泉を聴く

徹底的に、個性にこだわります。銘々の個が、普遍に至ることを信じて。

スラムドッグ$ミリオネア

2009-06-02 19:34:07 | 映画
 「スラムドッグ」とは、「貧しい負け犬」とのこと。
 そう言われる彼「ジャマール」が、人気のクイズ番組に出て、2000万ルピー(1ルピー=約2円)を獲得することになります。
 その過程、なぜに彼は、質問に対する答を知ることになったのか、詐欺容疑で警察で尋問される中、答の一つ一つが具体的に語られていきます。その積み重ねが、結果的にクイズへの回答につながり、ジャマールの生い立ち、彼という人間を知っていく物語になっています。
 映画が始まると、あっという間でした。それだけ没入することができました。
 獲得金額が上がっていくというクイズ番組のスリルとも呼応して、飽きることはありません。スラム街に生まれ、生きるために必死で行動してきたジャマール。過酷な、選びようのない、経験の塊たちは、受験や就職のための勉強とは雲泥の違いの、彼そのものの中にある知恵を育んでもいた。彼の価値は、お金では計り知れないほど大きいものであることを、知らしめることになります。
 僕の感じたそういう映画のポイントのようなものを、これでもかと説教臭く表現はしていない。音楽もヒップホップのようで、疾走感があります。クラシックを好む僕は、この手のうるさ型の音楽にあえて近づかないけど、この作品の中ではとても合っていた。気持ちよく身を委ねることができました。
 ジャマールがなぜ「クイズミリオネア」に出ることにしたのか? それは言わないことにしましょう。
 ただ複線に、恋人がいます。
 彼はただ単純に、人を愛し、生きてきた。
 生まれがどこであろうと、親を殺されようと、嘘を覚えようと、兄がやくざになろうと、また拷問を受けようと、彼は彼だった。彼以外にはなりようもなかった。あの人以外を愛することもできなかった。
 それが「運命」。
 僕の言葉でいえば、「なるようになる」。
 その意味で、スカッとしましたね。最後のダンスなんかも素直に楽しめた。
 貧困や暴力が、この世界に存在しているのは事実です。アメリカのかつての某大企業のように、嘘偽りで凝り固まって金だけを最高の価値だと思い込んでいる大人もいっぱいいる。
 そんな世界で、何が大切なのでしょうか? また何なら僕にはできるのでしょう?
 自分が自分であること、です。そして今までの道は、どの人の道にも、2000万ルピーもの価値がある、ということです。

ダニー・ボイル監督/サイモン・ビューフォイ脚本/池袋シネリーブルにて

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