【トヨタ副社長会見】
産経ニュース2010.2.2 14:58
トヨタ自動車の佐々木真一副社長は2日、名古屋市中村区の同社名古屋オフィスで、欧米や中国で相次いだ大量リコール問題について記者会見した。冒頭、「説明が遅れたことをお許し頂きたい」と陳謝し、頭を下げた。続いて、プロジェクターを使いながらリコールの原因、今後の対応策などについて説明した。記者会見の主な内容は以下の通り。
佐々木副社長「何らかの問題があり得るのであれば自主的な対応をすることが、お客さまの信頼を裏切らないことになる。通常のリコールでは改善対策を決め、部品のめどを付けてからアナウンスするが、今回は顧客第一の観点から、販売や生産の第一線に混乱を生じさせることになっても、顧客への注意喚起を優先させた。結果的に対応と発表に時間差が出た。改善対策案は全社を挙げて検討してきたが、昨夜決定し、米国トヨタ販売が発表した。もうすこし早くは発表すべきだったが、ご説明がおくれたことをお許し頂きたい」 「対象車両は北米で8車種で、カナダの27万台を含めて248万台。欧州は171万台。中国はRAV4の8万台。合わせて445万台がリコールの対象となった。対策だが、アクセルペダルの支点の場所をずらし、プレートをはさむことで戻りをよくした。2月中旬から修理を行う」
--想定以上に騒ぎが大きくなったが原因は何だと思うか
「ここまで疑念を抱かせたことは、お客さま第一に一所懸命事実関係を調べ、対策案を提供したいという気持ちと、何か情報を出したら顧客のためになるのかを考えると、疑念を持たれたのは致し方なかった。生煮えの情報が出るよりは、一刻も早くきちんとした対応を出すことを優先させた。不徳の致すところでお詫び申し上げたい」
--業績への影響は
佐々木副社長「あさって業績発表をする。豊田章男社長からも、お客さまにトヨタの信頼を損なうような意思決定をしたということはあってはいけないと、フリーハンドで権限をいただいた。業績を考えずにやった。伊地知隆彦専務が発表するが詳細はつかんでいない」
--昨年末、部品調達価格の30%削減を部品メーカーに提言したが、コスト削減と品質確保の両立をどう図るのか
「昨今、中国やインド、韓国の自動車メーカーが力を付けており、コスト競争力は大きな武器だ。協豊会の会員企業と長くつきあいを続けるためには、1回、勉強しましょうと。ただ、譲れないのは品質だ。走る、止まる、曲がるという基本性能に加え、塗装やデザインなども品質だが、マーケットごとに顧客の要望に合わせていけばいい。いかに無駄なく製品作りをしていくか。それはトヨタと仕入れ先との協業の中で一緒に取り組もうとしている。品質をいかに保ち、コストをいかにリーズナブルにするのかが課題だ」
--社長からはいくらお金をかけてもリコールに全力を挙げて欲しいといわれたのか
「お客さま第一という方針から、ずらすなと言われた。通常のリコール手続きは対策案を決めてからの発表だが、今回はその手続きを前倒ししたことで、関係部署にご迷惑をおかけした。でもそれを乗り越えてでもやるべきだった」
--2007年時点で問題を把握していたのに、なぜリコールを届け出なかったのか
「07年のタンドラの問題は、樹脂が吸湿性のある材料だった。高温多湿で放置すると、その部分が大きくなる。部品の戻りが遅いという苦情があった。ただ使い続けると慣らしがきき、良くなった感じもあった。07年のタンドラは材料を変えることで問題がなくなったと安心していた。ところが使っていくうちに徐々につるつるし、湿度がつくとすべりやすくなる。欧州は右ハンドル車でヒーターの風があたる。その風にペダルがあたると結露し、ペダルが戻りにくくなる。顧客にとって、マットで引っかかることも、アクセルペダルが戻りにくくなることも、同じアクセル回りの問題。顧客目線で対応しなければいけなかった」
--米国のラフード米運輸長官が、販売停止は当局側の要請だったとしているという報道があるが
「米国運輸省からは顧客目線で対応すべきとの忠告をいただいた。顧客への信頼回復へのチャンスを与えてもらった」
--日本で生産された車は本当に大丈夫なのか
「日本で生産されているものはデンソー製の部品を使っている。しかもリコール対象のものと機構が異なっている。したがってデンソー製のペダルを付けている車はリコール対象になっていない」
--2010年の販売計画を修正するのか
佐々木副社長「リコール発表後、トヨタに対する顧客の注文が減っている。過去のリコールの時の反応は最初の月には2割落ちる。それから徐々に回復するというが、今回のようなケースは初めてで、大きな影響がでると心配している。ただ、今は顧客への信頼回復が先。もう少し様子を見てから販売への影響の見通しを出したい」 --社長自らが会見をしないのはなぜか
「品質保証に加え、カスタマーサービス本部の担当でもあり、私で対応できると考えた」
--海外からの部品調達が原因とする見方もあるが
「もらった図面通りに設計ができるのか、書いた図面が本当に正しいのかを見抜くことが大事だ。海外展開があったからこの問題が起きたわけではない。(問題が見つかった部品メーカーは)トヨタの技術部と共同で開発してきたメーカーで、パートナーとして仕事をやってきた。結果的に環境条件の見落としとなったが、十分に試験をやり、お互いに構造もチェックし合った。海外メーカーに門戸を広げたことでご迷惑をかけた。今回の反省を踏まえて対応したい」
--再発防止策は
「使用環境条件の中で温・湿度を考慮すべきだった。試験はやっていたが、車両というシステム自体の試験は抜けていたと指摘をされても仕方がない」
--米国で顧客から最初に指摘があったのはいつか
「フロアマット問題と今回のリコールとは関連がない。フロアマットはゴム製の固いマットという外的要因がなければ起きない問題だ。リコールについては、アクセルペダルの内部の部品に意図しない不具合が起きた。つまりペダルに問題が内在していると判断した」
--リコールキャンペーンはすべての顧客には届かないのではないか
「顧客にはダイレクトメールをお送りするし、販売店にお越しいただけないお客さまにはフォローアップする。中古車に転売されて米国内にない、自国内でスクラップされているというケースは古い車ほど多い。いろいろ手を尽くしてやっている。米国は比較的情報ネットワークがしっかりした国なので、ベストを尽くして顧客の掌握にあたる」
--なぜ米CTSの部品を使ったのか
「米CTSは優秀な技術を持っていると判断し、調達部門としては米CTSに発注した。もちろん現地で仕事をする以上、現地のメーカーとのおつきあいを深めた方が、地域に貢献できる。
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【自動車産業ニュース】
米世論、トヨタ不信感大きく 公聴会で追及へ
2010年2月2日
【ニューヨーク=阿部伸哉】トヨタ自動車のアクセル不良によるリコール問題で、トヨタは1日、具体的改修策を発表し、生産も再開のめどが立った。しかし米世論に広がった不信感は大きく、議会の追及は今後、本格化しそうだ。
「こうした経緯となったことを心からおわびしたい」。米国トヨタ自動車販売のジム・レンツ社長はトヨタのホームページ上に動画で登場。3度にわたって顧客に陳謝した。その後も米三大ネットワークの一つNBCテレビに出演。「対策には絶対の自信がある。信頼回復にいま一度のチャンスを」と訴えた。
トヨタは昨年秋、アクセルペダルがフロアマットに引っ掛かりやすいとの苦情を受け、北米で大規模な自主改修に追い込まれた。この問題では米当局に対応の遅さを批判されただけに、今回はいち早く車両欠陥を認め、「迅速に徹底調査の意思を示した」(トヨタ幹部)はずだった。
しかし米メディアは連日トップ級で報道。米議会下院も2つの委員会で公聴会を予定して追及姿勢を見せ、一部オーナーからは集団訴訟の動きもある。米運輸省のラフード長官は「リコールも販売停止もこちらから要求した」と明かしトヨタ側に冷や水を浴びせた。
継続的に「暴走トヨタ車」問題を取材しているABCテレビなどは、「速度を制御する電子部品の欠陥」の可能性を主張。トヨタは電子部品の欠陥を否定しているが、米国は今秋、中間選挙を控えており、「世論受け」を狙う議会が格好の標的とする恐れがある。
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