突然ですが、公民教科書上、日本国憲法の成立過程史と日本国憲法の原則は、完全に捏造されています。それも危険な全体主義と反立憲主義に結びつける方向です。
●日本国憲法の原則から三権分立、立憲君主制、議院内閣制、間接民主主義を排除
日本国憲法の原則は、立憲君主制、三権分立、主権在民(国民主権)、間接民主主義、議院内閣制、基本的人権の尊重、平和主義というのが通説でした。
しかし、公民教科書では昭和30年代後半から、三権分立、立憲君主制、議院内閣制、間接民主主義を排除した、国民主権、平和主義、基本的人権の尊重の三原則が語られるようになりました。
この三原則で政治権力に関するものは「国民主権」しかありません。共産主義やファシズムで行われた危険な全体主義を防ぐための三権分立や間接民主主義、議院内閣制がどこにもありません。
大日本帝国憲法の原則にも、三権分立や間接民主主義(議院内閣制は憲法のとるところではない。)は入っていましたから、日本国憲法の原則に入れないのは異常としか言いようがありません。
さらに、立憲君主制も排除されています。立憲君主制とは、君主は憲法に拘束され、憲法の範囲内で君主の行為を行うことができるというものです。
日本国憲法では、天皇は国事行為のみを行うとして、天皇という君主を拘束し、憲法の範囲内で国事行為を行うことができるということにしています。
日本国憲法の立場は、立憲君主制であり、これを排除するのはもはや謎です。
ちなみに、大日本帝国憲法でも、第4条で立憲君主制がとられています。
近代国家に必要不可欠なのが立憲君主制ですから、排除するのは、前近代的な取り組みともいえます。
●日本国憲法の成立過程史の捏造...国ぐるみで抹殺する
さらに、日本国憲法の成立過程史の捏造具合は酷いものがあります。まず、GHQの指示で憲法改正が始まったと書く教科書は自由社以外に存在しません。
育鵬社は、他社と異なり、多少書いていますが、「憲法改正を求めた」と完全にごまかしています。
さらに、GHQ草案は全社が書きますが、GHQ草案を受け入れ、審議するよう要求したと書く教科書は一社も存在しません。なんと自由社と育鵬社も含め、全社が「GHQ案が示され、政府が受け入れた」というような嘘話を展開しているのです。
ですが史実は「GHQは自らの草案を公表し、受け入れなければ「天皇の身体を保障できない」と日本政府を脅迫し、また、官邸周辺にB29を飛ばす中、日本政府に指示して、自らの草案を受け入れさせた」という状態です。
脅迫の部分はなかったという説もありますが、そうだとしても「GHQは自らの草案を公表し、官邸周辺にB29を飛ばす中、日本政府に指示して、自らの草案を受け入れさせた」というの事実です。
まるで日本政府とGHQが対等であったかのように書く教科書はすさまじい歴史捏造を行っていると言わざるを得ません。
自由社と育鵬社は、受けいれる以外の選択肢がなかったとか、厳しく迫ったとか、で示唆することは言っていますが、直接要求や脅迫を書いていません。
もっと酷いのが議会審議です。衆議院の憲法改正特別委員会小委員会の審議で、主な修正が行われることになるのですが、この審議は一般議員の傍聴も記者の入室も認められないという、密室で行われたものです。
そして、この密室で、GHQは、さまざまな指示を行い、議会審議を統制していました。日本側が出した修正案には、全て、GHQの許可と承認が必要でした。GHQの統制は、議会審議にまでおよんでいたのです。
事実、日本国憲法第9条第2項の「前項の目的を達するため」という部分は、芦田修正により追加されたものですが、この修正をGHQは拒否するつもりでした。
GHQの上層部にあたる極東委員会は自衛のための戦力や交戦権ぐらいは認めても良いとの見解を示しました。
同時に、極東委員会は、自衛のための戦力や交戦権を担う軍隊には文民統制が必要だとの見解に基づき、GHQを通して日本政府に「内閣総理大臣その他の国務大臣は文民でなければならない」という文民条項を加えるよう指示し、その通りに修正することで第9条全体の修正を承認されたのです。
このほかにも、現行憲法の「ここに主権が国民に存することを宣言し」の原案は、「ここに国民の総意が至高なものであることを宣言し」でした。
しかし、GHQは突然、日本政府に対して国民主権の明記を指示し、「ここに国民の総意が至高なものであることを宣言し」となりました。
GHQの統制は、議会審議にもおよんでいました。しかし、この事実を書く教科書は平成28年度版まで全く存在していませんでした。
現行版でようやく、自由社ただ一社だけが、「当初、政府案の前文は『ここに国民の総意が至高なものであることを宣言し』と記していました。小委員会もこの案をそのまま承認するつもりでしたが、国民主権を明記せよというGHQの要求があり、『ここに主権が国民に存することを宣言し』と修正しました。」と書きました。
ようやく、議会審議の統制が書かれるようになりましたが、日本側の修正案には許可と承認が必要だった事実までは書かれていません。なにせ、この事実を書こうとすると、検定で抹殺されます。
衆議院の憲法改正特別委員会小委員会の議事録は、1990年代まで秘密とされていました。ようやく公開され、GHQによる統制の実態が明らかにされても、検定は抹殺するのです。
「誤解するおそれのある表現である」などと言って、GHQの許可と承認という表現は抹殺されます。自由社が、ようやく単に「修正の事実を示すだけ」という形で、統制を書くようになりましたが、不十分な感はいなめません。
それに、育鵬社もふくめて他社は議会審議の統制の点を全く書きません。育鵬社以外は検定と戦おうという姿勢すら見せません。育鵬社も、議会審議の統制の点以外では、意外と戦っていますが、議会審議の統制の点では完全に逃げています。
「自主修正が認められた」「議会の審議は自由だった」という嘘話を、自由社以外の全社が展開しているのです。すさまじい歴史捏造です。
これは、指示の点以外は、歴史教科書も同じです。唯一違うとすれば、育鵬社は歴史教科書において曖昧な形で統制らしきものを書いている点です。
自由社は、占領軍の統制の下に行われた憲法改正が戦時国際法に違反していることも紹介しています。
日本国憲法の成立過程史の捏造は、GHQの草案の部分以外では、護憲派も改憲派も相当程度影響されてしまっています。
この捏造の歴史から自由になり、日本国憲法の本当の成立過程史を広げることが必要です。
せめて、指示ぐらいは全社が書くようになって欲しいものです。
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三原則以外の原則...一切なし。
GHQの指示...一切なし。
GHQ草案...有り。
GHQ草案に基づく審議の要求..一切なし。
GHQによる議会審議の統制...一切なし。
密室での審議...一切なし。
GHQの指示やGHQ草案に基づく審議の要求、GHQによる議会審議の統制、密室での審議、これら全てが書かれていない。示唆する文言すらない。
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GHQの指示...一切なし。
GHQ草案...有り。
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GHQによる議会審議の統制...一切なし。
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GHQの指示やGHQ草案に基づく審議の要求、GHQによる議会審議の統制、密室での審議、これら全てが書かれていない。示唆する文言すらない。
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三原則以外の原則...一切なし。
GHQの指示...示唆するものは有り。
GHQ草案...有り。
GHQ草案に基づく審議の要求..示唆するものは有り。
GHQによる議会審議の統制...一切なし。
密室での審議...一切なし。
GHQによる議会審議の統制、密室での審議が書かれていない。示唆する文言すらない。
GHQの指示やGHQ草案に基づく審議の要求も示唆する形でしか書かれていない。
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三原則以外の原則...強く示唆するものは有り。「象徴天皇制」「法治主義」「三権分立」「間接民主主義」を原則のあと付け的に書く。
GHQの指示...有り。しかも正面から。
GHQ草案...有り。
GHQ草案に基づく審議の要求..示唆するものは有り。
GHQによる議会審議の統制...強く示唆するものは有り。
密室での審議...有り。
GHQの指示は正面から書かれているし、他社と同じくGHQ草案も書いているが、GHQ草案に基づく審議の要求、GHQによる議会審議の統制は示唆する形でのみ書いている。
密室での審議は正面から書いている。
なお、つくる会は自由社が発行する教科書の編集者の団体であり、営利目的の団体ではない。