4WASは、四輪アクティブステアの略語として用いられ、世界初の機構としてV36スカイラインに装着されたシステムだ。また、4WSは4輪操舵機構として一時期各メーカーから登場し、日産では、フーガに装備した「RAS(リアクティブステア)」が新しいタイプの4WS機構として採用されている。このような各4WS機構は、走行状態やステアリング操作に応じて後輪に対する切れ角を与える方式だった。これに対して4WASは、前輪に対して作動するステアリングギアのギア比変更機能と後輪に切り角を与える機能を総合的に組み入れていることが、従来仕様のRASと大きく異なっている。
ステアリングは、16:1くらいが標準的なギア比として採用されており、スポーティカーとしては13:1くらいのギア比が用いられることもある。また、おとなしい走行を主としたセダンでは18:1くらいの設定も見られる。このような標準仕様に対し、4WAS仕様のステアリングギア比は、先の3タイプのギア比を無段階に自動コントロールする機構が組み込まれているのだ。ここでのステアリングギア比コントロールは、ラック&ピニオンのギアによって設定されているギア比は基準のセッティングにしたまま、ステアリングシャフト上に設けた特殊な可変ギアコントロール機構(ストレイン・ウエーブ・ギアリング機構)の作用によってコントロールされる。
その作動を、ごく簡単に言えば、10km/h程度の低速でステアリング操作をしたときには、ステアリング操作に対する前輪の切れ角度が大きめ。40km/hから80km/hくらいまでは前輪が大きめに切れると同時に、後輪を前輪と同方向へ切ることによって挙動を安定させると同時に、キビキビとしたステアリングの操作感。100km/hに近い高速になると、ステアリング操作に対するタイヤの切れ角を少なくし、同時に後輪が前輪と同方向を向くコントロールをすることにより、車線変更時などの安定走行を高める。一時期の4WSやRASは、中・低速時のステアリング操作時に、瞬間的な逆位相(前輪の方向に対して後輪が逆方向を向く)状態を作ることによって、キビキビとしたステアリング操作感を得る制御を行なっていた。これに対して4WASは、ステアリングの操作角とフロントタイヤの切り角を自動コントロールするこができるため、逆位相状態を組み入れる必要がなくなっている。