二日目
天候:晴れ一時曇り
行程:起床5:00-出発6:30-樋ノ沢-南面白山9:10~20-石橋峠11:20-糸岳11:55-風ノ洞橋13:15-17:20銚子大滝17:45-テン場18:30
参考:「その空の下で」byタケちゃん
今日は長丁場。早出するつもりがぐっすり寝てしまい、また朝から焚火などしてついのんびりしてしまう。
小屋に泊まった高校生らを見送ってから、火の始末をしてスタート。
大行沢本流はここから樋ノ沢と名を変え、その名のとおり軽く一跨ぎできるほどの細い樋状となって流れるが、それでも釜は背が立たないほど深かったりする。
相変わらず平たいナメの岩床を水流に浸りながらペタペタ歩いていく。
途中、釜を抱えた小滝を1つか2つ越えると、もう水はチョロチョロ流れる程度。
それでも東側の大東岳に向かっていつまでもしつこく続いている。
このまま源頭まで詰めても、沢としてはあまり面白くない。
途中、赤布と小さなケルンが目印となる分岐があって、そこからは稜線も近く、たぶん樋ノ沢の遡行はここで終了でいいのだろう。
涸れ沢を10分ほど登って登山道へ。
トレラン・シューズに履き替え、ストックも出してここからは縦走。
南面白山-石橋(しゃっきょう)峠-糸岳と繋ぎ、二口沢へ継続だ。
まずは最初のピーク、南面白山への登りだが、さっそくキツい。
ここらの山は見た目のっぺりしているのだが、実際歩いてみると登りも下りも「何で?」と思うぐらい傾斜を感じる。
涼しい沢から草いきれでムンムンする山道を大汗かきながら、まずは南面白山の頂上に立つ。
展望は良く、周りの山々、山形の街並みまで良く見えた。
あまり面白くなくても「面白山」?
そこから登山道をアップダウンを繰り返しながら南下していくが、風の無い夏の低山歩きはなかなか辛い。
晴れた日曜だというのに他に登山者の姿はまったく無く、特に石橋峠から糸岳間などは草の成長が激しく、一般路と言いながらヤブこぎになるほど。
とにかくガーッと登ってはガーッと下るの繰り返し。
どうせ濡れているからと渓流ソックスの上からトレランシューズを履いて歩いたが、これが失敗。
足の皮がふやけていたので、急な下りで一気にズル剥けになってしまった。
糸岳山頂。この付近、虫が多く、一般路もヤブ多し。
ヘトヘトになりながら、何とか二口林道へ。
あまりの疲れで、もういっそ二口沢の遡行はやめてここらで釣りに専念するのもいいかなと、チラッとヒヨリ案も浮かんだが、いいや、せっかくなんで行けるとこまで行きましょう。
着いた所が風ノ洞橋でここに駐車スペース、すぐ先でゲートが閉まっていた。
現時点では山形方面へ抜けることはできないようだ。
二口沢へは林道をもう少し歩いてから入渓してもよいが、他の記録によると実はこの風ノ洞橋下から少し先の南沢出合までのナメが素晴らしいようだ。
で、ゲート脇から下降、二口沢遡行を開始する。
橋の下が8mほどのちょっと迫力ある滝となっていて、まずはここを水流左の階段状から突破。
橋の下に滝!
その先、沢幅いっぱいに平らなナメが広がる。うーん、たしかにこのナメも素晴らしい!
ナメを堪能しながら進んでいくと、やがて前方に圧倒的な岩壁が聳え、沢は右へ直角に曲がり、そこがすだれ状のスラブ滝となっている。
たけちゃんレポでは10mとなっていたが、いや、ここ20m、ヘタすりゃ25mはありますよ。
右から入る25m滝
傾斜は緩めの滑り台だが、スラブなのでホールドが乏しい。水流の間は特に滑りそうで、とても取り付く気がしない。
それでも、良く見ると水流右側の黒い部分が何とか行けそう。
薄いカチと浅い凹凸を拾って登っていくが、落口に近づくにつれ、なかなかシビアになってくる。
最後1~2歩、微妙に悪い箇所があり、ちょっと躊躇。
気合で突破しようかとも思ったが、冷静になって1~2歩クライミングダウンし、より安定しているさらに右寄りの苔の部分を繋いでTopOut。
うーん、タケちゃんはⅢ級程度だと書いているが、いや、ここワンポイントⅣ級はあるような?(一応、左岸に巻き道あり)
そのままナメを進んでいくと右岸(左側)から今回、下降路とする南沢が出合う。
そばの木の幹に黄色い「保安林」の看板。左岸の台地には古びた無人小屋が見えるのでこれが目印となるだろう。
さらに進むと今度は左岸から10m滝が出合い、片や本流は5mほどの多段滝の二俣になっている。この多段滝がなかなか美しい。
そのまま水量の多い多段滝を左側から直登。階段状で問題なし。
美しい多段滝
さらに進むとまた二俣で右が桂沢(実際には正面に延びている)、左に折れるのが本流のようだ。水量比は1:3なので、ここも間違えることはない。
昨日からほとんどナメばかりなので、この辺り、変化があっていいのだが、残念なことにちょっと倒木が煩わしい。
ネットでは評価が高く、ナメと個性ある滝の連続でデート沢に最適ともあるが、2012年の夏現在、けっこう荒れたところもあって私は大行沢の方が「癒し度」高くてイイなと思った。
ちなみに魚影はこちらの方が濃く、途中で竿を出したり手掴みを試みるがGetできず。
水流は次第に細くなり、右岸の小松倉沢を分ける。
二口沢本流もこの辺りから小松原沢と呼ぶのだろうか。
ちなみに国土地理院の地図や「日本登山体系」では二口沢本流は「禿(かむろ)沢」と表記されている。
「禿」とはハゲではなく昔のオカッパ頭のこと。この周囲の山々がオカッパ頭のような形なので、元は「禿岳」だったのに当て字で「神室岳」にしたのではないかと思う。
(北アの五竜岳も元々は「後立山」を音読みして「ごりゅうさん」、それが転じて五竜の名になったとか・・・。)
で、この辺りから滝が連続してきて、小松原沢のハイライト。
出てくる滝はできるだけ直登していくが、銚子大滝手前の15m直瀑はちょいと厳しい。
銚子大滝手前の15m滝。直登は厳しい。
右岸から小さく巻いて、いよいよクライマックスの銚子大滝50mの下に出る。
大滝は写真で見ると水流細めの樋状で迫力乏しそうだったが、やはり間近で見るとけっこう立っているし、50mのスケールを感じる。
タケちゃんのレポを見て一応その気にはなっていたが、ヒェー、ここ登るんですか!(もちろん巻きも可)
銚子大滝50m
既に夕暮れ近いが、明日の帰りのバスを考えると、ここは何とか今日中に越えておきたい。
とりあえず行けるとこまで行ってみますか。
大滝はパッと見、四段構成。
50mといっても一段一段休める形になっているし、いざとなれば途中から右側の乾いた緩傾斜の岩場にエスケープできそうなので、精神的には楽だ。
で、登るラインを確認し、「リポD登攀」開始。
一段目、水流の中のホールドを拾い、左上方、斜めに走るバンドに取り付く。
このバンドまで上がるとホールド豊富で、それなりに立ってはいるが安心して二段目上まで一気に行ける。
途中、チョックストーンもあるので、万が一滑っても下まで落ちる不安はない。
中間部まで上がった辺りに古びた残置ハーケンが2本打たれているが、うち1本は折れ曲がって今にも抜けそうになっていた。
ここから右の安全地帯へ移ることもできるが、まだ余裕なので、そのまま三段目は水芯を渾身のシャワークライム。
ラスト四段目はちょい悪く見えるが、水流すぐ右のクラック状になったフレークが行けそうなので取り付いてみる。
足元がやや外傾気味だが慎重に数歩上がり、上のガバをキャッチ。
最上部は黒光りしたヌメった岩でホールドも細かくなってくるため、ちょいとリスキー。
どうしようか迷うが、見ると落口はすぐそこ。ここから水流の中に移れば却って傾斜は緩くなる。
ワンポイント「手に足ハイステップ」を要したが、こういう時、ジムでのコソ練が役に立つ。
で、そんなに嫌な汗をかくことも無く、無事完登。(たけし師匠、やりましたよ。)
ほぼ水線通しにイケて、これは満足!
グレード的にはたしかにアルパインのⅣ級程度。残置は中間部以外無いけど、できればロープ使った方がいいでしょう。(あくまで自己責任でお願いします。)
←Click!
さらにその先も滝は続き、すぐ上の8m滝は水流左を直登、釜を持った5m滝は右から胸まで水に浸かって突破する。
で、そろそろ今日のテン場を探さなければ・・・と思って周囲を見てたら、ありました。
左岸の一段高くなった台地に平坦な焚火跡。さらにもう一段上がるとこれまた平坦で大きなテントが2~3張りOKの極上物件が。
で、本日はここまで。
タープを張って焚火をして・・・。イワナが釣れなかったので今日の晩飯はレトルトの釜飯のみ。
しかたない。残りの酒をあおって横になる。
明るい月が森の中を微かに照らし、沢の音しか聞こえない静かな寝床。
最後に熊除けのホイッスルを何回か吹き鳴らしてから、深い眠りに落ちた。
仙台・名取川二口沢本流(小松原沢)