ヒロシマ・セミパラチンスク・プロジェクト

NGO ひろしま市民によるカザフスタン共和国旧ソ連核実験場周辺住民(核被害者)への支援・交流

中国新聞 3月2日付 特集記事より ヒロセミ顧問 野宗教授

2016-06-20 10:06:26 | Weblog
原発事故5年。検診が大切なのは、これからだ

島根大医学部の野宗教授、福島で

 「1年間、安心してお過ごしくださいね」。島根大医学部の野宗(のそう)義博教授(65)が、甲状腺検診に訪れた親子に声を掛けた。島根県から約800キロ離れた福島県いわき市。野宗教授は2、3カ月に1度、NPO法人「いわき放射能市民測定室たらちね」が実施する検診をボランティアで引き受けている。  子どもの喉元に超音波を当て、しこりの有無をモニターで確認。角度を少しずつ変えて画像を映し、「心配なしこりはありません」「小さければ、消えることもあります」などと丁寧に説明した。食い入るように画面を見詰めた大学4年女子(22)の母親(49)は「診てもらってよかった」と胸をなで下ろした。

 県の甲状腺検査は、今月で2巡目が終わる。体制は整っているはずなのに、民間の病院やNPO法人による検診のニーズはある。なぜだろうか。

 野宗教授は「実際に画像を見せて、じっくり対話できればいいが、マンパワーが追い付いていない」と指摘する。県の検査は、保護者が立ち会えないケースが多く、判定結果は約2カ月後に郵送で通知される。小さなしこりが見つかっても、血液検査などの2次検査に進むレベルでなければ、本人や家族へのケアはない。その不安を緩和しているのが民間の検診だ。

 ただ、医師を集めるのは容易ではない。たらちねは、全国の約300人に依頼メールを送るなど医師の確保に駆け回ってきた。広島大出身の野宗教授は、旧ソ連の核実験場があったカザフスタンで甲状腺がんなどの患者を10年以上診ていた。「これまでの知識や経験を福島でも生かせる」と名乗りを上げた。

 野宗教授が、気がかりなのは関心が薄れていることだ。たらちねでは、検診を始めた2013年3~12月が3051人、14年が2428人、15年が2270人と減る傾向にある。県の検査でも受診率の低下が懸念されている。チェルノブイリ原発事故で子どもの甲状腺がんが増えたのが5年後だったのを踏まえて「本当に検診を受けてほしいのは、これからだ」と訴えている。

がん発見相次ぐ

 放射線による健康被害はさまざまあるが、チェルノブイリ原発事故では、主に子どもが放射性ヨウ素131を体内に取り込むことで起きる甲状腺がんが多数見つかり、問題化した。福島県の甲状腺検査は、チェルノブイリの事例を踏まえ、子どもの健康を長期にわたり見守るため、2011年10月に始まった。

 1巡目は「先行検査」。福島第1原発事故当時に18歳以下の子ども約37万人が対象で、甲状腺の状態を把握するのが目的だった。ところが、15年末までに100人のがんが見つかり、切除手術が行われた。

 2巡目は、14年4月に開始。事故後約1年間に生まれた子どもを加え、対象は約38万5千人に拡大した。「本格検査」とし、甲状腺の変化の有無を継続して確認している。これまでに16人のがんが確定した。

 3巡目以降は、対象者が20歳までは2年ごと、それ以降は5年ごとに実施する予定。ただし、将来の検査間隔については、有識者の検討委員会で今後議論される見込みだ。
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