【書評】百田尚樹著『カエルの楽園』 2016.6.19

2016-06-19 | 本/演劇…など

2016.6.19 09:20更新
【書評】百田尚樹氏が「私の最高傑作」と言い切る護憲メディア黙殺の快著 『カエルの楽園』
 ダルマガエルの侵略によって国を失い、安住の地を求めて世界を放浪するアマガエルたち。世界は危険に満ちていた。次々と仲間を失いながらソクラテスとロベルトは、ツチガエルの暮らすナパージュ国という平和な国にたどりつく…。本書は危険に満ちた世界で平和を保っていたナパージュ国が、ウシガエルの侵略を受けて滅亡していくさまをソクラテスとロベルトという「難民=第三者」の目を通して描いた物語である。読者は「カエルを信じろ、カエルと争うな、争う力をもつな」との「三戒」を守ろうとするツチガエルの言動を滑稽でとてつもなく異様だと感じることだろう。だがその言動は、現在の日本で違和感なく受け止められている護憲勢力の言動と寸分違わないのである。
 本書を書くにあたり、著者はひとりでも多くの日本人に読んでもらおうと、自分の主義主張と作家としての個性を抑制し、フラットかつ平易に筆を運ぼうと努めている。それこそが物語に普遍性を与えると考えたからだろう。『永遠の0』や『海賊とよばれた男』で高い評価を得た著者にとってとてつもないチャレンジだったに違いない。文章を書く者なら実感できるだろうが、「だ」調を「ます」調に変えるだけでも大変なのだから。相当な覚悟だ。だからこそ本書を書き終えた著者は「これは私の最高傑作だ」と言い切るのだ。
 果たして、本書は中学生からお年寄りまで幅広く受け入れられ、それまで「当たり前」と考えていた日本の安全保障のあり方や日本人の思考様式に対する気付きのきっかけとなっている。おまけに護憲勢力を自任するメディアが「黙殺」という言論封殺を平然とやってのけることを白日の下にさらした。著者は『月刊Hanada』6月号に次のように書いている。「これだけ評判が良い一方で、新聞や雑誌には書評や紹介が一切出ません(中略)もしかしたら、マスコミにとっては紹介したくない本なのかもしれません」
 15日未明、中国軍艦1隻が鹿児島県の口永良部島周辺の領海に侵入した。(新潮社・1300円+税)
 評・桑原聡(文化部編集委員)

 ◎上記事は[産経新聞]からの転載・引用です
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TOCANA > 百田尚樹とはすみとしこが意気投合
百田尚樹の改憲扇動小説『カエルの楽園』の安易さがスゴい! はすみとしこ大絶賛でネトウヨ同士意気投合(笑)
2016.04.03.【本と雑誌のニュースサイトリテラより】
「これほどの手応えは『永遠の0』『海賊とよばれた男』以来、これは私の最高傑作だ」(帯文より)
 ──2月末、あの百田尚樹氏がこのように胸を張る新作小説を発売した。タイトルは『カエルの楽園』(新潮社)。昨年10月から自身のブロマガ「百田尚樹のテレビでは伝えられない話」で連載していたものをまとめた一冊なのだが、出版社による惹句には、〈大衆社会の本質を衝いた、G・オーウェル以来の寓話的「警世の書」〉とまである。
 恐怖政治と全体主義を描いたジョージ・オーウェルの小説は、「まるで安倍政権の未来を描いているよう」と多くの人が指摘してきたが、まさか安倍応援団の百田氏がオーウェルを引き合いに出すとは笑止千万。しかも、特攻隊を美化しまくった歴史修正小説と同じ最高傑作と言われたら、この『カエルの楽園』がいかほどのものなのか程度が知れるというものだが、恐ろしいことにこれがいま、売れているのだという。『殉愛』騒動によって、なけなしの信頼も底をついたと思いきや、酔狂な読者も多いらしい。
 一体、百田センセイは今度は何を訴えようとしているのか。ものは試しで読んでみた。
 すると、たしかにすごかった。悪意と憎悪の満ち方が。
 小説は248ページも費やしているが、物語はいたって単純だ。主人公は、カエル喰いのダルマガエルに土地を奪われたアマガエルで、この2匹が辿り着いたのは、ツチガエルの国・ナパージュ。ナパージュの崖の下には「気持ちの悪い沼」があり、そこには「あらゆるカエルを飲みこむ巨大で凶悪な」ウシガエルが住んでいて、時折、崖を登ってきたり、ナパージュの土地を自分たちの土地だと言い張り上陸してくるが、ナパージュのカエルたちは「三戒」のおかげで平和が守られていると信じている。その「三戒」とは、「一.カエルを信じろ。二.カエルと争うな。三.争うための力を持つな」……。
 なんのひねりもないのでみなさんすでにおわかりかと思うが、ナパージュはJapanの逆さ読み。つまり、ナパージュ=日本、ツチガエルは日本人(以下、ややこしいので日本人ガエルとする)。無論、「三戒」は憲法9条で、凶悪なウシガエルは中国や韓国、北朝鮮を指している。
 そして、この安易すぎる設定を使って百田氏が終始強調するのは、日本人ガエルたちが信念とする平和主義の“愚かさ”だ。たとえば、日本人ガエルたちがこぞって歌う「謝りソング」というものがある。
〈我々は、生まれながらに罪深きカエル すべての罪は、我らにあり さあ、今こそみんなで謝ろう〉
 これは極右たちが攻撃する「自虐史観」というやつの暗喩なのだろうが、それにしても「謝りソング」って……。しかも、日本人ガエルは過去にウシガエルを虐殺し、その場所に花を手向けているが、「誰がやったの?」と訊かれても当の日本人ガエルは「よく知らないわ」。日本人ガエルは「昔のことになると、知らないことばかり」で、誰に何を謝っているのか、わからないまま謝り続けている滑稽なカエルとして描かれる。こうした平和主義を喧伝してきた長老はデイブレイクというが、これは朝日新聞でも指しているのだろう。
 そうしたなかで登場するのが、一匹狼(一匹カエル?)として洞穴に住み、主人公に真実を語る「嫌われもの」の日本人カエル・ハンドレッド。またしてもひねりがないが、ハンドレッドとは百田自身のことだろう。実際、ハンドレッドの説明は、いつもの百田節全開である。
 この百田ガエル・ハンドレッドは、日本人ガエルの虐殺をこう否定する。
「ウシガエルたちが方々で言いまくっていることだ。今では世界中に広まっている」
 「ウシガエルの奴らは根っからの嘘つきだ」
 「その嘘を広めたのはデイブレイク(=朝日新聞)だ」
 「デイブレイクはナパージュ(=日本)の悪口が大好きなカエルなんだ。ナパージュのカエルを貶めるためなら、どんな嘘だってつく」
 童話調になっても中韓ヘイト、朝日ディスを繰り返す歴史修正ガエル。この百田ガエルの話を聞いた主人公に「(百田ガエルが)嘘をついてこの国を貶める理由がないし、何の得もない」と肯定させているあたりも、じつにハンドレッド先生らしい。
 で、もうどうでもいいかもしれないが、このあとの物語を一応紹介しておくと、愚かな日本人ガエルたちは「三戒」(=9条)を守っているために平和が続いてきたと信じているが、実態はスチームボートという名のタカ(いわずもがなアメリカなのだろう)が守ってくれていただけ。そんなナパージュの国に、二匹のウシガエルが上陸。危機感が強まるなか、元老のカエル・プロメテウスがタカに崖を見張ってほしいと頼みに行くと言い出す。が、タカには“ツチガエルも一緒に戦え”と迫られる。──そう、このプロメテウスが安倍首相、見張りの依頼が安保法制、というわけだ。
 もちろん、プロメテウス=安倍ガエルは、9条信者ガエルや朝日新聞ガエルと対比的に、じつに現実路線の聡明なカエルとして描かれる。といっても、対話を求める日本人ガエルに対して安倍ガエルが主張するのは「話し合いですって? 相手は凶悪なウシガエルですよ」という、美化しても実際の安倍首相と大して差のない中身スカスカのことしか言えないのだが。
 そんななか9条信者ガエルたちは「三戒違反だ!」と反発し、さらには「プロメテウスの横暴を止めます。仲間たちと一緒に頑張っていきます」と若者ガエルの集団・フラワーズ(=SEALDs)までもが登場。当然ながらここでも百田氏はSEALDsガエルたちを〈いずれもオタマジャクシからカエルになったばかりの若いカエルたちで、お尻にシッポが残ったままです〉と説明するなど、稚拙な集団であることを強調して描くという悪意を見せている。
 そしてここからの展開が、百田氏が描きたかった本題なのだろう。現実とは違い、安保法制は民衆の猛反対により否決されるのだが、その結果、ナパージュにウシガエルが上陸。また、ついにはタカ(=アメリカ)が見張らなくなった地域(沖縄か?)をウシガエルたちが占拠するのだ(無論、ウシガエルに適応されるであろう個別的自衛権は、この物語には存在しない。というか、ふれない)。ここで現れるのはもちろん安倍ガエルで、毅然と「三戒を破棄することを提案します」と述べる。現実さながらの憲法改正、しかも9条撤廃案である。
 だが、日本人ガエルたちは不戦を掲げ、三戒放棄案を否決。自衛隊ガエルは目を潰され腕を切り取れ、日本人カエルたちは平和が守られたと大歓喜。でも、その最中にもウシガエルによる日本人ガエルの大殺戮がおき、あっという間に国中をウシガエルが占拠。ナパージュ=日本は亡びたとさ。……おしまい。
「なるほど。平和主義者たちが叫ぶ『9条を守れ』の声をのさばらせておくのはこんなにコワイ結果を招くのか!」などという、そういう感想が出ることを期待して百田氏は本作を書いたのだろうが、これ、たんなる百田氏およびネトウヨの妄想ではないか。実際、「そうだ難民しよう」イラストで一躍ヘイト有名人となったはすみとしこ氏は、ツイッターで百田氏にこんなメッセージを送っていた。
〈今日届き、数時間で読破いたしました!読みやすい!わかりやすい!問題提起様々、いろいろ考えさせられる作品でした。どの段階ならカエルの国を守れたのだろうかとか。。難しいです。ぜひ若い子に読んで頂きたい秀本だと思います!九条はカルトだ!〉
 これに対して百田氏は〈初めまして、百田です。お読みいただき、ありがとうございました。『そうだ難民しよう』を拝読して、是非、はすみさんに読んでいただきたいと思っていました。感想ツィートも感謝です!〉と返事をしているが、このやりとりからもわかるように、ネトウヨ感性を持ち合わせていないかぎり、到底読書に耐えられるシロモノではない。
 小説としても会話文ばかりでディテールと呼べるものは何もなく、あるのは“安保法反対派をぶっ潰してやりたい”“9条こそ害悪”という憎悪だけ。「ラノベ以下」という評価もあるが、それを言ったらラノベに失礼である。こんな低次元の妄想文章が「最高傑作」とは、百田氏も相当焼きがまわっているようだ。
  ただ、この駄作を読んで間違いなく言えることは、百田氏の目にはよほど安保反対デモの勢いが脅威に映っていた、ということ。そしてそれは、安倍首相も同じはず。ようするに、本格的な憲法改正議論を前に、安倍首相のバックアップのため寓話調の物語で味方を増やそうという百田氏の魂胆が見え見えなのだが、このようなプロパガンダ小説が売れてしまっている、という事実は、無視できない現実だろう。
 (大方 草)

 ◎上記事は[TOCANA]からの転載・引用です


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