性別変更後「元に戻したい」 同一性障害、こんな悩みも
2017/10/29(日) 21:01配信 朝日新聞デジタル
画像;性同一性障害特例法で性別の変更が認められた人の数
自分は性同一性障害だと考えて戸籍上の性別を変えたが、やはり適合できず元に戻したくなった――。性別変更をする人が増えるにつれ、こんな悩みを抱える人が出てきた。再変更は現在の法律では想定されておらず、ハードルは高い。専門家からは「何らかの救済策が必要」との声も出ている。
神奈川県茅ケ崎市の40代元男性は2006年、戸籍上の性別を女性に変えた。それをいま、強く後悔している。家裁に再変更の申し立てを繰り返すが、「訴えを認める理由がない」と退けられ続けている。
幼い頃から吃音(きつおん)に悩んでいた。疎外感を抱いていた00年ごろ、性同一性障害の人たちと交流する機会があった。「自分たちの存在を認めないのはおかしい」と訴える姿がとてもポジティブに映った。「自分も同じ(性同一性障害)だ」と考えるようになり、03年にタイで男性器切除の手術を受けた。
04年に一定の条件を満たせば性別変更が認められる特例法が施行されたため、心療内科を受診。十数回の診察を経て、複数の医師から性同一性障害の診断を受けた。横浜家裁に性別変更を申し立て、06年7月に変更が認められた。
だが、すぐに後悔に襲われた。男性だった時には簡単に見つかった仕事が、女性になってからは断られ続け、性別を変えたためだと感じるようになった。弁護士に再度の性別変更を相談したが、「今の制度では難しい」と言われたという。
最終更新:10/29(日) 22:37 朝日新聞デジタル
◎上記事は[Yahoo!JAPAN ニュース]からの転載・引用です
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特集ワイド
パパは性同一性障害 やっと「普通」の家族に 「嫡出子」認定に4年
毎日新聞2017年8月3日 東京夕刊
性同一性障害のため女性から男性に性別を変更した兵庫県宍粟(しそう)市の前田良さん(35)。2人の息子がそばを離れず、妻が見守る。そんな家族4人をファインダー越しに見つめた。どれほどお互いのことが好きか、あふれる思いが伝わってきた。【川平愛】
「もう1回、もう1回!」。自宅で休日を過ごす前田さんに兄弟がせがむ。次男(5)が、あぐらをかいた前田さんの膝の上に座り、おしりを持ち上げてもらい宙に浮かぶと両手を広げて大はしゃぎ。「僕もー」。長男(7)が飛び込んで来る。「パパもうヘトヘト」。前田さんは何度か頑張って、さすがにギブアップした。
前田さんは女性として生まれたが、幼稚園の頃から心と体の性の違いに苦しんだ。手術を経て25歳の時、性同一性障害特例法(2004年施行)に基づいて戸籍上の性別を変更した。「(男性に)戻った」と感じた。全てを受け入れてくれたあきさん(35)と08年4月に結婚。話し合い、精子提供を受け人工授精で子どもを持とうと決めた。しかし09年11月、長男の出生届を役所に提出すると、前田さんは父親と認められなかった。性別変更が理由だった。
「法律に基づいて性別を変更して正式な夫婦となったのに、なぜ父親と認められないのか」。最初の出生届を取り下げ、12年1月、本籍地を移した東京都新宿区の区役所に出生届を出した。予想通り同じ対応だった。東京で提出したのは、国のお膝元で裁判に臨むつもりだったからだ。
1、2審は申し立てを退けられたが、13年12月、最高裁で父子であることを認める決定が出た。「パパが『パパ』って認められたよ」。長男に伝えると、一緒にジャンプをして喜んでくれた。
「神様が間違えたから、パパは昔、ママと同じ体やったんやで」。一緒にお風呂に入りながら2人の息子に話してきた。そして「世の中にはいろんな人がおる。見た目だけで決めつけたらあかん」と教えている。偏見を持たず、人の気持ちを分かってあげられる人に育ってほしいと願う。
前田さんは10年から講演活動をしている。当初は支援を求めるためだったが、最高裁決定の後は、同性愛者や心と体の性が一致しない人といったLGBTなどと言われる性的少数者への理解を広め、社会を変えていきたいという思いが強くなった。「最高裁決定が終わりではなくスタート」と意気込む。イラストレーターのあきさんに絵を描いてもらい作製した冊子を配り、自身の半生を語る。「愛する人と結婚して、子どもが欲しいと思うのはごく自然なこと」「他の家族と何も変わらない」。講演には可能な限り、家族全員で出向く。
また、14年から毎夏、兵庫県姫路市のギャラリーで、4人の粘土細工やイラストなどを並べる「家族展」を開いている。「ごく普通の家族ということが、作品を通して伝わればうれしい」と願って。
前田さんは体の性を保つため、毎月ホルモン注射を打っている。体調への影響に不安はあるが、「家族は絶対に守るべき大切な宝物。妻と子どもがいるから、元気でいようと思える。ただ一緒にいられるだけで、幸せです」。
*最高裁決定受け全国へ通達 法務省
前田さん夫妻が長男を嫡出子(法律上の夫婦の間に生まれた子)と認めるよう求めた裁判で、最高裁は父子関係を認め、誕生から4年がかりで戸籍の長男の「父」欄に名前が記されることになった。
性同一性障害特例法に基づいて性別を男性に変更した前田さんは、法令上男性であり、正式な婚姻ができる。民法は「妻が婚姻中に妊娠した子は夫の子と推定する」と規定。だが、長男の出生届を受けた新宿区役所側は、戸籍に前田さんの性別変更が分かる記載があり、生物学的な父子関係がないことは明らかで、嫡出の推定は及ばないとした。戸籍の長男の父の欄は空白とされた。
夫妻は戸籍の訂正を求め東京家裁に家事審判を申し立てたが、家裁は「男性としての生殖機能がないことは明らかで、嫡出子とは推定できない」と退け、東京高裁も支持。しかし、最高裁は1、2審の判断を覆した。「性別変更を法律で認めながら、性的関係の結果もうけた子でないことを理由に、(民法の)嫡出推定の適用を認めないのは不当だ」と結論づけた。
最高裁決定を踏まえ法務省は14年1月、性同一性障害のため女性から男性に性別変更した夫とその妻が第三者との人工授精でもうけた子について、戸籍に嫡出子として記載するよう全国の法務局に通達した。
◎上記事は[毎日新聞]からの転載・引用です
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◇ 性的少数者の生徒らを支援へ 文科省が学校向け文書策定
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