「親鸞再考2」思うままに 梅原猛 中日新聞2008/01/28夕刊

2008-01-28 | 仏教・・・

CULTURE
 私は約50年間、親鸞の著書を読み、親鸞について考えてきたが、親鸞にはどうしても解明できない謎がある。それを5点にまとめると、以下のようである。
1、出生の謎。親鸞が中級貴族の日野氏の生まれであり、彼の父は皇太后宮大進、藤原有範であることは明らかであるが、母が誰であるかは分からない。(以下略)
2、下山の謎。親鸞は摂政関白を務めた九条兼実の同母弟であり4度も座主を務めた慈円の弟子となり、慈円に寵愛され、家柄のよさもあって僧侶としての出世街道をまっしぐらに進んでいた。それなのになぜ親鸞は捨てて無位無冠の説教者、法然のもとに走ったのか。それは浄土念仏の流行にひかれたためというだけでは理解できない。
3、結婚の謎。(略)
4、流罪の謎。(略)
5、父殺しの謎。親鸞の主著『教行信証』の「信」の巻には父を殺したアジャセ王の話がつぶさに語られている。そして父殺しをした王の名が列挙され、あたかも親鸞自身もそのような父殺しの罪人と同じような人間であるかの如き叙述がある。親鸞はここで父殺しをした極悪人の成仏の教えを説いている。この異常と思われる悪の自覚はどこからきているのか。

 まだ他にも疑問があるが、以上の5点が私にはどうしても分からなかった。そしてこれが解明できないかぎり、本格的な親鸞論は書けないと長い間私は考えていた。


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