随思録

日々思うことを記す。

影に形のよりそいて~花よりも花のごとく3

2005-02-07 22:19:20 | Weblog
いまもっとも新刊を楽しみにしているコミックは、成田美名子の「花よりも花のごとく」だ。
先日ようやく3巻が出て、収録されている1篇の「影に形のよりそいて」に感銘を覚えた。考えてみれば、成田美名子は、ずっと「影に形のよりそう」作品を描き続けている。
私が一番好きだったのは「ALEXANDRITE」だ。そう「ALEXANDRITE」の中にも、似たような言葉があった。アレクとハルが夜の体育館で柔道をしたあと、アレクがハルに、対戦する相手はいつも自分がなれなかったもう一人の自分(=影)のような気がする、とつぶやいていた。
「CIPHER」など、双子という合わせ鏡、すなわち「影と形」を、真正面からとらえた作品だろう。
個人的には期待はずれだった「NATURAL」にしても、ミゲールの心にある「影」、そしてその象徴であるファビアンとの和解の物語であった。
この「花よりも花のごとく」もまた、憲人と西門という「影と形」から物語は始まっている。

なれたかもしれない自分、なれなかった自分……
影と戦い、時には許しあいながら、自分を見つけてゆくのが成田美名子の作品の特徴なんだな。ふとそんなことを思いついた。

対して自分はどうだろうか。もう影はいない。アレクの心情に共感していた自分はいない。かといって、すべてが光の中に包まれたような幸せがあるわけでも、愛する人がいるわけでもない。
しかし「なれなかった自分」を悔やんでも、戻ることはできない。積み重なった時間の中で、影も形も灰色となり、取り残された、そんな毎日だ。それでも、毎日をやめるわけにはいかない。
苦しむことは減ったが、こう改めて書いてみると、どこかさみしい。