2年ぶりの演劇鑑賞
さる3月6日と7日の両夜、《2017年度九州大学演劇部後期定期公演》を観に行った。会場は「甘棠館Show劇場」(福岡市中央区唐人町商店街内)であり、以下の(a) (b)2つが上演された。筆者にとってはほぼ2年ぶりの観劇であり、九州大学演劇部(伊都キャンパス)特有の“高い精神性に支えられた舞台”を堪能することができた。
(a)3/6『散歩する侵略者』(作:前川知大/演出:久保文恵)
(b)3/7『いちごをたべたい』(作・演出:大野奈美)
それぞれの《鑑賞文》は次回以降に譲るとして、今回は(a)の観劇に際しての筆者の「事前準備」について述べてみたい。
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日本アカデミー賞と『映画:散歩する侵略者』
3月2日、《第41回日本アカデミー賞》の授賞式が行われた。この発表についてはテレビで放映されたようだが、筆者は観ていない。この十数年、賞の結果については「アワード」等のネットで確認している。
それによると、今回の舞台と同名の『散歩する侵略者』が黒沢清監督によって〈優秀監督賞〉を、またヒロインとして加瀬真治の妻・鳴海を演じた長澤まさみさんが〈優秀主演女優賞〉を受賞した。
だが筆者は、劇作家前川知大(ともひろ)氏も黒沢清監督も、名前を知っているという程度でしかない。というのもこの15、6年、邦画・洋画を問わず映画館での映画鑑賞などまったくなかったからだ。となれば必然、当代の人気脚本家や監督等に関する知識はゼロに等しい。
そこで筆者はいつものように、観劇に際しての〈傾向と対策〉に着手した。それは演目をはじめ、原作者や脚本家さらには演出家等の名前をヒントに、ネット検索をすることを意味する。特に今回のように「10人もの登場人物」ともなれば、事前の〈人物整理〉すなわち〈人物個々のキャラクターやそれら人物相互の関係把握〉が絶対に必要となる。そのためにも最低限の情報を得たいと思った。
しかも「演劇鑑賞」を書くとなれば〈予習〉は不可欠であり、〈舞台進行〉における〈フラッシュ暗算化〉に陥らないための予防策ともいえる。例えば、登場人物が4、5名程度で「場面転換」が緩やかな舞台は、〈1桁の数字がゆっくりフラッシュする〉……というイメージだろうか。「5…+…8…+…7…+…3…+…4…」といった計算式を想い描いていただきたい。
だが「10名もの人物が登場するうえ、場面転換が多い舞台」ともなれば、〈2桁の数字が結構な速さでフラッシュする〉……。「75+39+51+49+82+……」と。これに「物語」の展開が速く、しかも過去と現在、現在と未来とが行き来する舞台と来ればフラッシュはいっそう速く、その数字も2桁ではすまないだろう。
あえて数字を誇張するなら……「85+359-44+623-71+20-372…」といった感じであり、暗算のスペシャリストならいざ知らず、通常人は脳裏に数字をキープするだけで精いっぱいとなる。それらを逐一計算しながら、次々にフラッシュされる数字を脳裏に描き続けることなど、まず不可能だろう。これは、《観劇》をする際の脳や五感の働きと同じようなもの……と筆者は思っているのだが……。
「原作」と「映画DVD」
――本論に話を戻そう。今回、筆者は公演前日の3月5日に近くのTSUTAYAにて原作(文庫本)」を買い求め、夕食後一気に読み終えた。その際〈役名と役者(出演予定者)〉をもとに「人物関係」を整理し、併せて〈物語の概要〉をまとめた。
さてここで、筆者個人の最近の“学生演劇の楽しみ方”の一端をご紹介しよう。原作等により「内容」が判明している場合は、演出の仕方や舞台美術、照明・音響効果等について“想像あるいは創造する”ことにしている。
音と照明のデザイニング
ことに最近、「音楽・効果(音)」や「照明」についての《デザイニング》や《オペレーション》に目覚めつつある。……とここで、「音響」ではなく「音楽・効果(音)」としたことに留意されたし。この際言わせてもらうなら、筆者は「音響」という「呼称」に違和感を感じる。いかなる「物語」そして「舞台会場」であれ、やはり基本的には「音楽」と「効果(音)」という“区別”と“呼称”が必要ではないだろうか。
それを「音響」という“2文字”で片付ける感覚や考えには、どうしても納得できない。筆者にとっての「音響」という言葉には、「音響メーカー」や「音響装置」といったハードやテックニック面が色濃く纏わり付き、「音全般に関するデザイ二ング」というartisticな「ソフト」面が欠落している。
実際の「舞台演劇」を構成する“およそ音に関するもの”は、やはり「音楽」と「効果(音)」として区分すべきと思う。もし両者を“一本化した呼称”でまとめるのであれば、せめて「音響・効果」として欲しいものだ。この問題は非常に重要であるため、別の機会に詳述したい。
ともあれ、舞台の『散歩する侵略者』を観劇した翌3月7日の深夜、筆者はTSUTAYAにおいて同名「映画」のDVDを借りた。何とこのDVDは、この日がレンタル開始日となっていた。その夜のうちに1回目を観終わった筆者は、翌夜に“部分的な観直し”をしながら「メモ」を取った。
かくして、その「メモ」と前夜の観劇時に走り書きした“ミミズのごとき文字”を頼りに、筆者はブログアップのための〈脳トレ〉を開始した。