(1)概要
次の機材(QBPⅢフィルタ使用)を用いた電視観望の撮影条件を検討した。
・撮影対象(こぎつね座)
M27(亜鈴状星雲)[15,16]
・機材
望遠鏡:MILTOL 200mm F4[1-2]
イメージセンサ:Player One Neptune-C Ⅱ(SONY IMX464 1/1.8型 2712x1538 2.9μm)[3-5]
フィルタ:Quad BP フィルター Ⅲ[6]
架台:AZ-GTi赤道儀化マウント[12] 恒星追尾モード、プレートソルブと同期[14]
・画像処理
パソコン:WindowsノートPC(Core i5 2.30GHz 、8GB、240GB-SSD)
イメージキャプチャ:SharpCap4.0[7] Live Stack(fits)
画像解析:マカリ[8-9] 画像演算(左右反転、回転)、グラフ機能
画像補正:ASTAP[10] 自動カラー補正、αδ grid処理、Deepsky annotation処理、fits→jpg変換
画像処理:ImageMagick[11] トリミング処理、append処理
(2)スタック数と輝度ばらつきの測定
a.マカリを用いた輝度測定方法(グラフ機能)
上:マカリを用いた輝度ばらつき測定例
ここでは、背景の(輝度ばらつき)=(輝度最大値 - 輝度最小値)とした
上記の輝度ばらつきは、約2,000であった
下:天体(M27)の輝度測定例
ここでの天体の輝度レベルは、約11,000であった
b.Gain固定、露出固定の場合の測定結果
M27付近のトリミング画像例(480x640)
左 :Gain 440, Exp. 4s, StackedFrames= 15, Total Exp. 60sec
中左:Gain 440, Exp. 4s, StackedFrames= 45, Total Exp. 180sec
中右:Gain 440, Exp. 4s, StackedFrames= 75, Total Exp. 300sec
右 :Gain 440, Exp. 4s, StackedFrames=135, Total Exp. 540sec
スタック数と輝度ばらつき測定例
※輝度ばらつき(イメージセンサのノイズ成分に相当)は、スタック数の-1/2乗に比例していることがわかる[23]
c.総露出時間固定の場合の測定結果
総露出時間固定の場合に使用した撮影条件
M27付近のトリミング画像例(480x640)
左からGain 440, 400, 360の場合の順で配置
※Gainの低い方が低ノイズの傾向がありそうである
スタック数と輝度ばらつき測定例
※総露出時間固定の場合は、ノイズに相当する輝度ばらつきは、ほぼ一定となった
d.都内の星空の輝度成分の推定
都内の星空の輝度成分推定値
※上記の測定結果より、都内の星空における、背景光、ノイズ、天体、それぞれの輝度成分を推定した
都内の星空においては、背景光の成分は、QBPⅢフィルタを使用すると、使用しない場合の約2/3程度に低減した[29]。
QBPⅢフィルタを使用しても、背景光の成分はノイズ成分より約10倍程度大きいため、イメージセンサ冷却によるノイズ低減効果は限定的と予想される。
(3)まとめ
MILTOL200mmとNeptune-C Ⅱを用いた電視観望(Electrically-Assisted Astronomy:EAA)の撮影条件を検討した。
その結果、都内の星空においては、次の撮影条件が有効と考えられる。
・背景光を低減するために光学フィルタ(QBPⅢ)を適用し、その効果を確認した。
・ノイズと同等レベルの暗い天体を撮影する場合は、スタック数を増やし、ノイズを低減する手法が有効である。
・暗い天体を撮影する場合は、必要以上にGainを上げず、露出時間を長めに設定したほうが、低ノイズの画像を得やすい。
参考文献:
(1)MILTOL 200mm F4レンズ
(2)テレスコープ 200mm F4レンズキット
(3)Neptune-C II USB3.0 Color Camera (IMX464)
(4)SONY IMX464LQR
(5)Player One - Cameras and Astrophotography
(6)Quad BP フィルター III
(7)SharpCap
(8)すばる画像解析ソフト-Makali`i-配布サイト
(9)マカリ:Makali`i 超入門編(マニュアル)
(10)ImageMagick
(11)ASTAP, the Astrometric STAcking Program
(12)AZ-GTi赤道儀化マウント-goo blog
(13)WindowsPC環境におけるプレートソルビング(10)-goo blog
(14)WindowsPC環境におけるプレートソルビング(11)-goo blog
(15)亜鈴状星雲-Wikipedia
(16)MILTOL200mmとNeptune-C Ⅱを用いた直焦点撮影(183)-goo blog
(17)WindowsPC環境におけるオートガイド-goo blog
(18)WindowsPC環境におけるオートガイド(2)-goo blog
(19)ASI462MCの”Gain”の数値はいくつで使うのが最も効率が良いか
(20)ASI462MCが、単位時間当たり最高のパフォーマンスを発揮するGain数値は!?
(21)惑星撮影の条件設定を考える(拡大率vsゲインvs露光)
(22)CMOSカメラのカタログ値の読み方
(23)実画像のノイズ評価(その1): 各ノイズの貢献度合-ほしぞloveログ
(24)実画像のノイズ評価(その2): 露光時間の決定-ほしぞloveログ
(25)実画像のノイズ評価(その3): 信号について-ほしぞloveログ
(26)ドライブレコーダーに搭載されているSONYのイメージセンサーごとの特徴
(27)渡邉 耕平 著、”電視観望実践ガイドブック Ver 1.1”、サイトロンジャパン発行、2021年11月17日第二版発行.
(28)渡邉 耕平 著、根本 泰人 監修、”月・惑星撮影 実践ガイドブック Ver 1.0”、サイトロンジャパン発行、2023年6月24日.
(29)都内の星空における電視観望の撮影条件-goo blog
次の機材(QBPⅢフィルタ使用)を用いた電視観望の撮影条件を検討した。
・撮影対象(こぎつね座)
M27(亜鈴状星雲)[15,16]
・機材
望遠鏡:MILTOL 200mm F4[1-2]
イメージセンサ:Player One Neptune-C Ⅱ(SONY IMX464 1/1.8型 2712x1538 2.9μm)[3-5]
フィルタ:Quad BP フィルター Ⅲ[6]
架台:AZ-GTi赤道儀化マウント[12] 恒星追尾モード、プレートソルブと同期[14]
・画像処理
パソコン:WindowsノートPC(Core i5 2.30GHz 、8GB、240GB-SSD)
イメージキャプチャ:SharpCap4.0[7] Live Stack(fits)
画像解析:マカリ[8-9] 画像演算(左右反転、回転)、グラフ機能
画像補正:ASTAP[10] 自動カラー補正、αδ grid処理、Deepsky annotation処理、fits→jpg変換
画像処理:ImageMagick[11] トリミング処理、append処理
(2)スタック数と輝度ばらつきの測定
a.マカリを用いた輝度測定方法(グラフ機能)
上:マカリを用いた輝度ばらつき測定例
ここでは、背景の(輝度ばらつき)=(輝度最大値 - 輝度最小値)とした
上記の輝度ばらつきは、約2,000であった
下:天体(M27)の輝度測定例
ここでの天体の輝度レベルは、約11,000であった
b.Gain固定、露出固定の場合の測定結果
M27付近のトリミング画像例(480x640)
左 :Gain 440, Exp. 4s, StackedFrames= 15, Total Exp. 60sec
中左:Gain 440, Exp. 4s, StackedFrames= 45, Total Exp. 180sec
中右:Gain 440, Exp. 4s, StackedFrames= 75, Total Exp. 300sec
右 :Gain 440, Exp. 4s, StackedFrames=135, Total Exp. 540sec
スタック数と輝度ばらつき測定例
※輝度ばらつき(イメージセンサのノイズ成分に相当)は、スタック数の-1/2乗に比例していることがわかる[23]
c.総露出時間固定の場合の測定結果
総露出時間固定の場合に使用した撮影条件
M27付近のトリミング画像例(480x640)
左からGain 440, 400, 360の場合の順で配置
※Gainの低い方が低ノイズの傾向がありそうである
スタック数と輝度ばらつき測定例
※総露出時間固定の場合は、ノイズに相当する輝度ばらつきは、ほぼ一定となった
d.都内の星空の輝度成分の推定
都内の星空の輝度成分推定値
※上記の測定結果より、都内の星空における、背景光、ノイズ、天体、それぞれの輝度成分を推定した
都内の星空においては、背景光の成分は、QBPⅢフィルタを使用すると、使用しない場合の約2/3程度に低減した[29]。
QBPⅢフィルタを使用しても、背景光の成分はノイズ成分より約10倍程度大きいため、イメージセンサ冷却によるノイズ低減効果は限定的と予想される。
(3)まとめ
MILTOL200mmとNeptune-C Ⅱを用いた電視観望(Electrically-Assisted Astronomy:EAA)の撮影条件を検討した。
その結果、都内の星空においては、次の撮影条件が有効と考えられる。
・背景光を低減するために光学フィルタ(QBPⅢ)を適用し、その効果を確認した。
・ノイズと同等レベルの暗い天体を撮影する場合は、スタック数を増やし、ノイズを低減する手法が有効である。
・暗い天体を撮影する場合は、必要以上にGainを上げず、露出時間を長めに設定したほうが、低ノイズの画像を得やすい。
参考文献:
(1)MILTOL 200mm F4レンズ
(2)テレスコープ 200mm F4レンズキット
(3)Neptune-C II USB3.0 Color Camera (IMX464)
(4)SONY IMX464LQR
(5)Player One - Cameras and Astrophotography
(6)Quad BP フィルター III
(7)SharpCap
(8)すばる画像解析ソフト-Makali`i-配布サイト
(9)マカリ:Makali`i 超入門編(マニュアル)
(10)ImageMagick
(11)ASTAP, the Astrometric STAcking Program
(12)AZ-GTi赤道儀化マウント-goo blog
(13)WindowsPC環境におけるプレートソルビング(10)-goo blog
(14)WindowsPC環境におけるプレートソルビング(11)-goo blog
(15)亜鈴状星雲-Wikipedia
(16)MILTOL200mmとNeptune-C Ⅱを用いた直焦点撮影(183)-goo blog
(17)WindowsPC環境におけるオートガイド-goo blog
(18)WindowsPC環境におけるオートガイド(2)-goo blog
(19)ASI462MCの”Gain”の数値はいくつで使うのが最も効率が良いか
(20)ASI462MCが、単位時間当たり最高のパフォーマンスを発揮するGain数値は!?
(21)惑星撮影の条件設定を考える(拡大率vsゲインvs露光)
(22)CMOSカメラのカタログ値の読み方
(23)実画像のノイズ評価(その1): 各ノイズの貢献度合-ほしぞloveログ
(24)実画像のノイズ評価(その2): 露光時間の決定-ほしぞloveログ
(25)実画像のノイズ評価(その3): 信号について-ほしぞloveログ
(26)ドライブレコーダーに搭載されているSONYのイメージセンサーごとの特徴
(27)渡邉 耕平 著、”電視観望実践ガイドブック Ver 1.1”、サイトロンジャパン発行、2021年11月17日第二版発行.
(28)渡邉 耕平 著、根本 泰人 監修、”月・惑星撮影 実践ガイドブック Ver 1.0”、サイトロンジャパン発行、2023年6月24日.
(29)都内の星空における電視観望の撮影条件-goo blog
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます