宮城県気仙沼市出身の母の知り合いが、この本のモデルになっていることから知り、買って読みました。
実話に基づいた一組の父と息子の物語。
しかし本当は、父と息子には、おじいちゃん、おばあちゃん、お母さん、娘が二人、お母さんの妹、妹の息子がいます。
本を開くと、大津波に必死で抗う父の姿が描写されます。
すぐに感じたのは、文章のうまさでした。小学生にもわかる明晰な文章で、でもぐいぐい引き込まれます。
読み進む中で、父と息子だけが残されたのだと知ります。
父は牛乳やヨーグルトの販売をしています。息子は小学生で、野球が大好き。
壊滅状態の中でも、息子はバッティングセンターに行きたくて、父は車で岩手まで連れていきます。
車中で息子は言ったのでした。もっと近くにバッティングセンターがあればいいのに、と。
そして、父には目標ができました。彼が小学生のうちに(あと3年)バッティングセンターを作る、と。
「希望ののむヨーグルト」という新商品を開発し、全国販売を行う。私も飲みました。
ついにバッティングセンターは完成。オープンは2014年3月30日。気仙沼フェニックスバッティングセンター。
もちろん現在も営業中です。私も今度気仙沼に行ったら寄ろうと思います。バッティングセンターなんていつ以来だろう。わくわくしますね。
本の帯にある「希望さえあれば、生きられる」。確かにそうだと思います。
ただ、この言葉を重く感じられる人たちもたくさんいるだろうなとも思います。
希望がはっきり見えていればもちろんいいのでしょうが、希望はそう簡単に見えないものなのではと。
私にしてもそうです。数多くの失敗や絶望があり、それだけ多くの人たちに支えられてやっと今があります。
だから希望の押し付けはできません。ただ、みんなの中に希望はある、と信じてはいます。
みなそれぞれに違うはずの希望。それを輝かせるのに役立つであろう一冊です。
漆原智良作/羽尻利門絵/小学館/2016
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