Eさんのママが亡くなられ、墓はないがその墓参という名目でEさんを励ますこ
とが目的の旅は、私たちの頭の中に具体的なこととしてはなかった。だから私
たちにしても急なことだった。
この数日間、一時とはいえどEさんと一緒に見たり食べたり、時には微笑んだ
り、大笑いをしたりした。悲喜こもごもこれが、一言でこの旅を言い当てている。
私が頑固娘という。『You don’t follow what father say』 私の言うことを聞
かない。 すかさず『Here is Singapore』と返す。日本に来たとき私が、ここは
日本だから私に従えと言ったことをシンガポールで言っているのだ。
『Hey stubborn daughter』 頑固娘、と言うと又返す。
私たちは安心と楽しんだことに有難う。お世話になった方々にも感謝。帰国に
際し見送りに来るなというのに頑固娘は空港にやってきた。この辺りの方言を
教え込んだ甲斐があり『Dan dan』と違和感なく言う。出国ゲートをくぐり大分歩
いた後でも、未だ手を振ってくれていた。来るなと言ったのに来た代償を帰
国後のメールに綴っていた。
『見送った後、ママのことなどを思い返し涙が出て、またまた泣きました。今日は
少しいいみたい』その悲しみは私たちが、ほんのひと時慰めることが出来ても、
結局は自分が克服するまで繰り返すものだ。Eさんだけの試練ではない。
広い、広い空港を歩き出発ゲートに向かった。
面白くも何ともないがチャンギ国際空港の一部
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