「国民訴訟制度」をつくれ---新藤 宗幸氏

2010-02-01 | 裁判員裁判/被害者参加/強制起訴
日経新聞オピニオン(P5) 《インタビュー領空侵犯》 「国民訴訟制度」をつくれ
(千葉大学 新藤 宗幸氏)
 --国民が国の公金支出の是非を問う「国民訴訟制度」を提案しているそうですが。
 「自治体に不当な公金の支出や瑕疵があった場合、住民は首長や職員に対して訴訟を起こせます。これが住民訴訟です。自治体の監査委員に監査請求し、その結果に不満な場合、裁判ができます。自治体だけを対象にしていますが、国や大臣や官僚を対象とする訴訟制度もつくるべきです」
 「国民訴訟ではまず、会計検査院に監査を求めます。そこで違法な公金の支出ではないと判断され、それに納得できない国民に裁判の道を開くべきだと思います。有権者に幅広く権利を与えるのです」
 --なぜ必要なのですか。
 「かつて自治体で官官接待やカラ出張が発覚し、各地のオンブズマンがお金の返還を求めて訴訟を起こしました。事業そのものや政策の是非も問うことができます。例えば、山口県下関市と韓国と結ぶ第三セクターのフェリーの債務処理で補助金を出した時には、その事業のあり方まで争われました」
 「昔、国の高級官僚は『自治体は何をするかわからないが、国はそもそも間違ったことはしない』と主張していました。実際はどうですか。国の出先機関が道路財源でマッサージいすを買った話がありましたが、国でも公金を巡る問題はいろいろあります」
 一義的には国会や会計検査院でチェックすればいいのでは。
 「国会での追求はいまいちですし、会計検査院も最近は頑張っていますが、いかんせん職員が少なすぎます。米政府監査院(GAO)と比べると10分の1です。国民訴訟制度ができれば、その前提として検査院が監査をするわけですから、それを機に検査院の人数も増やせばいい。政府や行政を監視する方法が多元化していることは民主主義の条件です」
 「司法も国民が訴える仕組みには消極的です。いまの行政訴訟制度は国民にとって非常に壁が高いので、海外に比べて件数が少ない。お金をかけて訴えても、門前払いになるケースが多く、司法のあり方が問われています」
 --「開かれた司法」として裁判員裁判が始まったわけですしね。
 「あれにも問題があります。刑事事件が裁判の対象になっていますが、政治家や官僚の汚職事件などに限るべきではないでしょうか。現状をみると、正義感ばかりが表に出てきて、判決が全体的に重くなっている印象があります。国民訴訟制度をつくり、それを一般の人が裁判員になって裁けば、司法の厚みも増すでしょう」

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