ゾルゲ事件 研究深化

2023-07-27 | 文化 思索 社会
ゾルゲ事件 研究深化 
  愛知大文庫開設を計画 寄贈資料すでに1000点  
 中日新聞夕刊 2023年7月27日
 第二次大戦中に日本の政治や軍事の機密が旧ソ連にもれたゾルゲ事件について、愛知大(名古屋市)の鈴木規夫教授(国際関係論)が関連資料の文庫をつくり、一般公開する計画を進めている。資料の散逸を防ぐとともに、この問題の研究拠点を作ることが狙い。鈴木教授によると、事件の資料を専門に扱う文庫の設置は国内で初めて。 (林啓太)
 鈴木教授は、ゾルゲがソ連に送った電信など、一次史料に基づき事件の真相を追ってきた。欧米では、最近もゾルゲの伝記が出るなど事件への関心は高い。ロシアではウクライナ侵攻を背景に、ゾルゲを「愛国者」としてたたえる動きが盛んだ。
 新設される文庫の仮称は「尾崎=ゾルゲ研究文庫」。ゾルゲの協力者だった尾崎秀実(1901~44年)の資料も併せて収集する。同大豊橋キャンパス(愛知県豊橋市)の人文社会学研究所に設置し、研究者らの寄贈する資料が中心となる見通し。すでに事件の関係者への聞き書きの文書など、約千点が寄せられた。
 資料には書籍化されていないものも含まれる。「日本でも若い研究者らが事件についての情報を調べやすくし、関心を呼び起こしたい」と鈴木教授。一部は、インターネット上でも公開する方針。
 鈴木教授によると、愛知大は、もともと、ゾルゲ事件と、浅からぬ縁がある。大学の前身は戦前の中国・上海にあった東亜同文書院。学生らの有志は、新聞記者として1920~30年代に同地にいた尾崎を講師に社会問題などを学んだ。
 日露歴史研究センターの元事務局長で手元の資料約三百冊を寄贈した川田博史さん(79)=川崎市=は「事件の研究は、新資料などを基に新しい時代を迎えている。寄贈した資料が下支えになれば」と期待を寄せる。鈴木教授は「ネットで海外からも文庫の資料を活用できる。研究者の国際ネットワークの一翼を担いたい」と話している。

ゾルゲ事件
 ドイツの新聞記者リヒャルト・ゾルゲ(1895~1944)の諜報活動をめぐる事件。ゾルゲは、在日ドイツ大使館を拠点に1930年代から日本の軍事戦略の秘密情報を集め、旧ソ連に通報。協力者で近衛文麿内閣の嘱託だった尾崎秀実(01~44年)とともに41年に摘発され、死刑に処された。

 ◎上記事は[中日新聞]からの転載・引用、及び書き写し(=来栖)です


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