『感性創房』kansei-souboh

《修活》は脱TVによる読書を中心に、音楽・映画・SPEECH等動画、ラジオ、囲碁を少々:花雅美秀理 2020.4.7

●演劇鑑賞『幸せはいつも小さくて東京はそれよりも大きい』/九州大学大橋キャンパス

2015年04月04日 01時28分51秒 | ●演劇鑑賞

 

  ● 幸せはいつも小さくて 東京はそれよりも大きい

●原作:広田淳一 ●脚色・演出:廣兼真奈美 ●助演:井料航希、遠藤智 

●九州大学:大橋キャンパス演劇部

 

   終始、気になった“絶叫”口調

   この「舞台」については、“絶叫” 感覚の「台詞回し」がずっと気になって仕方がなかった。〈役〉の特徴を出すためかもしれないが、 “耳触り” な感じが抜けないまま舞台は終わった。他の役者の優れた台詞回しや演技がいくつもあっただけに、残念でならない。

  無論、「絶叫調」の総てを否定するつもりはない。しか し、「ごく普通の会話」において、「絶叫調」で喋らなければならないケースというのは、果たしてどれだけあるだろうか。 “不自然かつ不要不急な絶叫場面” が目立ったことは否めない。

       ★

  「絶叫調」の「欠点」とは、次のようなものだろうか。

 1.“絶叫調” の「台詞(言葉)」は、とにかく “聞き取りにくい”。その上、台詞が “絶叫調という画一化された響き” のため、その役者は無論のこと、相手役者の “真の感情や意識” も当然伝わりにくい。そのため、舞台上の役者のやりとりが判然としないまま、 “未解答のフラッシュ暗算問題が、頭の中にどんどん溜まって行く” ような気分だった。 

 2.“絶叫調” は、とかく “不自然でオーバーな表現” となりやすい。そのため、「その役者」だけでなく、その「役者」と絡む他の「役者」の「台詞内容」や「演技そのもの」も “リアリティ” が奪われがちとなる。

   「舞台」は、白色系で統一した素晴らしい背景、そして大道具、小道具だった。本来、そこから少しずつ生み出されて来るはずの “繊細な感性による想像の世界” が、あれよという間に萎んでしまった感がする。何とももったいない話だ。

       ★

 

  「演劇」という“作り物”が生み出す……

   思うに、人が「舞台演劇」に惹かれるのは、眼の前で「役者」達が繰り広げる “フィクション(作り物)の世界” を、少なくとも「舞台が進行している間」(=幕が下りるまで)は、“夢や希望やロマンを抱かせてもらえる時空(=時間・空間)” として堪能できることにある。

   それはときには、 “限りなく「ノンフィクション(本物)」に近い緊張と興奮をもたらす時空” として “酔いしれさせてくれる” ものでもある……のだが。

       ★ 

   「観客」は眼の前の「舞台」を、 “この瞬間の仮の世界”と意識しながらも、心のどこかで “現実世界らしきもの” を感じようとするものであり、また “現実世界との繋がり” を見出そうとしている(※無論、その逆もあるだろう)。

  それだからこそ「観客」は、「役者」すなわちその「台詞回し」や「演技」に、「観客」自身や「観客」の身近な人間をそこに見出そうとするし、秘かに “共感したい” と想っている。 “感情移入” や “自己投影”とはそういうことだろう。

   あるいは、こうも言えるだろう。「観客」とは、「演劇舞台」という「作り物の世界」に、 「傍観者」として参加しながらも、心情的には、“自らをその「作り物の世界」へ投げ込もうとする存在” でもある。

   「優れた演劇舞台」とは、“ときには” このような「観客=人間」の習性を巧みに取り込もうとするものであり、また「傍観者=人間」のままで留まろうとしている「観客」を、何とか “舞台の中の時空に引き摺りこもうとする” ……ように思えるのだが。

       ☆

   〈三谷クミコ〉役の「河野澄香」嬢の好演が眼を惹いた。掴みどころのない〈役〉の雰囲気がよく出ており、しっかりと “クミコ・ワールド” を発信していた。その「台詞回し」や「演技」には、〈クミコ〉ならではの独特の “ため” や “ゆらぎ” のようなものが感じられた。

   それにしても、“正常でも異常でもない” どこか “病んだ” とも言えるこのキャラクターは、本来、かなりの演技力を要するはずだが……。それを簡単に表現していたのが印象的だった。

   ことにそれは、〈小田ユキヒト〉役の「植木健太」氏と二人だけのシーンにおいて、いっそう顕著に感じられた。二人の役者の感性や演技力と言えばそれまでだが、この「舞台」を最後まで支えた原動力となったことは確かだ。  

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 【キャスト】、9名:小田ユキヒト(植木健太)、星野カズユキ(江原圭佑)、仁村ヒトミ(成清花菜)、石橋ミカ(小渕あさ)、見城ダイスケ(石光真之助)、高橋サトル(今岡宏朗)、木村シズカ(藤田萌花)、木村ジュンタ(森友楽)、三谷クミコ(河野澄香)。

 【スタッフ】、8名:弥永さえ日高彩伽徳永拓海岸田祐真阿部隼也三留夏野子緒方卓也齊藤美穂。――の各氏各嬢。

  



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