になってしまって1度も繋がらなかった」
 《大型モニターには、同僚男性から提出された、リンゼイさんの勤務状況表が映し出される》
 検察官「リンゼイさんは25、26日に無断欠勤をしている。ほかに無断欠勤は1つもなく、真面目に働いていた」
 《次に検察官は、市橋被告のマンションから、リンゼイさんの勤務先までの時間を述べた》
 検察官「電車で30分、自動車で25分ほどです」
 《大型モニターに、殺害当日、市橋被告が近所のホームセンターで購入したものの内容が映し出される》
 検察官「購入したものは、赤玉土14リットルが4袋、園芸土25リットルが2袋、シャベルが1個、発酵促進脱臭剤が2個、脱臭剤が2個、苗木が1本」
 《検察官は、リンゼイさんの遺体を発見した千葉県警船橋署の刑事の供述調書の内容を大型モニターで示す》
 検察官「これから、被告が職務質問された状況、被告が逃走した状況、リンゼイさんの遺体発見当時の状況について説明します」
 《大型モニターに、『被告が職務質問された状況』と、大きく映し出され、検察官が刑事の供述調書を読み上げる》
 検察官「(3月26日)午後8時15分ごろ、リンゼイさん失踪の相談を受けた生活安全課の署員と刑事部の署員数人で、被告のマンションに到着。失踪の原因に、リンゼイさんが最後に目撃されたとき、一緒にいた被告が絡んでいる可能性があるとのことだった」
  《検察官は、大型モニターに『逃走した時の状況』と示しながら、市橋被告が部屋の扉から顔を出した時の状況について読み進めた》
  検察官「セーターを着て、クリーム色のリュックサックを背負った若い男が部屋から出てきて、市橋被告だな、と思った。職務質問をするのに、マンションの共 用の廊下上では都合が悪く、被告の自室の状況も確認したかったので、『中に入って話を聞こうか』と言った。被告は、いきなりリュックサックを肩から下ろす と、署員を押しのけて、すごい勢いで走り出し、非常階段を降りていった。私は『逃げたぞ』と叫んで追いかけたが見失った」
 《検察官は、大型モニターに『遺体発見の状況』と示しながら、刑事が市橋被告の部屋からリンゼイさんの遺体を発見した状況について読み進めた》
  検察官「リンゼイさんの安否確認をしなくてはならないと思って、被告の部屋に戻った。玄関を開けると、大きな女性用の黒い靴が置いてあり、リンゼイさんは ここにいると直感した。そばのゴミ箱に、銀色の接着テープと、結束バンド、明るい茶色の髪の毛が絡まっているのを発見し、リンゼイさんに危害が加えられて いるのを確信した」
 《リンゼイさんの父、ウィリアムさんが市橋被告をにらみつける。市橋被告は微動だにしない》
 検察官 「リンゼイさんを保護しようと各部屋を確認したが、リンゼイさんはいなかった。浴室の浴槽が外れているのに気付き、確認していないベランダを回ったとこ ろ、浴槽が置いてあった。一緒にいた署員が浴槽に詰まっていた土を軽くなでると、白い肌色の皮膚がみえた。触っても反応がなく、土が盛り上がったり下がっ たりと呼吸をしている様子もなかったので、土に埋まっているのは人間の遺体だと分かった」 
 《生々しく明らかにされるリンゼイさんの遺体発見当時の様子に、母のジュリアさんが、体を震わせ、顔を覆って泣き出した》

【英国女性殺害 市橋被告初公判(6)】モニターに映された犯行時の避妊具 遺族は顔を覆った
 (15:55~16:20)
 《英国人英会話講師のリンゼイ・アン・ホー カーさん=当時(22)=に対する殺人と強姦(ごうかん)致死、死体遺棄の罪に問われた無職、市橋達也被告(32)の裁判員裁判の初公判は、いったん休廷 に入ったが、約20分後に再開した。入廷した市橋被告は検察側の後ろに座るリンゼイさんの両親に向かって深々と頭を下げた後、被告人席に着席した》
 《引き続き検察側の証拠調べが始まり、女性検察官は事件当時、市橋被告が交際していた女性の供述調書を読み上げ始めた。供述は事件があった平成19年3月25日前後に関するものだ》
  検察官「24日午後11時ごろ、達也に電話をしたら家にいました。『泊まりに行きたい』と伝えたら、『今日はスポーツジムに行って疲れたから1人で寝たい』と言われました。ただ『ご飯だけならいい』といわれたので、(市橋被告の住む)マンションまで迎えに行き、近くで焼き肉を食べました」
 《市橋被告は焼き肉が好物だったが、この日はあまり食が進まない様子だったという。食事の後は近くの海岸までドライブをした後、市橋被告のマンション前で別れたという。そして供述は事件当日の3月25日に移る》
 検察官「達也の家に電話をしましたが出ませんでした。達也から26日午前0時38分にメールが届きました」
 《ここで法廷内の大型モニターに交際女性の携帯電話を撮影した写真が映し出される。携帯の画面には市橋被告が女性に送ったメールの文章が出ており、男性検察官が読み上げる》
 検察官「××へ(法廷では実名) 達也です。電話くれた? これから1週間ぐらい部屋にこもって勉強します。××には悪いけど、1週間電話を取らない。でも信じてください。メールは構わないです。ではでは」
  《市橋被告は以前から部屋にこもって勉強をすることがあったため、女性は市橋被告のメールを不審に思わなかったという。市橋被告は出版した手記の中で、警 察官から逃走した直後に公衆電話を見つけ、車を所有していたこの女性と一緒に逃げたくて電話したが、話し中だったため断念したことを明らかにしている》
  《続いて検察官は犯行現場となった市橋被告の住むマンションの状況について説明を始めた。大型モニターにはマンション周辺の住宅地図が映し出され、検察官 は近くの学校や駅などとマンションの位置関係を簡単に説明。モニターにはさらにマンションの見取り図、エントランス、市橋被告が逃走に使ったとされている 非常階段の写真などが次々と映し出された。右端に座る男性裁判員はあごに手を当てながら、手元にあるモニターを真剣な表情で見つめる》
 《検察官は続いて、事件発覚後の27、28の両日に市橋被告方で行われた現場検証について説明する。モニターには玄関の内側部分の写真が映し出され、バスケットボール、ゴミ箱、ゴミ袋などが置かれているのが分かる》
 検察官「ゴミ箱の中には粘着テープ13片、結束バンド5本、コンドーム1個、コンドームの袋2個が入っていました」
 《これらのものを広げておき、撮影した写真がモニターに映し出される》
 検察官「13片のテープは無造作に丸められていました。結束バンド5本のうち、切断された2本は切り口が一致しました。コンドーム1個は内側についていた精子のDNA型が市橋被告のものと一致しました。外側にはリンゼイさんの細胞がついていました」
 《写真に映し出されたコンドームが強姦に使われていたことが明らかになった。母親のジュリアさんは顔をゆがめてうつむき、両目に手を当てた。手はしばらく震えていた。検察側はさらに現場にあった別のゴミ袋について、内容物を読み上げていく》
 検察官「パーカー、リンゼイさんの頭髪、リンゼイさんのコート、リンゼイさんのカーディガン、粘着テープ」
  《さらにこれらを広げ、撮影した写真がモニターに映される。写真にはリンゼイさんの焦げ茶色の髪が大量に映し出される。写真を通じて、犯行が凄惨(せいさ ん)だったことが分かり、ジュリアさんは目に涙をためながら、うつむいた。隣に座る父親のウィリアムさんはジュリアさんの肩に手を置いて気遣う様子で、2 人は小声で言葉を交わしていた》
《市橋被告はうつむき、表情は伺えない。検察側の証拠調べがさらに続く》

【英国女性殺害 市橋被告初公判(7)】廊下から台所に尿の痕跡 壁には血液も付着 検察側立証続く
 (16:20~16:50)
 《英国人英会話講師のリンゼイ・アン・ホーカーさん=当時(22)=に対する殺人と強姦致死、死体遺棄の罪に問われた無職、市橋達也被告(32)の裁判員裁判は検察側の証拠調べが続いている》
 《事件後に市橋被告の自宅マンションの室内を撮影した写真が廷内の大型モニターに映し出されており、傍聴人らが見入っている》 《映し出された写真は玄関にあった透明のゴミ袋の中身だ。検察官は避妊具の袋や使用済みの避妊具があったことを挙げた》
 《生々しい説明にリンゼイさんの両親は表情を曇らせる》
 検察官「玄関たたきには黒い運動靴や黒いハイヒールがありました。運動靴のつま先には被害者のDNA型と一致する血液が付着しています」
 《脱衣場の様子がモニターに映し出される。入り口の柱には粘着テープが張られ、テープにリンゼイさんの焦げ茶色の毛髪や被告の左手の指紋が検出されたことが示された》
 「次は風呂場の様子を写した写真です。浴槽はありません。シャワーのフックには黒いセーターが掛けられ、毛髪10本が付着していました」
 《検察側は、粘着テープの指紋から、市橋被告が実際に使用したことのほか、遺留されたリンゼイさんの毛髪やDNA型、拘束に使用された結束バンドの位置から、室内でどのようにして被害に遭ったかを立証する方針のようだ》
 《モニターに玄関側から撮影した廊下の写真が映し出された。廊下から台所の敷居にかけて尿の痕跡(尿斑)が見つかったことが示された》
 《一般に、首を絞められるなどした場合、被害者は失禁する。このため、捜査の現場では、尿斑の位置が犯罪場所の特定に用いられることがある》
 検察官「廊下の壁には、血液も付着しています。写真では赤い矢印で示しています」
 「台所には被害者の水色手提げバッグがあり、携帯電話が入っていました。そのほか、着衣などもありました」
 《スカートやブラウス、ベルトや下着-。モニターに映し出されたリンゼイさんの着衣を見た母親のジュリアさんは手で顔を覆った》
 検察官「財布には、外国人登録証や西船橋-小岩間の定期券、1327円が小銭で入っていました」
 「台所の床にあったレジ袋には、粘着テープや結束バンドがありました。テープには一部に(リンゼイさんの)焦げ茶色の毛髪が付着していました」
 《発見された結束バンド17本のうち、切断された10本は切り口が一致したという。リンゼイさんのDNA型と一致する細胞片も検出されており、検察側は実際に犯行で使用されたことを主張する》
 《その後、男性検察官は居間、6畳や4畳半の和室の状況を説明。リンゼイさんの両親は目を合わせ、小声で何かを話し合った》
 《4畳半の写真には英語の参考書などが映し出された。室内の床からは45センチ四方の尿斑が見つかったことも明らかにされた》
 検察官「6畳の和室にはふすまが立てかけてあります。このふすまは2カ所破れていました」
 《ふすまの穴はリンゼイさんの抵抗によるものなのだろうか。男性検察官は市橋被告をちらりと見やった。続いて5畳半の洋室内の様子について説明が始まった》
 「レジ袋が3つありました。袋の中には脱臭炭やシャベル、ザクロの苗木がありました」
  《検察側の証拠調べは、リンゼイさんが遺体で見つかったベランダに移った。リンゼイさんはベランダの浴槽内に土をかけられた状態で見つかった。モニターに写真が映し出される》
 《警察によって青いビニールシートで目隠しされ、浴槽は側板でフタをされ、上に植木鉢が置かれている》
 検察官「続いて、遺体の状況について説明します。モニターを消してください」
  《遺族に配慮し、傍聴席から見える大型モニターが消される。父親のウィリアムさんは顔面を紅潮させ、ハンカチで目をぬぐった》
 検察官「遺体のそばには鉄亜鈴があります。土を取りのぞくと、左側面を下にして、体を丸めていました。足には結束バンドが有ります」
 《再びモニターが映し出される。土を取り除いた後の写真だ》
 「毛髪が1束あります。マットレスには表と裏に60センチ、45センチの尿斑がありました」
 《検察官の説明は、室内の台所や廊下、居間や6畳間の床や畳にあった傷跡に移る。リンゼイさんの遺体や取り外した浴槽を動かした際にできたものだろうか》
 「もう一度モニターを消してください」
 《遺体の付着物について説明がなされた》
 「右顔面、左右の前腕、左右の足には天然ゴム系のものが付着していました。(拘束に使用された)粘着テープも天然ゴム系と認められます」
 《男性検察官は、捜査報告書から被害者の着衣が切られた状況を立証する。リンゼイさんのカーディガンは腕の部分を縦に切られていた》

【英国女性殺害 市橋被告初公判(8)完】逃走後は神戸や大阪の建設会社に偽名で勤務...整形手術で鼻筋にシリコン
 (16:50~17:05)
 《英国人英会話講師のリンゼイ・アン・ホーカーさん=当時(22)=に対する殺人と強姦(ごうかん)致死、死体遺棄の罪に問われた無職、市橋達也被告(32)の裁判員裁判の初公判は、殺害時にリンゼイさんが着ていた着衣の状況について検察側による説明が続く》
 《男性検察官はリンゼイさんのスカートに尿がついていた状況について説明。その様子に、父親のウィリアムさんは向かって左側の大型モニターをじっと見すえていた。しかし、母親のジュリアさんは涙をこらえることができず、顔を両手で覆っている》
 《続いて男性検察官は、市橋被告がリンゼイさんを拘束する際に使われたとされる結束バンドについて説明する》
 検察官「犯行に使用したものと同じ結束バンドです。2種類あり、大きい方は長さ42センチ、幅5ミリで、小さい方は長さ30センチ、幅4・8ミリです」
 《説明を終えた男性検察官は、裁判官と裁判員、補充裁判員に直接、結束バンドを見せてまわる。堀田真哉裁判長にうながされて弁護側に提示した後、堀田裁判長が再び口を開いた》
 裁判長「被告人はよろしいですか」
 《市橋被告は小さくうなずき、男性検察官が結束バンドを目の前に運んだ。それを確認すると市橋被告は小さく数回うなずいた。その後、男性検察官は市橋被告の部屋の状況の説明に入った》
 検察官「部屋には固定されていない浴槽がありました。また、6畳と4.5畳の和室があり、両方の部屋の間にはふすまがありましたが、市橋被告はふすまを使わず1部屋のようにして使っていました」
 「事件前まで頻繁に部屋に出入りしていた交際相手の女性によると、ふすまが破れたのは見ていないということです。また、結束バンドを使うところも見ていないということです」
 《リンゼイさんの遺体が埋められた浴槽がいつベランダに運ばれたのかについて、近所の住民の証言も報告された》
 検察官「(平成19年3月)25日昼ごろに市橋被告の部屋のベランダには浴槽がなかったことが、近所の住民によって確認されています。一方、この住民は26日午後9時ごろに、警察官に被告人のことを尋ねられたあと、ベランダには浴室があったことを確認しています」
 《部屋の状況が説明される間、市橋被告はじっと前を向いていた。母のジュリアさんは依然、ハンカチで涙を拭いている。一方、男性検察官は市橋被告が現場の自宅マンションから逃亡し、逮捕されるまでの足取りについて説明を始めた》
 検察官「被告の犯行後の行動について説明します。被告は平成20年2月29日から6月26日までの間、『イノウエコウスケ』と名乗り神戸市の建設 会社で働いていましたが、その後、寮から姿を消しました。20年8月20日から10月10日までは大阪府茨木市内の建設会社で『イノウエコウスケ』の偽名 を名乗り働いていました。その後、翌11日の午前中に荷物を残したまま寮から姿を消しました」
 《偽名を使い、各地を転々としていた市橋被告。その際、各地で顔に整形手術を繰り返していたとされる。男性検察官はその状況を説明した》
 検察官「20年10月23日と24日、名古屋市内で整形手術を受けました。この時は眉間の手術をしていますが、この時には鼻筋にシリコンが注入されており、過去にも整形手術をしていました。整形手術前の市橋被告の顔写真はこちらです」
 《法廷の左右の大型モニターに、全国に指名手配されたときの市橋被告の顔が映し出される。写真は短髪で色が白く、幼さが残る表情の市橋被告が映されている。市橋被告は、特に視線をモニターの方に向ける様子はなかった》
 検察官「市橋被告は平成21年11月10日に大阪市住之江区のフェリー乗り場待合室にいたところを、大阪府警住之江署員に発見され、署に任意同行されたあと、同日通常逮捕されました。逮捕時の写真がこちらです」
 《大型モニターに映し出される逮捕時の市橋被告の写真。先ほどの写真に比べ、肌の色はやや黒くなり、髪はぼさぼさに伸びていた》
 検察官「本日の証拠は以上です」
 裁判長「本日はこれまでとなります。明日は午前10時20分からとなります」
  《検察官が終了を告げると、堀田裁判長は次回公判の開廷を5日午前10時20分と告げて、閉廷を宣言した。市橋被告は一度立ち上がって一礼をした後、すぐに座り、退廷の準備を始めた。その様子を、リンゼイさんの両親は直立したまま、じっとにらみつけていた》

 ◎上記事は[産経新聞]からの転載・引用です
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リンゼイ・アン・ホーカーさん殺害事件 市橋達也被告 判決公判 2011/7/21
リンゼイ・アン・ホーカーさん殺害事件 市橋達也被告 論告求刑公判②最終弁論 最終陳述 結審 2011/7/12
リンゼイ・アン・ホーカーさん殺害事件 市橋達也被告 論告求刑公判①午前中は被告人質問 2011/7/12
リンゼイ・アン・ホーカーさん殺害事件 市橋達也被告 第5回公判②証人尋問ー被告の恩師 2011/7/11
リンゼイ・アン・ホーカーさん殺害事件 市橋達也被告 第5回公判①証人尋問ーリンゼイさんの両親 2011/7/11
リンゼイ・アン・ホーカーさん殺害事件 市橋達也被告 第4回公判②遺族「彼に最高刑を」2011/7/8
リンゼイ・アン・ホーカーさん殺害事件 市橋達也被告 第4回公判①弁護側被告人質問2011/7/8
リンゼイ・アン・ホーカーさん殺害事件 市橋達也被告 第3回公判②被告人質問 2011/7/7
リンゼイ・アン・ホーカーさん殺害事件 市橋達也被告 第3回公判①証人尋問 弁護側提出の証拠調べ 2011/7/7
リンゼイ・アン・ホーカーさん殺害事件 市橋達也被告 第2回公判 2011/7/5
リンゼイ・アン・ホーカーさん殺害事件 市橋達也被告 初公判 殺意否認し「裁判で話すことが義務」2011/7/4
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