土浦連続殺傷事件 相談できる家族や友達が傍らにいても、彼は事件を起こしたのだろうか

2009-12-22 | 死刑/重刑/生命犯
’09記者ノート:土浦連続殺傷事件被告に死刑判決 虚像の暴走、止めるカギ /茨城
毎日新聞12月22日朝刊
 18日、土浦市のJR荒川沖駅周辺で起きた9人連続殺傷事件の水戸地裁判決で「死刑」が言い渡された瞬間、金川真大(まさひろ)被告(26)は、望み通りの判決にもかかわらず、ほとんと表情を変えず、証言台に立ったままだった。人ごとのような反応を見せる姿を傍聴席で見ながら、面会の時の会話を思い出した。
 11月、水戸拘置支所。金川被告はアクリル板越しに「死刑は怖くない」と笑みを浮かべた。「自殺は痛いから」事件を起こしたと主張していたのに、なぜ死刑は怖くないのか疑問に感じ、「死刑囚はある日突然執行を告げられる。一日一日が怖くないか」と突っ込んで尋ねた。「別に」。無表情でぶっきらぼうな答えが返ってきた。
 金川被告の死刑願望に至る論理は、法廷でも面会の場でも一貫している。「世の中に善悪はない」と独特の考え方を展開し、自身を「世の中の真理を悟った人間」と人の気持ちに関心を示さない。しかし、自身が作り出した虚像を演じているのではないか。金川被告の言葉は本音をごまかしているように聞こえてならなかった。
 その本音が垣間見えたのは、今年5月に金川被告が元自衛官である中学時代の友人に送った手紙の内容だ。
 <たのめば銃をコッソリ持ち出してきてくれたかな。銃さえあれば殺人することなく自殺できたのに…>
 手紙を受け取った友人は「自殺したかったのは確かだろうけど、殺人はやりたくなかったのでは」と金川被告の真意を解説する。
 金川被告は「つまらない世界で生きるなら死んだ方がいい」という自殺願望から「死刑を利用したかった」と論理が飛躍する。常識では理解しがたい発想で、裁判や精神鑑定が解明できたとは言い難い。自殺を望む人間がみな殺人を考えるわけではないだろう。ただ、根底にあった自殺願望を周りがどう受け止めたか、その時の対応が被告の暴走を防ぐ鍵だったように思える。
 金川被告は高校3年生ごろから友人に「死にたい」と漏らすようになった。妹の不登校をきっかけに家族関係が悪化し、卒業後はアルバイトと引きこもりを繰り返し、友達と疎遠になっていった。
 父親は放任主義で「口出しをしなくても家族は自分なりに解決してくれると思っていた」と突き放した。引きこもり生活を繰り返す子供への正しい向き合い方だったのだろうか。
 無表情の金川被告を見るたびに、先述の友人の言葉が頭をよぎる。「相談できる家族や友達が傍らにいても、彼は事件を起こしたのだろうか」【原田啓之】12月22日朝刊
土浦8人殺傷事件  金川真大被告の判決公判 死刑言い渡し
土浦8人殺傷事件公判 金川被告の父親に対する証人尋問
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「死刑で然るべきだと思います」と「人の道に外れたのなら、どうか天罰を下してやってください」との間

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