初2019年11月2日(土) 午後11時00分(60分) 再2019年11月7日(木) 午前0時00分(60分)
番組スタッフから
【この番組を企画したきっかけ】
巨樹が好きで、巨樹の番組を作りたいと、ずっと考えていた時に、脚本家の倉本聰さんが木が好きで、木の点描画を描いていると知り、取材をお願いしたところ、「巨樹の番組ならいいよ」と快く引き受けていただいたのが始まりです。
北海道富良野在住の倉本聰さんは、主に自宅のある“富良野の森”や24000ヘクタールの広大な森“東京大学北海道演習林”で、木の絵を描いていました。そして、木と向き合い感じた事を脚本家ならではの言葉にして添えていました。
「木には感情や記憶が絶対にある。巨樹には人間の想像を超えた不思議な力がある」という倉本さん。 最近は木に会いに各地をまわって絵を描いているといい、同行する事に。
倉本さんの思い出の小学校の校庭にあった木や、東京のど真ん中に立ち続ける、麻布・善福寺のイチョウ。そして、倉本さんがいつか会ってみたいと思っていた、長崎の原爆を生き抜いた巨樹などを一緒に旅することになりました。 時に千年以上を生きる巨樹が、何を見てきて、今の人間をどう見ているのか? 自然のなかでヒトはどう生きていけばいいのかを、巨樹と向き合い、考え感じたい。 無理かもしれないが“巨樹の声が聴きたい”。 そうして無謀とも思える、千年の命と向き合う旅が始まったのです。 さらに番組では、東日本大震災の津波で壊滅してしまった岩手県陸前高田市の7万本の松原の復活を願う人々の思いも追いました。日本人は木とどう生きてきたのか? 陸前高田の人たちの松の木への想いが少しでも伝わればと願っています。
【制作でこだわった点、もしくは、苦労した点】
●巨樹を撮る、見せる、
最もこだわったのは巨樹の大きさ、迫力、美しさ、生命力をどう撮るかです。巨樹の魅力は何といっても人知を超えた“異形”のカタチです。自然が作り出した造形美、なんていうと凄く安っぽくなりますが、とにかく巨樹は時に美しく、時に荒々しく、神々しい姿をしています。四季はもちろんの事、太陽の光や、風の向き、時間によってその姿を変えます。その一瞬を撮りたくて、カメラマンとも何度も相談し、言い争って、巨樹の息遣いが聴こえてきそうな最高の映像を目指し、全編4Kカメラで収録しました。 そのこだわりは編集でも続き、何十回も編集をやり直し、巨樹のかっこよさ、神々しさを見せました。
●倉本聰の声を聴く
今年84歳の倉本聰さんは、足を悪くしていて普段は杖を突いていますが、巨樹を前にすると興奮して早歩きになってスタッフを置き去りにした事もありました。
「巨樹の声が聴きたい」という、倉本さんですが、「声が聞こえる」とは決して言いません。 僕は、倉本さんが巨樹と向き合って、考えて、感じた、「ヒトはどう生きればいいのか?」を何度も聞いたのですが、
「巨樹はどう思っているのかは、簡単な事じゃない」「言葉にするようなことでもない」
「巨樹の声が聞こえるというのはそういう意味じゃない。」と、もっと深いことを考えている倉本さんは、中々答えてくれません。そして、何度も質問するたびに叱られました。
巨樹は当然何も語りませんし、倉本さんも中々語らない。僕自身が巨樹と向き合いどうすればいいか、問答を繰り返すような感じでした。
それでも倉本さんに何度も何度も「巨樹と向き合って何か感じましたか?」という質問を繰り返し、問い続けました。そうして巨樹に会う旅を続けながら、ロケの後半には倉本さんも徐々に話してくれるようになってきました。
(番組ディレクター 中沢一郎)
番組内容
悠久を生きる命・巨樹。災害や戦争を耐え、立ち続ける巨樹。日本人は、巨樹とどう生きてきたのか?脚本家の倉本聰さん(84)は木に引かれ、絵を描き続けている。巨樹から、ふと聴こえてくる声を体全体で感じたいと一心に描く。そして言葉を添える。倉本さんには、ずっと会いたいと思っている巨樹がある。原爆下で生きた長崎の被爆樹、大クスだ。壮絶な生命力を前にどんな絵を描くのか?巨樹と人間の生き方を見つめる。
出演者ほか
【出演】倉本聰,【語り】山根基世
◎上記事は[NHKETV特集]からの転載・引用です
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〈来栖の独白 2019.11.3 Sun〉
昨夜、視聴。
「木には感情や記憶が絶対にある」という倉本さん。思わず襟を正さないではいられない言葉。
木も花も虫も・・・すべて神の創り給いしもの。ならば木にも風にも水にも、この世のすべてに神の意志がある。
本日、公園で樹を見たとき、何かを確かめようとする自分がいた。小さな虫の羽にも、びっくりするような鮮やかな模様がある。神は、こんなところにまで意志を表されている。