一日目
天候:のち
行程:二口温泉10:20-大行沢ゴルジュ終点F1・12:00-F2(8m)-カケス沢出合15:20-樋ノ沢避難小屋16:50
行動:単独
参考:「その空の下で」byタケちゃん
今シーズン第二弾の沢は、仙台の二口山塊。名取川源流の大行沢(おおなめさわ)と二口沢(ふたくちさわ)へ。
前者は地元・東北大のワンゲル部により「天国のナメ」と紹介され、片や後者は沢の師匠・タケちゃんをはじめ、ネットの記録でも大行沢より高評価となっており、どちらにしてもこれは一度は行かなければなるまい。
現地までの交通手段は深夜高速バス。
今回、トイレ付きバスを予約してみたのだが、三列独立式の広角リクライニング・シート、枕やブランケットも付いて飛行機でいえばビジネスクラスのよう。
ほとんど同じ料金なのに「ナントカ信州号」とはえらい違いで、実に快適だ。
早朝の仙台駅に着き、まず朝飯。
さすがにこの時間から開いている牛タン屋は見当たらず、しかたなく「吉野家」の牛丼で済ます。
その後、JRと市営バスを乗り継ぎ、二口(ふたくち)温泉へと向かう。
JR仙山線「愛子(あやし)」駅からバスで二口(ふたくち)温泉へ。みちのく一人沢旅?
ビジターセンターで登山届を書き、少し歩くと大東岳への裏コース登山口。この登山コースはこれから行く大行沢と並行しているとのこと。
車が数台停まっていて、地元の釣りのおじさんに聞くと、「魚影はあるけど釣果無し」とのこと。
ちょっと前に引率付きの高校生らしきグループが沢に入っていったと教えてくれた。
途中から沢へ入れるというので最初は登山道を行くが、次第に沢から離れてしまうので引き返す。
ふと脇を見るとふつうのファミリーキャンプ客がナメをピチャピチャ歩いているのが見えたので、そこから入渓。
一応メット被って沢仕様となるが、そんなオッサンが半ズボン、ビーサン姿の子どもたちの横を通り抜けるのはちょっと気恥ずかしい。
が、しばらく行くとゴルジュ帯となり、ファミリー軍団はそこまで。
一人、ゴルジュに入っていく。
ここからゴルジュ
易しそうに見えるけど釜はあくまで深く、側壁はツルツル。
ゴルジュといっても他の沢と違って側壁が高く切り立って暗い雰囲気なわけでもなく、ここのゴルジュは何とも明るい。
すり鉢状の釜が連続してウネウネと続き、釜は背が立たないほど深い。
そんな中を傾斜したツルツルの縁を微妙なバランスでヘツっていくのだが、これがけっこう厳しい。
途中、残置スリングなどもあり、それらも使ってヘツっていくが、潔く水の中に入って泳いだ方が早かったりする。
でも釜の中に入ったはいいが、今度は縁から上がるにもツルツルでジタバタもがいたりして出だしからシゴかれる。
やがて池のような大きな釜に着き、そのどん詰まりが4mほどの小滝(F1)。
見た感じ右からも左からもヘツって滝に近づけそうもなく泳いで取り付こうとしたが、ここまでで水を目一杯吸ってしまったザックはめちゃくちゃ重い。
何ともバランスが悪く、元々泳ぎのヘタな私は水勢に押し戻されて釜の中をもがくばかり。
・・・オイオイ、もし、ここ突破できなかったら、どーすんだ?
全身ズブ濡れになったまま一瞬途方にくれてしまったが、落ち着いてよく見ると左岸の急な苔付き斜面にわずかなステップを発見。それを使って巻く。
後で調べたら、ふつうにヘツってそのまま小滝を突破した記録もある・・・うーん、自分にはとても無理そうに思えたが。まだまだ要修行か。
4m滝を越えると、ようやくゴルジュから開放され、ホッと一息。
見ると左岸に踏跡があり、なるほど、ここまでのゴルジュを割愛して登山道から沢へ入ることもできるうだ。
でも、沢ノボラーならここのゴルジュを突破してこそ面白い。
しばらくナメとなり、流れの中に無造作に巨大な丸い大岩が鎮座し、なかなか面白い風景。
見事な球体となっている黒い岩は、まるでマンガの「GANTZ」のよう。
ここにもGANTZ、あそこにもGANTZ・・・。
しばらく癒しの渓相が続いた後、やがてF2(8m)が突如目の前に現れる。
左側に圧倒的なハングが被さり、その部分が影となり、対して陽射しを浴びた滝は輝いている。
何とも見事な光と影の演出で、まるで大掛かりな舞台セットのよう。
ここまでナメと釜の平坦なイメージだったので、F2のダイナミックな造形美には思わず「おおっ!」と声を上げてしまうほど。
奥の方にF2が隠れている。
で、ここどーやって抜けるんだ?と思ったら、左側のハングの下、洞窟の間を抜けるようにして意外と楽に突破できた。
やがて岩は乱雑に積み重なり、他の記録では「ここの突破が骨が折れる」とか「長くてウンザリ」という声も多い。
しかし、一々岩の間を越えていかなくても、それを避けるように左岸に踏跡が続いており、私はそんなに嫌気が差すほどには感じなかった。
幾何学模様をした岩もなかなか美しい。
巨岩帯を抜けるとそこからは噂通りのナメ、ナメ、ナメ・・・・。
水は深い所でスネぐらい、浅い所では岩床にヒタヒタ程度で、これが沢幅いっぱいにどこまでも続く。
奥秩父の釜ノ沢が千畳のナメなら、ここは一体、何万、いや何十万畳になるんだろう。
ただ残念なことに、ここの岩は全体的に茶褐色で、それが残念というかマイナス・ポイント。
陽射しの加減によっては、雨上がりの田んぼのように映ってしまって、これが「天国のナメ」と言われると正直、うーん・・・と考えてしまう。
これがもし上越の沢のように真っ白な岩床で、釜がすべてエメラルドグリーンだったら、赤木沢もナルミズもまるで比較にならない、とびきり極上の沢になっていただろう。
でもナメのスケールとしては、たしかに凄いね。
いつまでも続くナメを堪能していくうち、やがて乾いた岩のあちこちに先行組の濡れた足跡が目に付くようになってきて、ロックオン。
で、カケス沢の出合辺りでようやく高校生らしきグループに追い付き、引率の先生と軽く挨拶。
全部で8人ぐらいか。これまで魚影がほとんど見えなかったが、なるほどこれだけの人数が歩いていたら、さすがにイワナも隠れてしまったに違いない。
聞くと、樋ノ沢避難小屋までは、まだ1時間はかかるとのこと。
そろそろ疲れてきたが、もう少し頑張ってナメとナメ滝の遡行を続ける。
やがて両門ノ滝のような所に出て、水量の多い右側の傾斜緩めの8m滝を越えると、その先は流れが一気に細い樋状となる。
辺りも暗くなってきて、いいテン場はないかと振り返ったら、左岸の高くなった所に樋ノ沢避難小屋があった。
避難小屋下にある8mナメ滝
やっと着いたか。とりあえず本日はここまで。
ずっと天気は良かったが夕方になり遠くで雷が聞こえ、また小さな羽虫がまとわりついてうっとうしいので、小屋もいいなと思ったが、既に沢で出会ったのとは別の高校生グループに占拠されており、満員御礼。
しかたなく防虫ネット、防虫スプレーで防御しつつ小屋脇の焚火スペースにタープを張る。
焚き木を集め、体勢が整ったので、日没まで釣りタイム。
小屋の裏手にある先ほどの8m滝の釜に糸を垂らす。
途中、足首までも浸からない洗濯板のようなナメも通過してきたので、もはやここまでイワナが遡ってきているとは思えなかったが、まぁやってみましょ。
で、しばらく待つとビビビ・・・とアタリが。
しかし食いつくことなく、もしかして気のせい?
で、再び糸を垂らすと、今度は来たっ!
25cm弱でやや小振りだが、まずは一尾Get!
真っ暗になってきたのでこの一尾で打ち切り、テン場に戻って焚火と酒と塩焼きで夕餉とする。
すぐそばの木でカサカサ音がすると思ったら、ムササビが幹に張り付いてこちらの様子を窺っていた。
ワイルドだろぅ?
大行沢の記録