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身のまわりに見受けられるようになった「グローバル化」と生きる上での大事な「こころの健康」。さまざまな観点から考えます。

第66回 [欧米最新情報] 対人関係療法(IPT)の今 ~IPT Basicのトレーニングに参加して~

2020-08-20 15:11:25 | メンタルヘルス
 
第66回[欧米最新情報] 対人関係療法(IPT)の今 ~ IPT Basicのトレーニング(シドニー、豪)に参加して~
 
ライアン・ニーミック博士(Ryan Niemiec, Psy.D. 米国オハイオの非営利団体VIA Institute on Character所長)の「ポジティブ心理学ニュース」サイトで恒例の、2019年版のポジティブ・ムービーがなかなか発表されない(別の研究に忙しいらしい)ので、別の話題を。
 
最近興味をもっているのが、メンタルヘルス(心の健康、精神的健康、精神保健などと呼ばれます)で、その流れで、ポジティブ心理学の本を数十冊読み込みました。精神疾患を治すことよりも、個人などの強みや長所を研究する心理学の分野で、創設者のマーティン・セリグマン(Martin E. P. Seligman、1942年8月12日- )は、うつ病と異常心理学に関する世界的権威であることはよく知られています。
 
さて一方で、コンサルタントの業務をやっていると、どうも、メンタルヘルス的に変調をきたしているようだな、と思える経営者(会社員)にも出会います。そこで、彼らに何もしてやれないよりも、少しこの分野を研究し、何らかのサポートをしようと思い立ちました。
 
海外では、「対人関係療法(IPT)」がうつやストレスに効果があると知り、国内で出版されている「対人関係療法(IPT)」の本を数十冊(なぜか創元社の本が多い)読んでいたら、知人のオーストラリア人から、「IPTに興味あるんなら、オンラインでやっている大学があるよ」との情報を得て、シドニー大学生涯教育センターにたどり着きました。シドニ―大学は、豪州で最古(1850年設立)の大学で、医学や健康科学にも実績があるようです。
 
コロナの影響で、キャンパスとオンラインの両方でIPTコースが開講しているということで、これはラッキーだと思い、まず、センター事務局に受講資格をたずねると、精神科医や臨床心理学者でなくても、興味のある方がたに幅広くオープンにしており、歓迎します、との返答があり、早速、受講登録をしました。
 
講師は、IPT Institute (対人関係療法研究所、IPTの国際的認定機関)の所長、Scott Stuart, MD 氏で、テキストは、Interpersonal Psychotherapy A Clinician's Guide 2nd Editionでした。
 
コースは、Level A:Basic (入門編)で、3分の2が講義で、残りが演習形式でした。
 
参加者は27名で、大まかですが、半数がSW(ソーシャルワーカー)、精神科医と臨床心理学者が数名ずつ、残りは、看護師や医療関係者とその他(私)といった感じで、シドニー在住者がほとんど。アジア系が少なくとも5~6名いたようでした。
 
コースは、7月11日からスタート。初回は、全員の自己紹介を経て、IPTの理論編の講義から始まりました。
 
IPT2.0(最新版)の特長を箇条書きで書くと、
  1. IPTは固定的な療法ではなく、実証的な研究方法で日々進化している。
  2. 「医学モデル」(古典的IPT)から、「生物心理社会/文化/スピリチュアルモデル」へと変革している。
  3. 理論的支柱は、「アタッチメント理論」、「対人関係論」、「社会理論」から来ている。
  4. IPTの手法(tactics)として、「対人関係調査図(Interpersonal Inventory)」、「対人関係問題エリア(対人関係の不和、役割の移行、悲哀と死[喪失]、対人関係過敏/欠如)」、「現状分析と治療方針(Interpersonal Formulation」、「IPTの構造(短期間時間制限の療法。10-20セッションと継続療法その他)」がある。
  5. IPTの技法としては、「共通的な面接技法(カール・ロジャーズ(1902〜1987) のように暖かく、共感的で、正直誠実な、無条件のポジテイブな心遣い)」、「コミュニケーション分析技法」、「具体的不和の会話分析(Interpersonal Incidents)」、「問題解決(Problem Solving)」、「ロールプレイング」がある。
特に、病者の役割(sick role)のデメリットを克服するべき、2.「医学モデル」から、「生物心理社会/文化/スピリチュアルモデル」へと進化したこと。アタッチメントスタイル(ボウルビィ3象限➡バーソロミュー・ホロビッツの4象限モデル)の重要性とコミュミケーション戦略との関わりあいを強調されていました。
 
次回以降、演習(スーパーバイジング)を含む、詳細内容に進んで行きます。


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