再稼働は危なすぎる 浜岡原発&伊方原発 ~南海トラフ地震が襲う/広瀬隆氏 『原子炉時限爆弾』

2012-04-14 | 政治

徹底追及!南海トラフ地震が襲う浜岡原発(中部電力)&伊方原発(四国電力)「再稼働は危なすぎる!」
現代ビジネス「経済の死角」2012年04月14日(土)フライデー
 浜岡には建設中の防波壁の高さを上回る「21mの津波」が襲う可能性が! 一方の伊方も「最大震度6強」を想定せず、過去に起きた地震データのみでストレステストを行っている
  M9.1という驚異的な数字が想定されている、南海トラフ地震。3月31日に内閣府から各地の想定震度、津波高が公表された中で、俄然注目を集めたのが、中部電力・浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)だ。福島第一原発を上回る、震度7の地震と最大21mの津波が襲う可能性が明らかにされたからだ。
  内閣府の「南海トラフの巨大地震モデル検討会」(座長・阿部勝征東京大学名誉教授)の委員である東北大学大学院工学研究科附属災害制御研究センター教授・今村文彦氏が説明する。
 「従来、南海トラフでは1707年の宝永地震を参考に、東海、東南海、南海の震源域が3連動する地震を考えてきました。今回はそれに加えて、九州沖の日向灘を含めた4連動、南海の海溝を含めた5連動まで視野に入れた。さらに、プレートが断層として滑って地震や津波を起こすのですが、断層の浅いところでも大きく滑る可能性があると仮定した(図表 「地震時に動く断層の想定領域」として示したエリアが、大きく滑る可能性がある地域)。両方の効果によって、津波の規模が大きくなったのです」

                                    

  茨城県から鹿児島県に至る太平洋沿岸各地の23市町村で、20m以上の津波が押し寄せる可能性が指摘された。各自治体は早急に対策を立てる必要に迫られることになったが、中でも深刻な危機に直面しているのが浜岡原発なのである。
  浜岡原発は、昨年5月の時点で、津波への対策の不十分さから当時の菅直人首相の要請を受けて4、5号機が運転を停止。3号機は定期検査中で、1、2号機は老朽化による廃炉準備中のため、すべての原子炉が停止している。
 中電は、それまで、浜岡原発における最大震度を6強と想定。津波の想定水位を最大で約8mとし、既存の高さ10~15mの砂丘堤防で十分としていた。が、福島第一原発の津波の高さが15mだったことから、新たな津波対策として、鋼材と鉄筋コンクリートなどを使った、防波壁(高さ18m、幅2m、総延長約1.6㎞)の工事を昨年11月に始めた。しかし、今回の想定は、その18mを3mも上回った。津波対策を抜本的に修正しなくてはならないのだ。
  そもそも浜岡原発は、構造上の致命的な欠陥を抱えている。『原子炉時限爆弾』(ダイヤモンド社)などの著書を持つ、作家・広瀬隆はこう指摘する。

                 

 「冷却用の海水を地下の取水トンネルを通じて引き込み、取水槽に蓄えています。しかし、このトンネル自体が、今回想定された震度7の揺れが来たら崩壊する危険性があるのです。海水が引けなくなれば、取水槽に蓄えてある水で冷却するしかない。ですが、それも20分程度しかもたないのです。冷却が不可能になれば、福島第一原発と同様に炉心溶融に陥るのは防げません」
  浜岡原発の抱える問題点はこれだけではない。中電は3月30日、浜岡原発の定期検査で、5号機の復水貯蔵タンクに40個の穴が見つかったことを発表した。このタンクは、原発の運転中に原子炉冷却のための水を一時貯める設備で、タンク内の水はわずかな放射性物質を含んでいる。昨年5月に運転を停止した際、復水器内に海水約400tが流れ込むトラブルが発生。中電は、その海水によって腐食し、穴ができたのではないかと見ている。放射性物質の漏洩はないというが、津波対策以前の問題があるのではないか。福島第一原発の設計者であり、原子力安全・保安院の専門家会議のメンバーとして、関西電力・大飯原発3、4号機(福井県おおい町)のストレステスト(耐性評価)に参加した後藤政志氏が批判する。
 「普通に考えて、1年も経たないのに腐食して穴が空くのかという疑問がある。昨年5月以前から腐食していたと考えるのが妥当でしょう。つまり、きちんとチェックされていなかったわけです。福島の事故が起こってはじめて、しっかり検査して分かったということではないでしょうか。原発の管理なんて、この程度だということです」
  いくら巨大な防波壁を作っても、管理体制がしっかりしていないのでは、まさに砂上の楼閣である。中電は再稼働に向けて、防波壁の工事の12月の完成を予定している。今回の最大21mの津波高の想定を受けて、中電はどのような浸水対策を考えているのか。広報担当に疑問をぶつけると、こう回答した。
 「現在行っている18mの防波壁などの浸水対策はもう着工しているので、予定通り進めることになると思います。新たな対策を講じるとしても、この浸水対策とは別の工事になると思います」
  今回の南海トラフ地震にともなう津波の想定値が変更されても、とりあえずは旧来の対応を進めるというのである。
■頼りにならない耐震設計
  危うさを抱えているのは浜岡原発だけではない。四国電力・伊方原子力発電所(愛媛県伊方町)は、不十分なストレステストのまま再稼働へと舵を切っている。
  3月26日、保安院は伊方原発3号機のストレステストの一次評価を「妥当」とする審査書をまとめ、内閣府の原子力安全委員会に報告した。最終的には野田首相を含めた4閣僚が再稼働の是非を判断するが、再稼働に向けて大きく動き出したのだ。
  だが、このストレステストが安全性をまったく担保できていない。
 「ストレステストには一次評価と二次評価があります。一次評価は『炉心溶融まで』の耐久テストであり、二次評価は『炉心溶融以降』のテストなのです。福島第一原発の事故を踏まえてテストするのであれば、当然炉心溶融が起こった後、原発がどうなるかという二次評価を行わなくてはならない。だが、提出されたのは一次評価のみ。それで再稼働を妥当と判断しているのです」(前出・後藤氏)
  橋下徹大阪市長(42)がストップをかけて話題になった、大飯原発3、4号機の再稼働問題でも、伊方原発同様にストレステストは一次評価のみで「妥当」と判断され、最も再稼働が早いと見られていた。
「ところが4月3日になって、野田首相は大飯原発の再稼働に関して、新基準を作るよう関係閣僚との会合で指示を出しました。大阪府だけではなく、京都府や滋賀県など近隣府県の反発が非常に強かったため、再稼働の判断が先送りされることになったのです」(全国紙原発記者)
  伊方原発は今回の南海トラフ地震の想定では、震度6強の地震と最大3mの津波に襲われる可能性を指摘された。
 昨年5月14日に発電設備全5機を停止した、浜岡原発。海抜は、福島第一原発の10mを下回る、わずか6mだ
  四電はこれまで、伊方原発における最大震度を5強、最大マグニチュードを8.6、最大加速度を570ガルと想定してきた。なおかつ、'01年の芸予地震(M6.7)の際の48ガル(3号機への負荷)が過去最大ということを根拠に、原発の耐震性に問題はないとしてきた。だが、今回の想定では、それを上回る6強という数値が出されたのだ。後藤氏が語る。
 「過去にどのレベルの地震が起きたかということを基準にするのではなく、起こりうる最大の規模を想定すべきです。東日本大震災が起こるまで、日本でM9クラスの地震が起こるなんて考えられていませんでした。'07年の新潟県中越沖地震(M6.8)では、柏崎羽原発には2058ガルの負荷がかかりました。伊方原発付近で過去に発生していないからといって、そうした規模の災害に襲われる可能性がないとは言えない。伊方や浜岡(1000ガル)の耐震設計では太刀打ちできません」
  大飯原発はもちろん、安全性がまったく担保されていない両原発の再稼働も、絶対に許されてはならない。
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大飯原発再稼働を「チーム仙谷」は決めた/北朝鮮のミサイル発射に国民の注意を向けさせ、その隙に 2012-04-13 
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 放射能汚染列島ニッポン、本当の恐怖はこれから 福島とともに心配な浜岡原発、今後も事故が相次ぐ危険性
JB PRESS 2011.03.25(Fri) 広瀬 隆
 あらかじめ申し上げておきますが、私は日本の国民を脅かそうとか、危機意識を煽って風評被害を広げようなどという意図は全くありません。
 これから私が申し上げることが、起こらなければ結構。幸いなことです。でも、万が一起きてしまったら日本は取り返しのつかないことになります。その前に、きちんと目の前にある事実と向き合い、対策を打つことが大切ではないでしょうか。
福島第一原発の事故は明らかな人災
 なぜなら、福島第一原子力発電所で起きた今回の事故は、天災では決してなく、明らかな人災だからです。
 福島第一原発を襲った津波は想定を超えていたと、よくテレビや新聞では伝えられています。NHKなどは「100年に一度の想定外の地震と津波」と、何度も何度も繰り返しています。これはいったい何なのでしょう。
 想定外を繰り返すことで、国民にこれは避けられなかった災害であり国や地方自治体、東京電力には責任がないということを刷り込もうとしているのでしょうか。
 でも、本当に想定外なのですか。今回よりも地震のエネルギーが大きかったスマトラ島沖地震が2004年に発生しています。この時のマグニチュードは9.3でした。今回の地震よりもはるかに大きかった。
 この時、津波の高さは最も高かったところで49メートルだったと記録されています。今回、東北地方を襲った津波の高さは最大15メートルとようやく推定が出ました。津波に襲われた人がほとんど亡くなってしまったこともあり正確にはこれからも分からないかもしれない。
スマトラ島沖地震の津波は想定外?
 しかし、スマトラ島沖地震では49メートルの高さになったのだから、日本でもこれくらいは最悪のケースとして想定しておくべきではないでしょうか。日本にはそんな巨大な津波は襲ってこないと言う人がいるかもしれません。
 しかし、過去の事例を調べれば日本を巨大津波が何度も襲っている。明治29年、1896年に発生した明治三陸地震というのがありました。この時は、津波の高さが38メートルの高さになったと記録されています。
 わずか100年ちょっと前に起きているわけです。この事実があるのに想定外とはどうなんでしょうか。こうした津波が来る危険性を福島第一原発が想定していなかったとすれば、これは無責任な人災以外の何ものでもない。
 原発だけではありませんね。岩手県宮古市の田老地区。ここで津波の被害に遭った人たちは本当にお気の毒です。ここは、明治三陸地震による津波の被害を受けて、日本でも屈指の防潮堤が造られていました。
 しかし、今回の津波はその防潮堤をはるかに乗り越えて町全体に襲いかかり甚大な被害を及ぼしました。住人たちは「防潮堤があるから大丈夫」との油断があったと伝えられています。
かつて建設が計画されたことがある田老原発
 大きな建設費をかけて完成した防潮堤でしたが、今回のような津波は想定していなかったわけです。
 でも、過去には今回のような津波が現実として起こって、田老では防潮堤より高い14.6メートルを記録しているわけです。人災以外の何ものでもないでしょう。
 実は、報道ではほとんど伝えられていませんが、この田老地区にはかつて田老原発の計画があったのです。
 その計画は潰れてしまったとはいえ、高い津波が襲う危険性があるところに原発を造ろうとしたわけですから、当然、想定はされているはずでしょう。
 だから、テレビの解説者や政府の人たち、東電の人たちが「想定外、想定外」を繰り返すのは明らかにおかしい。想定外という言葉を安っぽく使ってほしくありません。想定が全部できたことなのです。
チェルノブイリのような事故に発展する可能性はないのか
 今回のような津波と原発の被害が想定できることは、昨年8月、『原子炉時限爆弾』(ダイヤモンド社)にまとめました。本を出版して強く警鐘を鳴らしたことが、今回、本当になってしまって実に無念な思いです。
 もし、本当に想定外だと言うのであれば、その人たちは専門家ではないことになるでしょう。私はこの本で、誰でも分かる原発の地震災害の可能性を指摘しました。しかし、想定外を繰り返している人たちは、曲がりなりにも専門家と呼ばれる人たちですよ。
 さて、福島第一原発はこれからどうなるのでしょう。この点は日本のみならず世界中の関心事だと思います。経済産業省の原子力安全・保安院は、福島第一原発の事故を米国のスリーマイル島で起きた事故と同じレベル5に引き上げました。
 これで済むのか、旧ソ連で1986年に起きたチェルノブイリ原子力発電所のような大事故に発展するのか。このところの動きを見ていますと、自衛隊や東京都の消防庁や各都道府県から応援に駆けつけた消防隊のおかげで小康状態を保っています。
 このまま、原子炉や使用済み核燃料の冷却が順調に進んで、これ以上の事故に発展しないことを心から願っています。また現場で必死で作業に当たっている人たちには、本当に頭が下がります。日本の宝とは、この人たちのことを言うのでしょう。
原子炉のポンチ絵に騙されるな
 しかし、現実は決して甘くありません。私が心配するのはやはり原子炉です。テレビではもう皆さん見飽きたかもしれませんが、原子力発電所の模型や仕組みを示した図が何度も登場しています。
 これを見る限り、原子炉の圧力容器内に冷却水を入れ、また使用済み核燃料を保存しているプールに水を供給している限り、大きな事故は起きそうもないような気がします。
 でも、テレビで示される図は、あまりに図式化されすぎています。このポンチ絵と実際の本物とはかけ離れています。例えば、原子炉のお釜の下には制御棒を出し入れする部分がありますよね。
 これがどうなっていると思いますか。例えて言うなら、戦国時代の槍衾(やりぶすま)なんですよ。何本もの槍が下からお釜に突き刺さっていると思ってください。それだけではありません。何本もの計器類もそこに挿入されているのです。
 そして、その下にはケーブルが走り回っています。非常に複雑な構造をしているわけです。そんな中に、冷却水として塩水を大量に入れたわけです。何事もないと考える方がおかしいと思いませんか。
一縷の望みは電源の回復
 原子炉や原子炉格納容器が破壊されて最悪の事態を迎える危険性は、十分に残っています。別に脅かすわけで言っているのではありません。そういう最悪の事態を想定しながら、今できることを着実にやっていく。それが必要です。
 もちろん、専門家は分かっているはずです。そして唯一の望みはやはり電源です。1号機から4号機まで外部電源がつながったという報道がありました。これは、事態改善の第一歩だと思います。
 電源をつなげて恒常的に原子炉と原子炉格納容器、そして使用済み核燃料のプールを冷却できるようにする。これができれば、最悪の事態は避けられます。
 ただし、電源が来たからと言って、そのようにスムーズに進むと考えるのは楽観的すぎます。大量の塩分が残っている中で、精密機械が果たしてきちんと機能するのか
 また、現場には相当な放射能が降り注いでいます。その中での作業は大変だと思います。時間との戦い、放射能との戦いなんです。しかしそれをやり切らなければ、最悪の事態に向かってしまう。
4基が一度に被害を受けた衝撃
 そして、今回の事故で特徴的なのが、福島第一原発の1号機から4号機まですべて大被害を受けたということです。スリーマイル島やチェルノブイリと大きく違う点がここにあります。
 4つある原子炉のうち、どれ1つとっても失敗できないということを意味しています。万が一、どれか1つの原子炉でメルトダウンや再臨界が起きてしまったら、福島第一原発に誰も近づけなくなってしまいます。
 そうなれば、残りの3つの原子炉の冷却作業を行えなくなる。つまり、残り3つの原子炉もメルトダウンが避けられなくなるということです。そうなれば、人類史上空前の原子力事故が発生する危険があります。
 電源が回復して恒常的に原子炉全体を冷却できるようになる確率はどれほどでしょうか。私はかなり薄氷を踏むような作業ではないかと思っています。
 簡単に成功する確率を1基当たり50%としましょう。1つの原子炉で50%だったら、4つ全部成功させるには、2分の1の4乗ですから、6.25%の確率ということになります。
600度でメルトダウンを起こす危険性も
 1基80%の確率としても、4基全部成功するには41%の確率しかありません。ことの重大性がお分かりだと思います。これほどの危険性がありながら、想定外だとして今回の津波に対処できる対策を講じてこなかったのは、明らかに東電の経営幹部に責任があります。
 東電の幹部が記者会見に出て発言している姿を見て聞いて、私は本当に腹が立ちますね。それに比べて、現場で作業している人たちは命をかけて取り組んでいる。日本を救うために。現場の人たちの力を信じたいですね。いや信じるしかありません。
 ついでに厳しい見方を言えば、日本の原子力の専門家たちは炉心溶融、メルトダウンは摂氏2000度を超えないと発生しないと言っていますが、フランスの原子力学者は600度を超えるとその可能性があると発言しています。そのことはかつてNHKの番組でも放送していました。
 いま福島第一原発で本当に何が起きているのかは、外からは分かりません。とにかく、現場での冷却が成功することを祈るのみです。
 ところで、この福島第一原発は、1971年の3月26日に運転を開始しています。そうです。運転開始から40年が経つわけです。米国では法律で、40年経った原子炉は廃炉にすると決めている。
設計者が退社したら廃炉にするのは世界の常識
 ところが、日本は昨年、この原子炉を60年運転すると決めています。これも理解不能ですね。だって、考えてみてください。40年という月日をです。
 実際に原子炉が建設を始めたのは1960年代末でしょう。その頃の技術者は誰一人残っていません。とりわけ、1号機は米GE製です。そんな設計者もいない、そして図面も残っていないと聞いています。
 そんな細かい技術が分からなくなった原発を20年も延命させて運転させるというのは、狂気の沙汰ですよ。設計した技術陣がいなくなったら廃炉にするのが常識です。
 原子炉というのは非常に複雑であり、当初の設計から変えている部分もある。設計者にしか分からないことも多いのです。
 さて、私がもう1つ言いたいのは、福島第一原発のことではありません。日本にはこれと同じように怖い原発が存在しているということを、日本の国民は知るべきです。
一番心配なのは静岡県の浜岡原発
 それは静岡県御前崎市にある浜岡原発です。今回、東日本で歴史的な地震が発生しましたが、ついこの前、静岡県沖でも大きな地震が発生したでしょう。ついに始まったかと思い、心配になってしまいました。
 詳しくは『原子炉時限爆弾』をお読みいただきたいのですが、明らかに太平洋プレートの大きな変動が始まっています。それは国土地理院のデータから私のような素人が調べても明らかです。
 スマトラ島で起きた大地震、そしてチリの大地震、バヌアツで起きた地震。全部相関関係があるのです。東海大地震はいつ起きてもおかしくないと言われていますが、私が調べたデータでは、まさにその時期が近づいている。
 御前崎の浜岡原発は、フィリピン海プレートがユーラシアプレートに沈み込む、まさに巨大海底断層の上に立つ原子力発電所です。ここでもし巨大地震が発生したら、どうなるでしょうか。
 福島第一原発とは様相が全く異なると思います。福島の場合には沖合いの深いところで発生した地震でした。
直下型地震の被害は今回とは違う
 マグニチュード9.0と言いますが、これは、気象庁が勝手に尺度をモーメント・マグニチュードに変えてしまったために大きな数字になっただけで、実際には、従来の気象庁マグニチュードで8.4です。
 その巨大な地震エネルギーの割には、揺れによる被害はそれほど大きくありませんでした。被害の大半が大きな津波によるものでした。
 ところが、今後発生が懸念されている東海大地震の場合には、阪神大震災のような直下型になる危険性が高い。阪神大震災のマグニチュードは7.3ですから、地震のエネルギーとしては今回の約45分の1です。
 それでもあれだけの被害を出したのです。しかも東海地方は4つのプレートが集まったところです。一重ではなく四重に入り組んだプレートの上に原発が立っているのです。そこで阪神大震災以上、現在予想されている揺れでその数十倍にもなる直下型地震が起きたら、どうなりますか。
 今回の福島第一原発の事故は、想定されたものですが、それを防げなかった。その責任は置いておいて、ではこれから何を学ぶかが大切です。日本中の原子炉の安全基準を一斉に見直さなければならないのは当然でしょう。
 3月15日。震災の発生から4日が経って、実は中部電力はこっそりと安全対策の引き上げを発表しています。12メートルの津波に耐えられる堤防を造るそうです。福島が5メートルですから、慌てて対策に出たことが分かるでしょう。もちろん、それで万全な対策になるはずはありません。
 しかし、堤防だけの対策で東海地震から原発事故は免れません。できるならば今すぐに原子炉を止めて、万が一の地震に備えるべきでしょう。電力不足が懸念されていますが、中部電力の火力発電所は十分にあります。
 停電よりも原発事故は、何倍どころか何百倍、何千倍も怖いということの認識が必要です。
〈筆者プロフィール〉
 広瀬 隆Hirose Takashi
 作家
1943年東京都生まれ。66年早稲田大学理工学部卒業。メーカーの技術者を経て、作家に。代表作には米ロスチャイルド家のことを徹底的に調べて書いた『赤い盾』がある。また、スリーマイル島原子力発電所事故を機に、81年『原子力発電とはなにか そのわかりやすい説明』、同年『東京に原発を!』を出版。2010年には日本の地殻変動を徹底的に調べて書いた『原子炉時限爆弾』を出版した。
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