2022年、マスコミ各社がほとんどこの話題を報道しないまま、民法から親の懲戒権が削除されました。親の懲戒権が削除されたことによって、いわゆる「しつけ」を行うことができなくなったのでしょうか。いいえ、それは断じて違います。
今回は、親の懲戒権削除問題について、なぜ「しつけ」を引き続き行うことができるのか、教育権としての指導権と懲戒権は消えていないという2つの視点から見ていきたいと思います。
■教育権としての指導権
●民法上の権利
現在の民法では、親は子どもを養ったり教育したりする権利や義務があること(第820条)、親は子どもを指定した場所に住まわせる権利があること(第822条)、親は子どもに対して職業を営むことを許可したり、拒否したりする権利があること(第823条)、親は子どもの財産を管理する権利があること(第824条)を定めています。
また、親が上記の権利を行使にするにあたり、「子の人格を尊重するとともに、その年齢及び発達の程度に配慮しなければならず、かつ、体罰その他の子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならない。」と規定しています(第821条)。
第820条に規定される権利は、親は子どもを養い、保護すること(監護権)と親は子どもを教育すること(教育権)に分けられますが、監護権や教育権の中に親は子どもを叱ったり、罰を与えたりすることができるというのが通説です。
だからこそ、「子の人格を尊重するとともに、その年齢及び発達の程度に配慮しなければならず、かつ、体罰その他の子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならない。」とも規定されているのです。
●叱ることができなくなる可能性
しかし、「体罰その他の子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動」の定義は不明確な部分が多くあります。ある教科書作成者が、この定義を確かめるため、公民教科書で「親は社会的に許容される範囲内で「しつけ」を行うことができます」と書き、その注釈として「「しつけ」の中には、子どもを叱ったり、お小遣いを減らすなどの罰を与えたりすることが含まれる。ただし体罰を行うことはできない。」というように書きました。
これに対して、文科省は注釈について「体罰その他の子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動」を肯定しているという検定意見(修正命令)を行い、削除させました。したがって、教育権・監護権に子どもを叱ったり、罰を与えたりする権利は含まれているはずですが、「体罰その他の子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動」に該当する可能性があるのです。
これは非常に問題のあることだと思います。親が子どもを教育する過程で、子どもを叱ったり、罰を与えたりすることができないければ社会的に許容される正当な「しつけ」など成り立ちません。
さらに、文科省が言うには「子どもを叱るのは「心理的虐待」」らしいのです。
■懲戒権は残る
一方、国は懲戒権削除問題にあたり、一貫して「親の懲戒権は削除されても廃止されない、しつけには教育的指導(叱るなど)と懲戒(罰を与えること)があるが、懲戒権が削除されても親は懲戒権としてはその両方をできる」と答弁し続けました。
同じ政府内なのに全く見解が違うのです。しかし、厚生労働省は「心理的虐待」に既に激しい叱責などを含めていますし、文科省の見解の方が有力といえます。また、国は「体罰その他の子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動」の定義には言及していません。
あくまで「懲戒権は廃止されない」としか言っていないのです。
■懲戒権の復活を!
懲戒権の削除は家庭教育のめちゃくちゃにしてしまう危険性があります。国からの回答も不十分であり、これでは親は子どもを叱ることすらできなくなる可能性があります。
一刻も早く、親の懲戒権を復活させるべきです。
ただし、復活させる際には学校教育法の例にならって、「親は、親権を行う者は、第八百二十条の規定による監護及び教育に必要な範囲内でその子を懲戒することができる。ただし、体罰を加えることはできない。」のようにすれば虐待防止にもなって良いのではないでしょうか。
「心理的虐待」などという権力者に都合の良さそうな曖昧な概念は用いるべきではないです。子どもが「心理的虐待」を受けているかどうかなんてどうやって判断するのでしょうか。それで勘違いして児童相談所が一時保護するとかたまったものではありません。一時保護と称して1ヶ月ぐらい閉じ込めることもありますし。
そういうのは親への周知と教育でどうにかするべきです。あくまで体罰を禁止するのが親子のためになります。カウンセリングなどを通じて家庭内の話し合いで解決できるよう、国は努力すべきではないでしょうか。子どもを一時保護しまくるのは権力の濫用です。