「人権外交」強化するトランプ政権<米国人の4人に1人が福音派>…ウイグル自治区トップの制裁視野

2018-08-18 | 国際

産経ニュース  2018.8.17 08:00更新
【アメリカを読む】「人権外交」強化するトランプ政権 ウイグル自治区トップの制裁視野…対中貿易交渉のテコに?
 イスラム教徒のテロやヒスパニック(中南米系)の不法移民に対する強硬姿勢が目立つトランプ米政権が「人権外交」を強化している。最大の標的は中国だ。信教の自由を尊重し、イスラム教徒の少数民族ウイグル族やチベット仏教徒への弾圧を中止するよう習近平体制に圧力をかけ、新疆ウイグル自治区トップへの制裁も視野に入れていると伝えられている。
 世界各国に信教の自由の尊重を求める外交を主導するのは、カトリックから福音派に転じた敬虔なキリスト教徒であるペンス副大統領だ。メディアのインタビューに「信教の自由は私個人にとっても、トランプ大統領にとっても非常に重要だ」と述べ、信教の自由に関する働きかけを米政権の最優先課題とする姿勢を明確にしている。
 ペンス氏は7月26日、国務省が開いた信教の自由に関する国際会議にも出席し、「悲しいことだが、中国によって数十万人、おそらく数百万人ものウイグル族のイスラム教徒が『再教育収容所』に入れられ、彼らは政治的な洗脳に耐えている」と述べた。
 米政府は、中国がテロ対策の名目でイスラム教徒に大規模な弾圧を加えているとみている。5月に発表した信教の自由に関する2017年版報告書では、習国家主席への権力集中が進んだ昨年10月の党大会前から宗教活動への締め付けが強まったと指摘した。ポンペオ国務長官は中国を北朝鮮やイランなどとともに信教の自由を著しく侵害している「特定懸念国」に引き続き指定している。
 こうしたトランプ政権の姿勢に、中国外務省は同国内で信教の自由は保護されていると主張するとともに、「宗教の問題を利用して内政干渉することを止める」(華春瑩報道官)ことを求めている。
 新疆ウイグル自治区トップへの制裁は、米政府系「ラジオ・フリー・アジア(RFA)」記者6人の家族らが拘束されていることが判明したのを受け、国務省で検討されているとみられる。AP通信によると、ストーン国務次官補代理代行は4月、ペンス氏と同様に数十万人が拘束されているとの見方を示し、弾圧に関わった当局者に制裁を科す可能性に言及した。
 米紙ワシントン・ポストによると、米政府内では陳全国・新疆ウイグル自治区党委書記を標的にした制裁が検討されている。陳氏は習氏への強い忠誠を示していることで知られる。
 米政権が6月、国連人権理事会からの離脱を発表したのも、中国など米国が国民の人権を尊重していないとみる国が理事国の座を占めているからだ。ヘイリー国連大使は離脱に当たって、人権理が世界で人権を守るという本来の目的を果たせておらず、「人権侵害国の保護者で、政治的偏向の汚水だめ」になっていると批判した。
 トランプ氏は歴代大統領による他国への干渉を批判し、人権問題への取り組みにも消極的とみられてきた。ここへ来て、人権を前面に打ち出す外交を展開しているのは、中国との「貿易戦争」への勝利や、トランプ氏や共和党の支持基盤であるキリスト教福音派の集票力を意識したものであるとの見方がある。
 同紙によると、米政府機関の「国際宗教自由委員会」の委員を務め、トランプ氏に対する福音派の助言グループの一人であるジョニー・ムーア氏は同紙に対し、信教の自由の尊重を求めることは、中国との貿易交渉を行う米国にとって、「極めて大きい交渉上のテコになる」と述べた。
 米国人の4人に1人が福音派とされ、同派に属する白人のうち8割がトランプ氏を支持しているという調査結果もある。トランプ氏によるイスラエルの首都をエルサレムの首都と認定する判断も、福音派が求めてきたことが大きい。また、米朝首脳会談を前に、福音派系団体が設立した平壌科学技術大の職員ら3人を解放させ、米政権は信教の自由に敏感な福音派の主張を尊重する姿勢が目立つ。
 「自由」を広める外交は米国の伝統に沿ったものだが、貿易などの外交課題との取引材料にされた場合には、他国の人権侵害が見過ごされかねないという危険性もはらむ。
(ワシントン 加納宏幸)

 ◎上記事は[産経新聞]からの転載・引用です *強調(=太字)は来栖
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