中日春秋
2007年11月6日
そうなりたいわけでは決してないが、最近、われわれは「偽装」に慣れっこになっている。ビルの耐震構造や食品、政治家の領収書など、あれもそうか、これもそうだったのか、と
▼それでもなお、民主党の小沢代表の発言には驚かされた。突然の辞意表明自体もそうだけれど、記者会見で、自らが率いてきた民主党をこう評したからだ。「政権担当能力が本当にあるのか。あらゆる面でいま一歩だ」
▼たとえば、先の参院選前に民主党が発表したマニフェスト。冒頭で小沢さんは熱く国民に呼びかけている。その一節。<日本を「まともな国」にしよう。そのためには、この参議院選挙で与野党逆転を成しとげ、政権交代を実現させる。私たち民主党が政権を担う。それ以外に、今の日本を救う道はない>
▼本当は能力に疑問を感じていたのに、あたかも立派に政権を担えるかのように喧伝(けんでん)していたのだとすれば、それは偽装であろう。それとも<与野党逆転を成しとげ>のくだりの後に<ひとまず、自民党と連立政権をつくったうえで>という文言を入れ忘れただけなのだろうか
▼会見では、ほかにも「(民主党の)次期衆院選での勝利は厳しい」と言ってみたり、唐突な連立話に役員が反対したからといって、それを「不信任だ」と決めつけてみたり。福田首相との「密室会談」に始まる最近の小沢さんの行動や発言は不思議にすぎる
▼もっとも、そこまで言った人の慰留に血道をあげる民主党幹部も不思議である。他に人がいないというのなら、それこそ党の「能力」も疑われよう。