※ザ・レコードの2020年2月23日、オピニオン欄に掲載された記事”TO THOSE WHO IGNORE ABUSE"の記事参考
健全なる青少年たちの育成を目的とした組織を代表する存在であるボーイスカウト、アメリカで110年の歴史を持つこの団体が、性的虐待の訴訟問題で破産した。
35年にわたってこの問題に関わってきたが、この様な日が来るとは最初のころは考えられなかったと言うのは弁護士のポール・モーン氏、ザ・レコードに掲載された記事の中での話である。
ボーイスカウトが破産に至るきっかけは、2010年のオレゴン州ポートランドでの、38歳の男性が当時のスカウトマスターから受けた性的虐待を訴えた裁判だった。この裁判で、ボーイスカウトが組織ぐるみで、青年リーダーや指導者たちによる、子供たちへの性的虐待の事実を何十年にもわたって隠してきたと言う事実が公になり、18.5ミリオンダラー(日本円でおよそ19億円)の賠償金の支払いを言い渡されたことだった。
この判決が確定した後、法廷は彼らに性的虐待リポートファイルの公表を命じたのである。このパーバージョンファイルの公表が、ボーイスカウトが幕を下ろす始まりとなった。
公表されたファイルには、マイナーな被害の事例しか記されたなかったのである。偽りのファイルであったわけだ。未成年者をターゲットにした幼児性愛好家や、同性愛者を、その事実を社会から、親たちから隠し、組織は守ってきたのである。結局その事が、何千人もの被害者をつくる事になったのである。
ファイルの公表が言い渡されてからの8年間、次々に起こる訴訟の賠償金の支払いは膨れあがり、性的虐待を隠蔽してきた犯罪者として、ボーイスカウトの名声は、地に落ちたのであった。
そして、この波紋は、青少年を守るべき責任をはたすよりも、組織ぐるみで青少年への性的虐待を隠蔽し、団体を守る事に終始してきた犯罪組織たち、ペンシルバニアステイト大学を皮切りに、ホレイスマン、セント・ポールなどの有名私立校、オリンピックのスイミングチームに女子体操チームへの断罪へと繋がっていくのである。どれも、記憶に新しい衝撃的なニュースだ。
そして、今、カトリック教会が同じ問題で崖っぷちに立たされている。
2015年にアカデミー作品賞を得た「世紀のスクープ・スポットライト」という映画(ボストンエリアのカトリック神父たちによる青少年への性的虐待事件を暴露し、ピューリッツアー賞を受けたボストングローブの記者たちのそこに至るまでの経緯を映画化したもの)で、その事実を知る事ができるが、その当時はまだ序の口、今、2018年のペンシルバニア州での訴訟から始まり、世界規模で教会が叩かれている。
私は、日本の田舎に育って、少し疎いところもあって、最初は信じがたかった。
少年愛好家、幼児性愛好家と言う人達が、なんと多い事か!カトリック神父の学校、男子校、そして監獄の中で同性愛の行為が行われていると言うのだから。ここでは、女の子にだけ注意したらいいのではない、男の子にも注意しないといけないんだと言う事を子供を育てながら悟ったのだから。
いつどこでこれらの被害に遭うとも限らない、なんと恐ろしい事か。
その事もあって、私は自分の子供たちにお泊りはさせなかった。自分の目の行き届かない場所に送る事ができないからだ。友達の家に行くと言う時も、その家に誰がいるのか、父親や兄だけがいるような家には行かせなかった。
男なるものが信じられなくなる。
スポットライトの中で、一人の神父が自分が受けた虐待を同じように青年にやったと言っていた。
哀しい負の連鎖が起こっているのだ。
同性愛を良しとはしない。だが、そうなるしかなかった背景がある人がいる事も知っている。娘の高校の頃の女友達に自称レズビアンと言う子がいた。彼女は父親から性的虐待を受けたことから、男性が信じられないと話すと言っていた。
青少年のころ、ボーイスカウトで青年リーダーから、教会で神父から、性的虐待を受けた若者たちは、今、成年になり、自分の同性愛の指向に苦しんでいる人が少なくないとの事だ。
負の連鎖を断ち切る事がどうすればできるのか、物珍しさで好奇心で知ろうとするのではなく、身近に苦しんでいる人がいないか、愛を持って関心を持っていく事から、できる事からやって行かねば、と思っている。