父はしばらく閉鎖病棟の個室で過ごすことになりました。
お酒の離脱症状がでるかもしれないからです。
病棟のすぐ傍らにある個室で私と母は、担当の看護師さんや事務員さんと入院手続きをし、A4サイズの書類に次から次へと署名をしていきました。
しばらくして
看護師さんからパンパンに荷物の詰まった白いビニール袋を2つと父の鞄を渡されました。
袋の中には父の衣類が入っていました。
「先程ね、お父さんと少しお話したけど
すごく落ち着いておられましたよ。
この荷物持って帰ってくださいね。
こちらの病棟では専用の服を貸出していますので。」
それから、これまでの父の様子や家での困り事などをヒアリングして下さいました。
父のことを話しているうちに、
だんだん父はそこまで困った人ではないような気がしてきて、だんだんと罪悪感でいっぱいになってきました。
確かに困って困って疲労感でいっぱいだったのにも関わらず、
さんざん父のことを言いつけるにつれて
それでも優しいところやいい所が沢山あったことに気づいていくのでした。
☆。.:*・゜
病院の帰り道、スーパーへ寄ってお昼ご飯を買って帰ることにしました。
「もう、疲れたからたまには豪華なお弁当でも買って帰ろう」
と私が言うと
「そうやな」
と言う母。
いざスーパーへいくとお弁当は食べたいという気になれず、
とにかくパンでも買って帰ろうという話になりました。
そうして、とりあえずパンを2つずつ買ってかえることになりました。
帰り道、歩きながら
「お母さん 自分を責めたらあかんよ。」
元気な声で母に話しかけました。
私の家と母の家との別れ道で
「じゃあ、お母さん、ちょっと重たいけどこの荷物お願いね。」
そう言って父の着ていた服がパンパンに詰まった袋を2つ渡しました。
「こんなん 軽い軽い。大丈夫や。
この(お父さんの)鞄が邪魔やわ〜。
ほんなら 、今日は迷惑かけたねぇ。
お母さん1人じゃ、無理やったわぁ。
助かりました。
今から仕事やのにごめんなぁ。」
そう言って母がとぼとぼと家の方角へ去っていくのをしばらく見送りました。
下を向いて、右や左にフラフラと力無く歩く母。
その両手に 父の抜け殻を持って…