日産のゴーン追起訴でフランス当局がいよいよ反撃か? JOC竹田恒和会長を追訴で泥沼化も 2019.1.11

2019-01-11 | 社会

日産のゴーン追起訴でフランス当局がいよいよ反撃か? JOC会長を追訴で泥沼化も
亀井洋志 2019.1.11 19:58 週刊朝日
 手痛いしっぺ返しを食らったのか――。勾留が続く日産自動車のカルロス・ゴーン前会長の母国フランスの検察当局が、日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和会長を汚職に関わった疑いがあるとして訴追するという。2020年東京五輪招致をめぐって、180万ユーロ(約2億3000万円)の贈賄に関わったとされる。
 国家間のこうした意趣返しとも取れる行為は、最近もあったばかり。昨年12月、中国の通信機器大手ファーウェイのCFO(最高財務責任者)が米国の要請でカナダ当局が逮捕すると、中国が大激怒。国内13人のカナダ人を拘束した。再報復として米国は政府機関に対しファーウェイ製品の使用を禁止。日本など同盟国にも呼び掛けた。すると今度は、中国で米アップル社の「iPhone」不買運動が沸騰し、泥沼化している……。
 東京地検特捜部は1月11日、ゴーン前会長を会社法違反(特別背任)の罪で追起訴した。私的取引の損失を日産に付け替えたなどというもの。勾留の長期化を予測する報道もある一方、ゴーン氏は国際世論の喚起に成功したとの見方も広がっている。
「私は無実だ。根拠もなく容疑をかけられ、不当に勾留されている」
 8日、東京地裁で勾留理由を開示する手続きが行われ、ゴーン氏は特別背任事件で身の潔白を訴えた。
 勾留理由開示は、裁判所に対して被疑者・被告人が自らの勾留を認めた理由を説明するよう求めることができる手続きだ。だが、勾留が取り消されることはほとんどないから「やるだけ無駄」と思われているのだろう。
 2017年の勾留状発布件数は10万4529件に上ったが、勾留理由開示が実施されたのはわずか583件だけ。約0・6%に過ぎない。だが、ゴーン氏はこの制度を活用することで大きなメリットを得たようだ。
 元刑事裁判官の安原浩弁護士がこう語る。
 「正当な理由もなしに、いつまでも勾留を続ける日本の司法制度はおかしいじゃないか、ということを世界が注視する中でアピールできたのではないかと思います。裁判官にとっても相当なプレッシャーになるはずです。勾留理由開示は本来、裁判官ができる限り具体的に理由を説明して、それに対する反論を被告人と弁護人にさせます。そのうえで勾留の必要性の有無を裁判官が考え直すというのが、制度の趣旨です」
 だが、多くの場合はそうした趣旨に反して、儀式化してしまっているようだ。今回の法廷でも、多田裕一裁判官は勾留理由を「逃亡や証拠隠滅の恐れがある」と型通りの説明をしただけだった。
 安原氏は「証拠関係を見ていないので断定的なことは言えないが」と前置きしたうえで、こう続けた。
 「逮捕の何カ月も前から、特捜部は日産から資料をすべて提出させ、周到に準備して事件に着手したはずです。いまさら証拠隠滅の可能性なんて、ほとんどあり得ないのではないでしょうか。保釈にあたって、パスポートを預かることにすれば、海外逃亡も防止できます」
 自白をしない限り身柄を拘束し続ける日本の捜査手法は「人質司法」と呼ばれ、国内外で批判されてきた。容疑を否認していると、いつまで経っても保釈が認められない。被告人の無実の訴えは裁判所に届かず、冤罪の温床になっている。勾留が長期間に及べば、会社をクビになったり、家庭崩壊したりすることにもつながる。多くのケースで被告人は根負けして、ウソの自白をさせられてしまう。そして起訴されれば、99・9%が有罪になる。日本の刑事司法は、いまだに前近代的な“お白洲”も同然なのだ。
 だが、近年になって変化の兆しもある。裁判所が検察の勾留請求を却下するケースが増えているのだ。全国の裁判所の却下率は05年の0・47%から、17年には4・91%まで上がってきている。14年の最高裁決定も勾留の濫用に警鐘を鳴らすものだった。
 前出・安原氏が指摘する。
「ゴーン氏の場合も初めから否認して争うという姿勢なのだから、保釈させないで自白を得るという捜査手法は邪道です。特捜部は証拠を固めているのなら、自信を持ってスマートにやればいいと思うのですが……。それなのに再逮捕と勾留延長をくり返して、これからまだ何か新しい事実が出てくるかのようなポーズを取っているように見えます」
 特捜部の捜査がどうにもスマートではないのは、やはり事件が“無理筋”だからなのか。
 会社法違反(特別背任)の逮捕容疑は二つある。
(1)2008年10月、ゴーン氏が自分の資産管理会社が保有する通貨デリバティブ(金融派生商品)で生じた約18億5千万円の評価損を日産に付け替えた。
(2)この契約を自分に戻す際、約30億円分の借用保証に協力したサウジアラビアの実業家ハリド・ジュファリ氏に対し、日産の子会社から1470万ドル(約16億円)を送金させた、というものだ。
 ゴーン氏は法廷で次のように主張した。
 08年のリーマンショックで急激な円高となり、通貨デリバティブに18億5千万円の評価損が発生し、契約先の新生銀行から追加担保を求められたと説明。「一時的に日産に担保を提供してもらうことを選んだ」と述べ、「日産に一切、損害を与えていない」と強調した。
 ジュファリ氏については「長年の日産の支援者」と語り、「日産とサウジアラビアの代理店との紛争解決や、日産の工場建設実現のため支援してくれた」などと業務の正当な対価だったと主張している。
 元特捜検事の郷原信郎弁護士が指摘する。
 「ゴーン氏は評価損を一時的に日産の信用の下に置いただけです。ゴーン氏と日産、銀行の三者間で『日産には金銭的な損失を負わせない』という文書まで交わして合意しています。実際に日産に損失を与えないように、ゴーン氏が引き取って清算しています。結果的に何も損失が生じていないのに、特別背任が適用できるわけがない。そんな事例は過去にもありません」
 しかも、資金提供を受けたとされるジュファリ氏に対して、特捜部は事情聴取さえ行っていないのだ。
 郷原氏が呆れながら言う。
 「論外です。直接、当事者本人から支払いを受けた理由を確認しなければ、資金提供が不正なものだったのかどうか評価などできないはずです。いま、ゴーン氏が証拠隠滅するとすれば、その相手はジュファリ氏だけですが、検察官が調べてもいないのだから証拠に該当しません」
 ゴーン氏はいつになったら、保釈されるのか。
 日産の現経営陣は検察に情報を提供し、ゴーン氏追い落としを図ったとされる。だが、社内クーデターに乗った形の検察は本当にゴーン氏を罪に問えるのだろうか。無罪となった場合、しっぺ返しはとてつもなくおおきなものになるだろう。(本誌・亀井洋志)
 ※週刊朝日オンライン限定記事

 ◎上記事は[dot. ]からの転載・引用です
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〈来栖の独白 2019.1.11 Fri〉
 竹田恒和会長を汚職の疑いで訴追するのが「フランス」との報道に接し、瞬間的にゴーン氏逮捕の意趣返しか、と思った私。直ぐに、まさか国家間でそんなこと(意趣返し)はあり得ないだろうと打ち消したが…。
 人質司法の件もあり、日本の司法・行刑が注目されている。無罪にでもなれば、エライコト。この国は立ちゆかないのでは…、とさえ危機感が…。
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