公民・歴史教科書問題を中心に教育問題を考えていくブログ

恐るべき公民教育の問題を中心に扱っています。かなりの割合で小山常実氏のブログ(特に教科書資料)や著書を参考にしています。

歴史教科書に危険信号!明治維新が危ない!東京書籍と学び舎と令和書籍が「五榜の掲示」強調、育鵬社と学び舎が四民平等を「新身分制度の形成」扱い【明治維新否定は危険な流れ】

2023-09-08 16:18:57 | 歴史教育

●「新身分制度の形成」→「五榜の掲示」強調→近代化記述削除・明治維新否定の流れで近隣諸国条項が生まれた

早速ですが、近隣諸国条項導入前の教科書はどのようなものだったでしょうか。

昭和40年代までは、明治維新について、五箇条の御誓文を大きく取り上げ、五榜の掲示などという小さな事実を書く教科書は皆無でした。そして四民平等を「身分制度の廃止」とし、明治維新によって近代化が進められたと欠いていました。

ところが、昭和50年代に入ると、四民平等政策が「身分制度の改革」や「新身分制度」と位置づけられるようになりました。四民平等だけでなく、明治維新そのものを上辺だけのものと捉えるようになったのです。

それを裏付けるために、五榜の掲示が登場し、その後すぐに五箇条の御誓文と対等な形で示されるようになりました。五箇条の御誓文にくらべれば、「五榜の掲示」という小さすぎる事実を、対等な形で示すのはあまりにもおかしな書き方です。

そして五箇条の御誓文は「御誓文」ではなく「誓文」と呼び捨てにされるようになりました。しかし、「五箇条の御誓文」の「御」はそれ自体が歴史用語ですから、このような呼び方は適切ではありません。

このことは「御家人」を「家人」と呼び捨てにしない事実を見ても明らかでしょう。

さらに、地租改正についても、土地の所有権を書かず、「税の負担が江戸時代と変わらなかった」のように、否定的に書くようになります。

学制の発布では、国民教育の意義も書かず、「授業料の高額さ」などの問題ばかりを強調するようになります。

このように明治維新が否定された後に、教科書大誤報事件(教科書誤報事件)が発生し、近隣諸国条項が導入されることになったのです。近隣諸国条項については詳しくはこちらをご覧ください→【誤報で生まれた】教科書検定基準から「近隣諸国条項」の削除を!!!

●学び舎が「古い身分制度の廃止と新しい身分」、育鵬社が「身分制度の改革」...平成28年の検定

平成28年(2016年)の検定では何が起こったでしょうか。まず、学び舎が登場し、四民平等を「古い身分制度の廃止と新しい身分」とまとめるだけでなく、五箇条の御誓文を「五箇条の誓文」と呼び捨てにし、「五榜の掲示」と対等どころか、五榜の掲示の方を大きく取り上げています。

さらに、学制の発布では、国民教育の意義を全く書かず、「授業料の高額さ」などの問題ばかりを強調しています。

そして最後に「天朝(天皇)のご趣旨はまやかしだ」との声を紹介するほどです。

昭和50年代の明治維新否定を連想させるような記述の仕方です。

それどころか、あの『保守』といわれる育鵬社も、四民平等を「身分制度の改革」と題して「新たな身分が記載されました」とまとめました。さらっと、とんでもないことを言っています。

そもそも「身分」とは、法律上の地位を言います。育鵬社などは士族や平民という区分を「新しい身分」と考えているようですが、そもそも士族や平民とは名前だけであり、法律上の地位はありません。

四民平等という言葉にも現れている通り、士族も平民も対等です。「新たな身分」ではないのです。

●東京書籍が「五榜の掲示」強調、学び舎記述悪化...令和元年の検定

さらに、令和元年(2019年)の検定では、東京書籍が「五榜の掲示」に関する記述を復活させ、「内容は江戸時代とほとんど変わらないものでした」と書きました。

しかも、かなり目立つ位置にこのような記述を置いています。撤去日こそ明記されていますが、東京書籍の記述は五榜の掲示を強調して、明治維新はまやかしだとのメッセージを生徒に送ろうとしているといえるでしょう。

さらに、東京書籍は、もともと幕末期の植民地化の危機や西欧のアジア侵略も全く記さないばかりか、このときから幕末期の「長州藩の木戸孝允はなどは、列強に対抗できる強い統一国家を造るため、幕府をたおそうと考えるようになりました。」の傍線部に当たる記述を削除しました。

東京書籍は、学び舎と同じく対外防衛の観点を持たず、明治維新の必要性を説明せず、五榜の掲示を強調して明治維新をまやかしだとする最悪の教科書です。

また、このときは、学び舎も記述を悪化させました。

●令和書籍が「五榜の掲示」強調、このままでは教科書改善運動が足元から崩れる...次回の検定

さらに、今日、わかったことなのですが、令和書籍の「国史教科書」の検定申請版が「五榜の掲示」を強調している可能性が出てきました。

というのも、私はいつも学校の朝読の時間で、竹田先生の「国史教科書」の第5版を読んでいるのですが、なんとそこには、五榜の掲示に関する記述があったのです。しかも「五榜の掲示」が太字化されていました。

一応、五箇条の御誓文の方を重視するようにはなっていますが、この部分だけは、学び舎や昔の日本書籍(知る人ぞ知る今の学び舎よりも酷い教科書を作っていた出版社)と同じような書きぶりです。

ただし、明治維新をまやかしだとするというよりは、江戸時代と変わらない内容だけでなく、維新で新たに追加された内容も側注で明記していますし、「江戸時代とほとんど変わらない内容でした(笑)」のような冷笑する感じではないとだけ言っておきます。

しかし、令和書籍は保守ないし右翼の教科書ですから、このような記述をすると、教科書改善運動に悪影響を与える可能性があります。

今後、いわゆる『自虐史観』(『自虐』というより偽史なので「いわゆる」をつけることにした。)の東京書籍などの教科書が、本文で「さらに、新政府は、五榜の掲示を出しました。内容はキリスト教を禁じるなど、江戸時代とほとんど変わらない内容でした。」と書いていることを批判しても、「令和書籍も書いているではないか」といわれる可能性があります。

そのため、竹田先生には、「五榜の掲示」関係記述を全て削除していただきたいと考えます。せめて、廃止年ぐらいは明記していただきたいものです。

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