「凶悪犯罪」とは何か 光市裁判、木曽川・長良川裁判とメルトダウンする司法 裁判の重罰傾向について

2007-11-05 | 光市母子殺害事件

『2006 年報・死刑廃止』特集“光市裁判 なぜテレビは死刑を求めるのか”
「凶悪犯罪」とは何か 光市裁判、木曽川・長良川裁判とメルトダウンする司法

司会 メディアによる凶悪キャンペーン、司法の暴走についてお話いただいたのですが、こうしたことをふまえて最近、重罰化傾向が進んでいます。そして確定死刑囚が20年前25人だったのが、現在87人まで増えていますね。

村上 たしかにここ2,3年、死刑判決はものすごく増えていまして、死刑の判決の数が、永山最高裁判決以降、最高に達しております。2003年は1,2審で30件死刑判決がありまして(最高裁判決はゼロ)、2004年が42人(1,2,3審判決)、2005年が昨年の42人に告ぐ38人という多さになっている次第です。10年前はどうかというと、死刑判決が1996年には8人(1,2,3審判決)ですね。1997年以降、急激に増えて、その傾向が現在まで続いているのですね。
 その原因は何かということなんですけど、一方で、少年が凶悪犯化している、少年による殺人事件が多くなっているとよくマスコミは言いますけど、統計を見ますと、全然増えていないんですよね。だから今、『犯罪白書』を見ますと、統計的には殺人事件のほか、あと死刑が適用されるような犯罪は減っている。しかし警察の発表では体感治安は悪いとか言っている。これは基本的に先ほどからも話題になったマスコミの報道の仕方に原因があるんだと思うんです。
 去年12月6日、7日と日弁連で「人権と死刑を考える国際リーダーシップ会議」というのがありまして、そこでドイツのクリスチャン・プファイファーさん(ニーダーザクセン犯罪学研究所長、元ニーダーザクセン州司法大臣)という方が、日本のことについて、殺人被害者数も減少しているし、死刑が適用される可能性のある犯罪も減少している、しかし、死刑確定者は非常に増えてきているのはマスメディアの方針の変更があったからだろう、常に事件報道をして、それを見ている将来被害者になるかもしれない幸せな家庭の方たちが、それにすごく怯える、警戒するというような状態が繰り返されているんじゃないかとおっしゃっていました。そうしますと、、このような流れの中でマスメディアに非常に検察、裁判所が敏感になっていて、それで死刑判決が増えているということになると、こんなことが許されるのか、というのが正直僕の実感ですね。
 実際に、今の死刑判決の傾向なんですけど、やはり1997年から増えているというのは検察が巻き返しを図り、5事件に対して死刑を求めた上告をしたのが1997年ですね。この頃から検察は、検察一覧表という「永山判決以後死刑の科刑を是認した最高裁判所の判例一覧表」を裁判に出すんですね。それを見ますと、1人を殺害した場合も死刑になっているし、2人殺害した場合も死刑になっている。死刑で確定したケースばかり出してきてますから、我々弁護人にすれば、もう自分の担当する事件は死刑だ、これはアカンというようなイメージを持つ。同様に裁判所もそれにミスリーディングされてるんじゃないかということを感じることがあります。このように1997年から検察の巻き返しがあった。そしてまた報道のあり方、被害者遺族の方の意見が出てきている。だから死刑判決はそれに乗っかって増えている、というのが今、僕の感じている分析です。

司会 97年のときに『年報・死刑廃止』で「暴走する検察庁5件連続上告を考える」(98年版、平川宗信・村岡啓一・安田好弘)という座談会をやりました。あのなかで97,98年の検察上告の5人とも無期に戻さなければということを言っていますが、1人だけ死刑が確定してしまったわけです。このことはその後、どう影響していますか。

村上 1人だけ破棄差し戻しされたんですよ。今までは、高裁で無期だったのを最高裁で破棄差し戻しするというのは、著しく正義に反しない限りは絶対にしないんです。最高裁はこの高裁の判決が無期判決で、まぁ死刑でもいいなと思っても、これは破棄しなければ正義に反すると言えない限りはそのまま上告を棄却しなくちゃいけない。正義に反するから破棄差し戻しするというのは今まで永山最高裁判決と上告5事件の広島の事件しかないんですよ。広島での事件は、強盗殺人で人を殺害し無期懲役になり、仮出獄中にまた同じ強盗殺人をやったということで、今までの裁判例の中でもやっぱり死刑なんですね。その死刑の是非は別にして、今までの裁判例の中でも上告、破棄差し戻しするときは裁判所は非常に悩みながら、それなりに理由を書いて破棄差し戻ししてきたんですよ。


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