僕はその悪習が抜けない。
未明にふと目が覚めて TV をつけると、映画『 ROCKY 』が放映されていた。
『 ROCKY 』はすでに歴史上の作品で、
好悪を述べたり、批評をしたりする対象からは一段上にある。
今となれば1カット1カットがすべて名シーンと言ってよく、
ガキのころからこの映画をみてきた僕には、もはや古典の領域に属している。
けさ、NHK 教育テレビで、能『箙(えびら)』をやっていた。
酔狂なことに、僕は大学時代能を少しかじった。
もうかなり前のことなので、以下は思い違いなどがあるかもしれない。
能の演目(作品)は「五番立」といって、
登場人物(主人公)や曲趣などによって5つに大別されている。
その中に「修羅物」というジャンルがあり、
例外もあるが、多くは平家物語に取材し、源平の武将をモチーフにしている。
面白いのは、修羅物のほとんどが戦いに負けた側が主役であり、
勝利者側が主人公になっている演目(勝修羅)は3番しかない。
その中の一つが今朝やっていた『箙』で、梶原源太景季という若武者が
箙(矢を入れる容器)に梅の枝を差して初陣に臨んだ場面がクライマックスとなっている。
青かった僕ら学生は、『箙』などの勝修羅(『田村』『屋島』)をやりたがった。
派手でカッコイイからだ。
けど修羅物の醍醐味は、やはり負修羅なんだろう。
『 ROCKY 』を見て再認識した。
ROCKY シリーズは5作品あって、勝ったり負けたりするんだけど、
シリーズ最終作品『 ROCKY BALBOA 』(ロッキー・ザ・ファイナル)では、
負修羅のマナーに則って、善戦の末、ロッキーは敗れてしまう。
ハリウッド映画と能楽を比べることに意味があるとは思えないけど、
負けの美学は洋の東西を問わない、ということの典型じゃないだろうか?
ロッキーも1作目で負けたことによって修羅道に落ちていった。
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