取り調べ可視化 対象を限定/検察の正義に委ねていいのか/被疑者ノート「冤罪 こうして作られる」

2010-06-18 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア

取り調べ可視化 対象を「限定」へ 法相が方針
6月18日12時1分配信 毎日新聞
 千葉景子法相は18日の閣議後会見で、取り調べ可視化の対象事件を限定して法制化を進める方針を発表した。検察の取り扱う事件は年間約200万件に上り、交通違反、事故など供述の任意性が争いとならない事件が対象に含まれるほか、コスト面の負担が大きすぎると指摘。「実務上の課題を踏まえると、全事件の可視化は現実的ではない」と結論づけた。
 民主党は昨年衆院選で作成したマニフェスト(政権公約)で全事件・全過程の録音・録画の実施を明記。千葉法相も昨年の就任時には「基本的には全面可視化」と発言していた。だがその後、省内の勉強会で「可視化は真相解明に程遠くなる」などと捜査現場から反発を受け、現実的な路線に方針転換した。
 18日発表した中間報告は、検察受理事件の約75%が道交法違反や自動車運転過失致死傷など交通事件で、起訴される事件は約6%にとどまると指摘。「供述の任意性が問題とならないものも含まれ、可視化で実現しようとするメリットに見合わない多大な負担やコストとなる」とした。
 また、暴力団など組織的犯罪では報復の恐れなどから容疑者が真実の供述をためらったり、容疑者に知的障害がある場合は容疑者が取調官に迎合する可能性もあるとして、全過程にこだわらない方法も検討するとした。
 勉強会は来年6月をめどに調査を進める。法制審議会への諮問手続きを踏む可能性があり、早ければ12年通常国会への法案提出を見込んでいる。7月からは国家公安委員会との協議を進める。
 一方、全事件・全過程の可視化導入を求める民主党の「取り調べの全面可視化を実現する議員連盟」は17日、全面可視化を早期に実現する法案提出を法相に要請した。日本弁護士連合会も同様の主張をしており、方針転換への反発も出そうだ。
 検察は現在、全国で原則として自白した裁判員裁判対象事件で録音・録画を試行している。【石川淳一】
..................................................
市民集会:冤罪を考える 取り調べ全面可視化訴え、5人が経験を披露--水戸 /茨城
 取り調べの全面可視化を訴える「冤罪(えんざい) 布川(ふかわ)・足利・氷見(ひみ)・志布志(しぶし)事件から考える市民集会」が30日、水戸市中央1の市民会館で開かれた。公選法違反で無罪となった志布志事件の川畑幸夫さん(64)▽布川事件の再審を待つ桜井昌司さん(63)と杉山卓男さん(63)ら、冤罪被害を訴えている5人が登壇し、取り調べを受けた経験を披露した。
 川畑さんは、「お父さんはそういう息子に育てた覚えはない」という、父のメッセージに見立てた文章を警察官が紙に書き、その紙を踏まされたと紹介。「何度も、お前は人間じゃない、と言われ続けパニックになった」と振り返った。
 桜井さんは、警察の誘導に乗ってしまい自白調書を作られたと説明。「警察は嘘(うそ)をついたり脅したりして調べる手法を変えられないから可視化に反対している」と訴えた。
 日本弁護士連合会取調べの可視化実現本部副本部長の小坂井久弁護士は、供述が調書になる過程で内容が変えられると説明し「(供述を)全部録画すれば調書と対比できる」と全面可視化の意義を強調した。【原田啓之】毎日新聞 2010年5月31日 地方版
=========================
小沢氏と対立激化 検察が恐れる民主の4政策
【特報】2010/01/23中日新聞
「政治とカネ」の問題をめぐり、小沢一郎民主党幹事長と検察の対決が過熱。国民の生活に直結する国会予算審議に大きな影を落としている。政治家の不正をただすのは東京地検特捜部の十八番だが、「脱官僚」を掲げる小沢氏主導の民主党に対し、法務・検察組織には政権交代前から抱いてきた四つの危機感があるという。世論は小沢氏に事件の説明責任を求める一方で、捜査の公正さに厳しい目を向ける。“暴走”対決の背景を探った。(岩岡千景、秦淳哉)
取り調べ可視化
 法務・検察が嫌がる民主党政策の一つは、「取り調べの全面可視化」だ。同党は冤罪防止を目的に昨年、取り調べの全過程を録音、録画の対象とする刑事訴訟法改正案を国会に提出。衆院解散で採決まで至らず廃案になったが、民主党は衆院選マニフェスト(政権公約)にも可視化を盛り込んだ。
 政権交代後の昨年十月には、法務省内に法整備に向けた勉強会を設置。今年一月には、千葉景子法相が警察と検察で録画が導入されている韓国を視察。民主党の国会議員十数人が「取り調べの全面可視化を実現する議員連盟」(会長・川内博史衆院国土交通委員長)も発足させるなど、導入に向けた動きが進む。
 同党の輿石東参院議員会長は、同法改正案を今国会にあらためて「提出すべきではないかという意見がある」と発言。しかし、小沢氏の土地取引をめぐる事件で、同氏の元秘書らが逮捕されるなど生々しい展開に、鳩山由紀夫首相は二十日、「こういう事件が起きたからと反作用的に行動すると、検察に対する批判と受け取られる可能性がある」と、慎重な姿勢をみせた。
 検察は二〇〇六年八月から、警察も〇八年四月から、取り調べの一部録音や録画を試行。全面可視化については、取調官と容疑者の信頼関係を築けないことや、自白に頼る政治家の贈収賄や暴力団などの組織犯罪の解明が困難になることなどから反対している。
人事『脱官僚』で介入?
 また、民主党政権は「脱官僚」「政治主導」による官僚支配からの脱却を目指しており、法務・検察の人事や組織に介入することへの懸念も浮上している。これまで自民党政権は検察人事に触ったことはなく、検事総長は「三代先まで決まっている」といわれるほど、組織の結束は固い。
 永田町では「民主党には検事総長を民間人から起用し、高検の検事長らを日銀人事のように国会
同意人事にする計画がある」との話まで流れている。小沢氏側近の元参院議員で、政治評論家の平野貞夫氏によると「小沢氏自身が言ったことはない」というが、民主党内には「弁護士出身議員らに、そう主張する議員が複数いる」とも。
 昨年十二月、仙谷由人行政刷新担当相は省庁の事務次官ポスト廃止論を打ち出した。民主党政権
下では、検察を含めて省庁人事の改革が進められる可能性がある。
指揮権発動 捜査“握りつぶし
 指揮権発動についても、民主党は可能性を指摘するなど、法務・検察にとって脅威だ。
 検察庁法一四条は「法務大臣は(中略)個々の事件の取り調べまたは処分については、検事総長のみを指揮することができる」と指揮権を規定。首相が法相を任命するため、制度上は政権側が捜査を握りつぶすことも可能になる。
 実際の指揮権発動は過去に一度しかない。一九五四年、造船疑獄事件で東京地検特捜部が後に首相となる佐藤栄作氏を収賄容疑で逮捕しようとした際、犬養健法相が指揮権を発動して逮捕を逃れさせ、真相は闇へ。
 民主党は、小沢氏の西松建設違法献金事件を受けて、有識者による第三者委員会を設置。昨年六月の同委員会の最終報告書で「法相は高度の政治的配慮から指揮権を発動し、検事総長を通じて検察官の権限行使を差し止め、国民の判断にゆだねる選択肢もあり得た」と明記し、指揮権発動容認の姿勢を示した。
 鳩山首相は、小沢氏が検察との全面対決を表明した十六日、「どうぞ戦ってください」とエールを送り捜査への圧力ではないかと批判された。その後、首相は指揮権発動を「考えていない」と否定したが、政治主導を掲げる民主党政権に捜査関係者は警戒心を崩さない。
裁判員制度見直し 現場の混乱不可避
 昨年五月から始まった裁判員制度について、民主党が見直しを再三求めてきた点も、法務・検察を刺激した可能性がある。裁判員法は〇四年五月に成立。起訴権を一手に握る検察を中心に、法務省が一連の司法制度改革の目玉として長年かけて準備してきた。
 ところが、鳩山首相は政権交代前の〇九年五月、「もっと慎重にやるべきだった」と述べ、実施延期が望ましいとの見解を表明。〇八年には小沢氏も裁判員制度が「日本の風土になじまない」と発言し、民主党政権になれば制度見直しは必至との見方が広がった。
 連立政権でも、社民党と国民新党は見直しに積極的で、マニフェストなどに明記。しかし、やっとスタートさせた裁判員制度を再び変更するとなれば、司法現場の混乱は避けられず、法務・検察は大幅な見直しは阻止したい意向という。
元東京地検特捜部長『政治背景 頭にない』
 小沢氏は二十三日、東京地検特捜部の参考人聴取を受ける予定だが、果たして、これらの危機感が両者の対立過熱の要因になっているのか。
 政治評論家の有馬晴海氏は、「永田町では民主党は検察の暴走に歯止めをかけるために特捜部を解体する、ともささやかれていた。これらの危機感すべてが現実になるとは思えないが、検察は次々に情報を流し、小沢氏側も『戦う』と言い、対立が激化しているのは事実」と指摘する。
 国会は開幕したばかり。「国民は政治を変えることを期待して政権交代させたのに、高速道路無料化は実現するのか、子ども手当で少子化が変わるのか、大事な政策論議が吹き飛んでしまった。小沢氏の問題には冷静に対応し、議論を政策に戻すべきだ」という。
 一方、元東京地検特捜部長の河上和雄弁護士は「検事は目の前に事件があれば、しっかり捜査するのが仕事。自民党も民主党も関係ない。政治的な背景は検事の頭にはない」と、法務・検察の危機感を否定する。
 特捜部には小沢氏の立件も視野にあるという河上氏は「政治資金規正法違反の罰則は五年以下の禁固と重い。小沢氏を立件しなければ『ゼネコンの金を懐に入れても罪に問われないのか』となりかねず世論は納得しない。検察ファッショとの批判が出る可能性もあるが、田中角栄元首相や金丸信元副総理の逮捕でも検察批判はあった。気にすることはない」と語る。

菅内閣、「政治主導・国民主導」から後退  2010-06-09 
大林宏検事総長決定と「小沢不起訴の代わりに検察人事には手を突っ込まない」というウラ取引 1
“検察の正義”に委ねていいのか? 検察を支配する「悪魔」
被疑者ノート「冤罪 こうして作られる」郵便不正事件 厚労省元局長村木厚子被告の公判で元係長上村勉被告


コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。