きりのみやこ

ソプラノ歌手「みやこ」の音楽する日々

ヘンデル作曲「セメレ」♪

2009年03月19日 | 音楽のこと
今年はヘンデル没後250周年で、
世界各地で多くのヘンデルの演奏が行われているのだろう。

イギリスに12年住んでいた私にとって、
ヘンデルはとても身近な作曲家である。
ドイツ生まれの作曲家なのに、イギリスに帰化したヘンデルは、
イギリスの作曲家であり、イギリスの誇り。
イギリス人のヘンデル好きぶりは大変なものだ。
今年はさぞ盛り上がっているに違いない。

京自身も今年9月にヘンデルを歌わせていただくことになっている。

そのプログラムのひとつに「セメレ」の'極みなき喜び’がある。

この「セメレ」と言う作品、英語で書かれ、
“オラトリオ”とされている。
が、
この「セメレ」、どこからどう見ても'オペラ’である。
編成から、ストーリーからテーマから、
宗教音楽である'オラトリオ’からはかけ離れている。
実際、私は2回ほど「セメレ」を劇場で見たが、
どちらもオペラ形式(衣装をつけ、演技をしながら歌う。)をとっていた。

ではなぜ'オラトリオ'「セメレ」なのか?

ここで私はモーツァルトを描いた映画
「アマデウス」のある場面を思い出していた。
皇帝に、モーツァルトが自分の(また聴衆の)母国語である、
ドイツ語でオペラを書いてみたい、と掛け合い、
「オペラはイタリア語と決まっている」
などと言われてもめている場面。

ヘンデルが生きたのは1685~1759年。
モーツアルトは1756~1791年。
当然ヘンデルの時代のほうが、
イタリア・ローマが音楽の本拠地と言う風潮は強かったに違いない。
そこへもってヨーロッパでは当時ど田舎だったイギリスで、
ましてや英語で書かれたものをオペラと呼んでなるものか・・・
と、言う事でオラトリオになったのかな?

などと勝手な想像をしてみたが、
待てよ、だからってオラトリオって言うのも変だなと思い、
調べてみたらこう言うことらしい。

ヘンデルは明らかに、この作品を「オペラ」として書いた。
しかし作曲の後、
受難節(荒野のキリストを記念して断食や懺悔をする)
の祭典における楽曲が必要だったため、ヘンデル自身が報酬を得たいがために、
「オラトリオ」として演奏したと言うのだ!

ちなみに「セメレ」はギリシャ神話からのもので、
天上の世界の神ゼウスが恋したセメレという人間の女性が
自分も天上の者になろうとたくらんで、結果的にゼウスの怒りをかい、
雷に打たれて死んでしまう話。
非常に人間くさいもので、「淫らなオペラ」と言う異名まで付いている作品だ。

これを「オラトリオのマナーで」
と言う説明つきで受難節に演奏してしまうヘンデルが、
私はとても好きだ、と思った。

当然この作品、ロンドン初演でうまく行かず4回公演で打ち切り。
観客のお怒りを受け、オペラファンのためにイタリア語のアリアを追加、
敬虔な信者のためにセクシーな表現などを削除したとか・・・
それもちょっと違う気がするが・・・

やっぱり結構、ヘンデルが好き、である。

発声における呼吸法 

2009年03月12日 | 音楽のこと
発声において、基礎となる呼吸法。
なのに、確立されたものがなく、色々なセオリーが飛び交っている。
実際、教師によって教え方も本当に様々だし、全然コメントしてくれない教師さえいる。

私自身は、やはり様々な先生に付き、様々な形で教わった。
今実践している呼吸法は、ベル・カントの発声法による。

「1ヶ月間呼吸の練習しかさせてもらえなかった」
と言ううわさを聞きつけて、当時自分の呼吸法に疑問を持っていた私はその先生にすぐにコンタクトをとった。

それまでは、ロシア人の先生に付いていて、呼吸の指導はひたすら、おなかと背中の下の方に向かって息を思いっきり吸い込み、息を吐くときは体の内側から、外側に向かってぐっと力を入れて、プレッシャーを与えながら声を出す、と言うもの。
それがとてもつらくて、腹筋は発達したものの、胴体がいつも緊張しているので、歌っていてもずっと苦しい。

歌でもスポーツでも、体を使うものはなんでもそうだが、「苦しい」と言うのは「正しくない」可能性が高い。
まして「歌う」という行為は、実に自然なものだから、何一つ発声するに当たって「苦しい」などと言うことはあってはならないのだと思う。

呼吸法の基本は、「おなかに力が入っていてはいけない」のだと言う事を、意外に知らない歌手は多い、と聞く。
おなかは、常に柔軟で、必要なときに必要な筋肉が動くことがとても重要だ。

それから呼吸法においては、「吸う」行為よりは、「吐く」行為のほうが重要である。なぜなら、正しく「吐く」事ができれば、「吸う」行為は体が勝手にやってくれるからである。

来週は、具体的な呼吸練習法を書いてみようと思う。

バンブーオルガン

2009年03月04日 | 音楽のこと
フィリピン ラスピニャス教会と言う、マニラ都心部から車で1時間ほどの所にある教会に、世界最古にして世界最大のバンブー・オルガン、つまり竹で出来たオルガンがあります。

そのオルガンを聴けるという、「バンブーオルガン・フェスティバル」の、最終日のコンサートに行って来ました!

教会はとても素敵なバロック様式の建物で、1824年、スペイン植民地時代に建てられたものだそう。
フェスティバル・シーズンのためか、教会もとてもおしゃれにライトアップされていて、コンサートの前には教会の前の野外広場で民族舞踊を見る事ができました。

教会の中はとても広く、バンブーオルガンはその2階にありました。
902本の竹が使われているとの事、とても立派なものでした。
西洋にあるオルガンのように、足を使うペダル鍵盤はないものの、音はなかなか荘厳で、素朴さも兼ね備えている感じが良かったです。

コンサートはオルガンの他に、小規模のオーケストラとチェンバロと混声合唱などの組み合わさった編成で、モーツァルトのモテットや、ヘンデルのオルガン協奏曲などが演奏されました。

オーケストラはフィリピンフィルの団員。とても小編成でしたがつぶぞろいで上手でした。
合唱団は音大の学生さん達で編成され、これも難しい曲の演奏でしたがすばらしかったです。

唯一残念だったのは、ソリストのソプラノと、肝心要のオルガン奏者。
2人ともオーストリア人との事でしたが、残念な出来でした。。。

西洋人と東洋人。西洋音楽の演奏における逆転現象でした。
今はもう、クラッシック音楽界において西洋人も東洋人もないのだなー
なんて、思ったりしながら聴いていました。

バンブーオルガンはもうちょっと良い演奏をいつか聴きたいけれど、
久々に、生でダイナミックな演奏を聴けて、満足です。