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旅とエッセイ 胡蝶の夢

横浜在住。世界、50ヵ国以上は行った。最近は、日本の南の島々に興味がある。

ボーっとした少年

2016年02月22日 18時06分28秒 | エッセイ
   ボーっとした少年

 学校の成績は良かったんだ。けれども自分は小さい時、いつもボーっとしていた。庭にしゃがんで地面の蟻の巣、一つ一つに水を入れ2時間でも3時間でも慌てる蟻集団を眺めていた。観察ではなく、ただ見ながら頭の中であーだこーだと考えていた。今思うに、あーだこーだの内容はさっぱり分からん。横から見たら、何やってんだあの小僧、おかしな子だよ。
 トランプを二つに分けて、これはこっち、今度はこっちが勝つ、と空想の戦いを始めたらこれも2時間3時間。愛用の赤樫の木刀がある。親父が先を切って少々短くしてくれたので、子供でもしっくりとくる。それをひっくり返して先端を肩に当て、布団が山の稜線、見降ろす空想の谷に誘い込んだ敵軍を待ち構える。まだまだ、よし今だ。部下と同時に一斉に撃ちすえる。手榴弾のピンを外して放り込む。
 周りから見てボーっとしているように見えるそんな時、頭の中は一人遊びで忙しい。この特技が大人になっても継続していたら、独房か無人島で役立ったかもしれない。或いは良い物語作家になれたかも。小学校で冒険小説を、出だしの数枚書いて(月明かりが差しこむピラミッドの内部から始まる。)母親に見せたら、すごいこの子は天才だと騒ぎ出した。ので自分でもそうかな、と思いその先は書かなかった。
 お袋よ、対応を間違えたな。それは〝褒め殺し〟という高等戦術、普通は複数で行う。うまく持ち上げ、周りでおだてて良い気分にさせ、闘争心を失わせて慢心するのを待つ。増長してボロが出たら、皆で一斉にひっくり返す。その〝褒め殺し〟が一発で決まった。その後本格的に自分で文章を書き出すまでに40年も経ってしまった。まっあの時けなされていても、何クソと発奮したかと言うと、自分の性格ではメッチャ怪しい。努力とか根気とかいうものが苦手なナマケモノだからね。
 大学生の時、大学の図書館で真冬の手を入れるのも恐い冷たい水道水を、両手に受けて顔をジャブジャブ洗って目を覚ましている男を見た。ウウーいやだ。自分には出来ない、と決めてしまったよ。
 さてそのような白昼夢少年になったのは、住んでいた環境に一因があるのかもしれない。半分は新しいが、半分は黒光りするほど古くて薄暗い家だった。これまた光の全く差さない階段を下りると風呂場、職人さんの作業場を経て店に通じる。反対側は「開かずの間」のような部屋を経て、住み込みの職人さん達の住居だ。友達を家に連れてきたら、「すごい、迷路だ。」と興奮していた。
 階下の風呂に一人で行くのは恐かった。しかしそこは新聞置き場だったので、大人の週刊誌等を夢中で見ていた。由美かおるのポスターに欲情して切り抜いた。従って自分の風呂は極端に早いか、異常に長いかだった。心配して母が様子を見に来ることもあった。由美かおるの切り抜きは長いこと持っていた。片足を伸ばし、片足を抱えたポーズだ。蚊取り線香のポスターだったか、割りと有名なものだ。彼女の太ももは女性美の極みだ。太過ぎる一歩手前で---。おっと思わず太ももフェチを露わにしてしまった。ここらで切り上げよう。

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