〈来栖の独白 2016.4.9 〉
初公判から判決までの本件報道で、必ず指摘されてきたことは
決め手となる物証がない
という一事である。どのメディアも「決め手となる物証がない」と云って、自白の信用性に話が移る。
「決め手となる物証がない」ことについて、立ち止まって考えてみる。
勝又拓哉被告が当該犯行を行っただろう、というのが私の心証である。物証が無いという事実は、かくも巧妙、周到に証拠隠滅を成し遂げた、という風に映る。ただ、隠滅の完璧度という意味では、遺体についた猫の毛は、やや気になるが・・・。そして、公判中法廷で流されたビデオに見られる、検察官の誘導で自白してみたり、「もうこれ以上は無理」と押し黙ったりと揺れ動く被告人の姿は、隠滅行為と通底する。あくまでも、私の心証である。
無論、よく(必ず)言われることだが、自白を強要してはならない。そして可視化についても、真実を探るためのものでなければならない。偏って使われてはならない。
肝要なのは量刑ではなく、人が人として真っ当に生きることだ。このことを安田好弘弁護士は光市事件の記者会見で次のように云っている。
「真実を明らかにすることで初めて被告の本当の反省と贖罪が生み出される」。
日弁連は昨年、「死刑求刑が予想される事件『取り調べは原則黙秘』」という声明を出したが。
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◇ 今市吉田有希ちゃん殺害事件 勝又拓哉被告 第3回公判2016/3/2 証人尋問…遺体についた猫の毛
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◇ 今市女児殺害 第9回公判2016/3/11取調べ映像 勝又拓哉被告「これ以上無理」 検察官「墓場まで持って行け」
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◇ 光市事件 死刑判決で弁護団記者会見2008.4.22 真実を明らかにすることで被告の本当の反省と贖罪が…
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◇ 死刑求刑が予想される事件「取り調べは原則黙秘」…死刑弁護の手引が波紋 2015/10
【栃木・今市女児殺害】“もろ刃の剣”の取り調べ録音・録画 可視化時代の審理への課題に
2016/04/09/ 07:44 産経新聞
勝又拓哉被告に無期懲役を言い渡した宇都宮地裁の裁判員裁判判決は、車の走行記録や遺体の付着物などの状況証拠を慎重に検討した上で、殺害などに関する被告の自白に「具体性、迫真性がある」として被告の無罪主張を退けた。
決め手となる物証がない中で、検察側は被告と犯人を結び付ける事情を多角的に示そうとしたが、状況証拠による立証に課されたハードルは高い。
最高裁は平成22年4月、大阪母子殺害放火事件をめぐる判決で、状況証拠による立証では「被告が犯人でなければ説明できない事実関係が認定できることが必要」との基準を示した。地裁判決はこれを踏まえ、車の走行記録や遺体に付着した猫の毛などは被告が犯人である可能性を示すものの、犯人と認定することまではできないと判断した。
ハードルを越えるために地裁判決がよりどころとしたのが、自白だ。裁判員らは7時間超に及ぶ取り調べの録音・録画の再生にも向き合った。「被告が処罰について強い関心を示していた」「自白すべきか否かについて逡巡、葛藤している様子がうかがえる」。被告の供述態度をつぶさに検討した判決からは、録音・録画が検察側立証の武器となったことが読み取れた。
一方で、映像を長時間再生する審理が裁判員に及ぼす影響や、負担を懸念する声もある。“もろ刃の剣”ともなり得る録音・録画をどう活用するのか。可視化時代の審理への課題を投げかけている。(豊嶋茉莉)
◎上記事は[goo ニュース]からの転載・引用です
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