真剣道外伝★無端晟輝の残日録

真剣道・基道館宗師範の残しておくべき余談集

未来に対する責任

2019年06月12日 | 書簡

前略、○○6段

ご質問に接し、貴殿の真摯な求道の熱意を感じ、うれしく、またありがたくお礼を申し上げます。

形而上の諸問題は、実に複雑で、立場により180°の転換をはらんでいますね。

A1

現在は資本主義が崩壊する前夜であることはもちろん疑念の余地はありません。

シナには13億人の人々がいて、さらに日本の人口に匹敵する1億人が戸籍を持たないまま生きています。

その首都ペキンでは公害のため50m先が見えないスモッグが発生し人々の健康を圧迫する事態となりました。

シナ人はもちろん他の諸国民と同じく「幸福」を追求する権利があり、そのために努力をしています。

しかしながら、14億の人々がよりよい暮らし、たとえば平均的日本人の生活をするとなると、世界の自然は崩壊し、海は今まで以上に汚染され、地球という環境自体が壊滅するというおそろしい予想:計算は、事実でしょう。

では、シナ人には道路で排泄をする生活を強いて、日本人はきれいなトイレで用を足す・・・のが正しいのでしょうか?

ここでは、シナという隣邦を例にとっていますが、サハラ以南の700万人は1日1ドルで飢えをしのいでいることを忘れてはいけません。

 

 

 

A2

業前に対する観点と包括的な視座とはかけ離れたモノであるという仮説

英信流が現代に浮上してはや70年が経過しようとしています。

なぜ、浮上したか?という視座からは次のような事柄を推論できるでしょう。

①GHQによる日本文化の圧殺から生き延びた最後のサムライたちが圧迫をバネに武士道精神を復興しようとした。

②荒廃した祖国再建のために「武道」が必要と思われる時代的要望があり、それに応えうる人材がいて、マッチした。

③強力な世界体系(アメリカ文化)ーパクスアメリカ-ナ思想はその時代を席巻していたけれど、それに対抗する気概が残っていた

 

A3

我々が知っておくべき事をカントは次のように説明していました。

何をなすべきか

何を知りうるか

何を望みうるか

 

私は足るを知る人でありたいと望みます。

たとえば、欲しい欲しい、惜しい惜しい という心根で武道に向かうとき

試合に勝ちたい、段が欲しい、負けたら口惜しい、そのために努力する=間違った文脈ではないでしょうか

 A1での伏線のように、幸福は誰しも求めていいのだが、他者の不幸と裏返しという面もあります

だからこそ、基道館では全員が「循環無端」の胸章を身につけ、キビシイ縦社会の中でも稽古が終われば円陣を組みお互いの稽古に尊敬の念を表するのを習いとしています。

あやふやな価値観が横行する時代ですが私のキーコンセプトは変わりません。

「自分に向かってやるのが居合で、人に見せるためではない! やがてその修業がいささかでも人様世間様の役に立つように心を向けなさい」

450年の居合の歴史に接し、資本主義の壊滅にシンクロする日本武道であってはならないという気持ちです。

その歴史の一コマとなり包括的な視座を提示するのは私たち基道館の責務であり、喜びではないでしょうか?

消費税が10%になるから、自分の年金がどう変わるかなどという些末な議論がわかりやすいのですが、100年先に日本人が絶滅する転換点に遭遇した居合者が身の回りでできうることをそれぞれのスタンスでやりきる事が重要です。

私は今まで知り得たことで十分です。まだ細かいことまでを知りたいでしょうか・・・・

深く耕せば味わいも変化するモノです。

そんな視座に在ることは多かれ少なかれそれぞれの社会観、その決定的な選択について自信を付与してくれました。

 

貴殿はこれからの「伸びしろ」がたくさんあります。

あれこれ目移りするでしょうね、それも仕方ないことですがこれだけは守ってください

 

「師伝を墨守する」それは遠い昔発信された信号があなたに届き、またその信号を未来に発信することと同じです。

 

推敲しないで乱文となりました。お詫びします。 匆匆

令和元年 6月12日    無端

 

 

 

 

 

 


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