【ぬぐえぬ影 連続児童殺傷20年】《酒鬼薔薇聖斗くん32歳の誕生日おめでとう♪》殺人願望、元少年Aの影響色濃く

2017-05-30 | 神戸 連続児童殺傷事件 酒鬼薔薇聖斗

神戸連続児童殺傷事件の加害男性 関東連合の元幹部も危惧
【ぬぐえぬ影 連続児童殺傷20年(上)】「命がけで来てんだよな」元少年A、直撃の文春記者に態度豹変 闇に消えたのは「モンスター」なのか
2017年5月28日 7時32分 産経新聞
 人目を避け、息をひそめるように暮らしていたのだろうか。
 その男性の姿を日中に見かけることは、同じ団地の住人でさえほとんどなかった。
 身長約160センチ。色白で、少しこけた頬。その男性こそが、20年前に「酒鬼薔薇聖斗(さかきばらせいと)」を名乗り、日本中を震撼(しんかん)させた神戸連続児童殺傷事件の加害男性(34)だった。
 東京都足立区。埼玉県との都県境に近い団地の一室で、加害男性は平成27年冬から昨年1月までの数カ月間生活していた。
 「夜になると、サドルに穴が開いたぼろぼろの自転車で出かけていた」。同じ棟に住む男性は、加害男性らしき人物の印象を語る。「『何か不気味な人だ』と話す住人もいた。2~3カ月で、すっと忍者みたいに消えていった」
 姿をくらますきっかけとなる出来事が、昨年1月にあった。週刊文春の記者から直撃取材を受けたのだ。
 それから数日のうちに、加害男性は入居時と同様、ひっそりと退去していった。だが2月になって「元少年A、33歳」という見出しの近影写真とともに記事が掲載されると、ピンと来た住民も少なからずいた。
 「もう団地にはいない。住人が怖がるので話題にするのを避けている」。自治会長は言葉少なに語った。
*逃げる記者を追い回す
 愛媛、徳島、神奈川、静岡、そして東京…。9年10月に収容された関東医療少年院(東京都府中市)での矯正教育を経て、16年3月に仮退院した加害男性。その後、どこに居住しているかをめぐっては、多くの噂が飛び交った。
 懐疑の目を向けられては転居を繰り返したのか、27年6月に犠牲者遺族に無断で、「元少年A」という匿名で出版した手記「絶歌(ぜっか)」には、日雇いや少年院で身につけた溶接工の仕事で食いつなぎ、ネットカフェや簡易宿泊所を転々とする日々がつづられている。
 両親ですら会って話を聞きたいという希望がかなわない中、直撃取材に成功した週刊文春の記者は半年以上をかけ、20年前とは別の名前で暮らす住居を特定したという。
 記者によると、加害男性に名前を確認したところ、「何のことか分からない」と答えていたが、途中から様子が一変した。
 「名刺も手紙もいらねえよ」「命がけで来てんだよな」
 脅しとも取れる言葉を発し、異変を感じて逃げる記者を約10分間、執拗(しつよう)に走って追いかけてきた。記者は「(加害男性は)ポケットの中で何かを握る素振りを見せながら叫んでいた。更生できているのか疑問に感じた」と振り返る。
*元半グレ幹部からの接触に反応
 「僕」を主人公とする小説風にまとめた「絶歌」の出版から3カ月ほど後、加害男性は「存在の耐えられない透明さ」と題したホームページを開設した。
 本人とみられる顔を隠した写真に、露悪趣味の塊のようなイラスト。自己顕示欲の発露そのもののHPには、連絡先としてアドレスが記されていた。
 取材申し込みや好奇心、あるいは糾弾…。さまざまな動機で送られたメールの中で、交流を求めて返信を受けた一人が作家の柴田大輔さん(38)だ。
 柴田さんは東京・六本木のバット襲撃事件で悪名をはせた半グレ集団「関東連合」の元幹部。襲撃事件には関わっていないが、アウトローの世界で生きてきた人物からの接触に、なぜか加害男性は反応した。メールには出版後の暮らしぶりなどが記されていた。
 《ビジネスホテルを転々としている》《(マスコミが居場所を捜しており)落ち着かせてくれる気配がない》《今の世の中にはレールから外れてしまうとどこにも戻れる隙間がない》
 自らが起こした事件への反省には触れず、不幸を嘆くような言葉ばかり。しかも、《(レールから外れた人たちで)表現者集団を作りたい》という壮大な?夢?までつづっていた。
 「事件と向き合っていない」と思わざるを得なかったという柴田さん。手記を出した出版社など周囲の大人の「無責任さ」も指摘した上で、こう危惧する。
 「追い詰められたら何をしでかすか分からない。もしかするとモンスターを野放しにしてしまったのかもしれない」
 ほんのつかの間、残像を焼きつけ、再び社会のどこかへ消えた加害男性。ホームページも閉鎖され、その消息は杳(よう)として知れない。
*神戸連続児童殺傷事件
 平成9年5月27日、神戸市須磨区の中学校の校門前で、行方不明だった男児の遺体の一部が発見された。遺体に添えられた「さあ、ゲームの始まりです」という挑戦状は社会に激震を引き起こした。14歳の凶行から20年。手厚い矯正教育を経て加害男性が戻った社会はいまなお、暗い影がぬぐえない。事件は社会に何を刻んだのだろうか。
 【用語解説】神戸連続児童殺傷事件 神戸市須磨区で平成9年2~3月、小学生4人が殴られるなどする連続通り魔事件が発生し、3月23日に山下彩花ちゃん=当時(10)=が死亡。5月27日には土師(はせ)淳君=同(11)=の遺体の一部が「酒鬼薔薇聖斗」を名乗る挑戦状とともに発見された。兵庫県警は6月28日、中学3年で14歳だった加害男性を逮捕。関東医療少年院に収容された加害男性は16年3月に仮退院、17年1月に本退院した。

 ◎上記事は[livedoor NEWS]からの転載・引用です *リンクは来栖
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産経WEST 2017.5.29 07:30更新
【ぬぐえぬ影 連続児童殺傷20年(中)】「矯正教育は失敗」医療少年院の疑似家族「祖父」が吐露 背信の「絶歌」…贖罪よりも自己救済を優先

  
  大勢の報道陣や見物人が待ち構える中、バスに乗って関東医療少年院に到着した神戸連続児童殺傷事件の加害男性=平成9年10月20日、東京都府中市

 「積み重ねてきたものが一気に崩れ去った」。関東医療少年院(東京都府中市)の元院長、杉本研士さん(77)は悔恨とともに、かつての〝孫〟の現況に思いをはせた。
 神戸連続児童殺傷事件で逮捕され、殺人などの非行内容で神戸家裁へ送致された加害男性(34)は平成9年10月17日、医療少年院送致の保護処分を受けた。3日後、収容されたのが関東医療少年院だった。
 加害男性はこのころ、「しなびた野菜のように」(関係者)憔悴(しょうすい)しきっていた。やせこけ、誰とも目を合わせようとしない。罪の意識からではない。死刑になることを望み、それが果たせなかったからだ。
 空前絶後の凶行に及び、周囲を拒絶する少年を更生させることができるのか。矯正教育は法務当局の威信をかけて行われた。医師や看護師を含め10人規模の処遇チームが発足。この事件を機に、重い犯罪行為をした少年を対象に新設された「G3」と呼ばれる長期処遇の特別プログラムが適用された。
 重視されたのが、疑似家族による「育て直し」だ。加害男性の実母と同年代の女医が「母親」となり、杉本さんは「祖父」。人に心を許すことも、命の尊さも知らない加害男性を家族のように包み込み、やがて罪の自覚を促していく。
 加害男性に少しずつ、変化の兆しが見え始めた。
■弁護士の差し入れに初めて礼も
 弁護団長を務めた野口善国弁護士(71)も、変化を感じ取った一人だ。
 逮捕後、初めて面会したときの印象は「意外と普通の子」。だが何十回と面会を繰り返しても、感情をのぞかせることがない。野口弁護士と会うことを喜んでいるのか嫌がっているのかさえ分からなかった。
 だが、事件翌年、少年院を訪れると、「鑑別所に漫画を差し入れてくれてありがとうございました」と初めて礼を述べられた。次の年の面会では笑顔も見せた。両親の話題を避けるのは以前と変わらなかったが、何かが芽生えているのが感じられた。
 収容から6年半がたとうとする16年3月、仮退院を前にした加害男性は「僕に『生きなさい』と言い続けてくれたことに感謝します」と教官らに伝え、握手を交わしたという。母親役だった女医は同時期に退職した。精神科医をしながら、社会に出た加害男性をサポートするためだった。
■「更生していない」…酒鬼薔薇聖斗の影
 「被害者や遺族を事件で苦しめた上に、さらに本を出して苦痛を与える権利などあるはずがない。これは精神に対する傷害罪です」
 殺害された土師(はせ)淳君=当時(11)=の20回目の命日の前日に当たる今月23日。東京・永田町で開かれた「犯罪被害者の声を国会に届ける院内集会」で、父親の守さん(61)は国会議員らに訴えた。
 毎年、命日を前に加害男性が送ってきていた手紙。真相を知ることができれば、とつらくても読み続けた。27年、18回目の命日の手紙は、事件に向き合いつつあると感じられた。その直後、何の断りもなく唐突に世に出たのが手記「絶歌(ぜっか)」だった。
 加害男性は巻末で、被害者の家族に向けて無断での出版や事件をわびた上で、こう吐露した。《僕にはこの本を書く以外に、もう自分の生を掴(つか)み取る手段がありませんでした》
 贖罪(しょくざい)よりも表現活動による自己救済を優先する。苦痛と困難に耐えかねて挫折したのか、単に化けの皮がはがれたのかは定かでない。ただ、世間は「更生していない」と受け止め、「酒鬼薔薇聖斗(さかきばらせいと)」の不気味な影を感じた。
 社会復帰から13年余り、加害男性は再犯には及んでいない。矯正教育は成功だったという評価も現場にはあるが、責任者だった杉本さんの総括は「絶歌」出版を経た今、あまりに苦い。
 「あんな残虐な事件を起こした人間でも変われる、遺族とも向き合えることを示し、社会の不安に応えたかった。だから、彼の矯正教育は失敗だった」

 ◎上記事は[産経新聞]からの転載・引用です *リンクは来栖
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産経WEST 2017.5.30 07:30更新
【ぬぐえぬ影 連続児童殺傷20年(下)】「誰でもいい」不可解な殺人願望、元少年Aの影響色濃く…矯正教育など社会で情報共有を

  
  土師淳君の遺体の一部が見つかった中学校と、殺害現場の通称「タンク山」。20年前の凶行は今もなお日本社会に影を落としている=神戸市須磨区

 《酒鬼薔薇(さかきばら)聖斗(せいと)くん32歳の誕生日おめでとう♪》
 平成26年の夏、神戸連続児童殺傷事件の加害男性(34)の誕生日を祝うメッセージが突然、ツイッターに書き込まれた。この人物は、5カ月ほどたった12月7日には「ついにやった」という謎の書き込みを残している。
 何を意味していたのか。
 この日、名古屋市のアパート一室を訪ねた女性=当時(77)=が殺害された。翌年1月末、殺人容疑で逮捕されたこの部屋に住む名古屋大の元女子学生(21)=退学=がツイッターの発言主だった。強い殺人願望を抱き、高校時代には同級生らに劇物の硫酸タリウムを飲ませ殺害を図っていた。
 今年2月、名古屋地裁の公判に出廷した母親の証言によると、元女子学生は中学生のころに神戸連続児童殺傷事件を知り、「同じ年の人がそんなことできるなんてすごい」と強い興味を抱いたとされる。
■共通する心の問題
 「弱い者なら誰でもいい」。不可解な動機による「14歳の凶行」が衝撃を与えた神戸連続児童殺傷事件。特異な少年事件はその後も相次いだ。
 3年後の12年、愛知県豊川市で高校3年の男子生徒が「人を殺してみたかった」という動機で主婦を殺害した。以降も、小学6年女児による長崎県佐世保市の同級生殺害(16年)、高校1年の男子生徒による奈良県田原本町の放火殺人(18年)、そして元名大生の事件…。こうした事件には共通する「心」の問題がある。広汎性発達障害だ。
 先天的な脳の機能障害に起因するが、凶暴性を伴うわけではない。興味に極端な偏りがあり、人の感情を感じ取ることが不得手で、対人関係に問題を抱えることが多いとされる。
 「少年A 矯正2500日 全記録」「元少年Aの殺意は消えたのか」などの著書があるジャーナリストの草(くさ)薙(なぎ)厚子さん(52)によると、精神鑑定で行為障害とされた神戸連続児童殺傷事件の加害男性も、医療少年院収容後に広汎性発達障害と診断された。だが、当時は治療方針が浸透しておらず、十分な矯正教育が行われなかった。
 「ご遺族への配慮もなく『絶歌(ぜっか)』を出版した。他者の感情を理解できる社会性が身についていれば、出版はあり得なかった。やっぱり彼は治っていない」
■許されない情報公開
 27年4月、月刊「文芸春秋」に、加害男性を医療少年院送致とした神戸家裁の決定文全文が掲載された。非公開の少年審判で言い渡され、生育歴なども詳細に記された決定文を提供したのは、裁判長だった元判事の井垣康弘弁護士(77)。「事件の背景を広く共有しなければならない」という思いからだった。
 だが、裁判官としての守秘義務に反する上、被害者遺族の承諾もなしに公開することが許されるはずもない。井垣弁護士には、所属する大阪弁護士会から業務停止3カ月の懲戒処分が下された。
 それでも「社会の不安を軽減するためには、矯正教育の過程も含め情報を提供していくべきだ」との持論は崩さない。
 草薙さんも「『人を殺してみたい』と考えている人間の障害を理解し、早期に適切なケアを行うことが大切」とし、そのためにも少年法で情報を守りすぎていては再発防止につながらないと主張する。
 こうして立ちすくんでいる間にも、酒鬼薔薇聖斗の影を思い起こさせる出来事が今年4月、神戸市須磨区であった。
 20年前、土師(はせ)淳君=当時(11)=の遺体の一部が発見された中学校で、木の枝にカラスの頭部が刺さっていたのだ。後に頭部は人為的に切断されたのではないことが判明したが、誰がどんな目的で枝に刺したのかは今も明らかにされていない。
  この連載は林佳代子、桑村朋、小松大騎、西山瑞穂、山田太一が担当しました。

 ◎上記事は[産経新聞]からの転載・引用です *リンクは来栖
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『絶歌』元少年A著 2015年6月 初版発行 太田出版 (神戸連続児童殺傷事件 酒鬼薔薇聖斗)

    

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